看板ホームラン
プロ野球球場の外野席、その後方には、いくつもの看板が存在している。
そんな看板の中には、「直接打球を当てる」と、「スポンサーから賞金や賞品がもらえる」ものもある。
とはいえ、そういう看板には、なかなか当たらない。
看板に当てるためには、かなりの飛距離が必要だ。特大のホームランでなければならない。
なので、ある看板の場合だと、「打球直撃」は三年に一回くらいだ。
ところが、今シーズンは「新しい打撃理論」が球界を席巻。選手たちの飛距離が大幅に伸びている。
その結果、ある看板への「打球直撃」は、すでに五回だ。
このペースだと、少なく見積もっても、シーズンが終わるまでに、あと十回以上はありそうだ。
その看板を出している会社は、球団スタッフも交えて、野球場の一室で緊急会議を開いていた。
こんなに『看板ホームラン』が出るとは、まったくの予想外だ。ぶっちぎりで予算オーバーしている。
重苦しい空気がただよう中、
「思い切って、看板を小さくしますか?」
会議に参加している一人が言う。
そうすれば、打球が当たる確率は下がるだろう。
「しかし、それでは看板としての意味が・・・・・・」
それに、看板を小さくすると、「ケチな会社」だと、世間から思われるかも。
結局、良いアイデアが浮かばなかった。しょうがない。「現状維持」だ。
で、このあとにプロ野球の試合がある。
ちょうど野球場にいることだし、会社関係者たちは試合を観戦することに。
だが、何てことだ。今日も元気に飛び出した。野球場にバットの快音!
強い打球がまっすぐに、外野スタンドへ飛んでいく。例の看板に向かって。
この試合を見ていた会社関係者たちは、一斉に頭を抱えた。
まただ。また賞金だ。予算オーバーの記録を更新する!
ところが、次の瞬間だった。
外野スタンドにいるお客さんの一人が、いきなり真上にジャンプしたのだ。
その手には、野球のグローブをはめている。
そして、見事に打球をキャッチした!
「おおっ!」
そのお客さんはただ、ホームランボールを捕ろうとしただけに違いない。
しかし、あの看板を出している会社にとって、このキャッチは「超ファインプレー」だ。
おかげで、選手に賞金をあげる必要がなくなった。
「こうしてはいられない!」
すぐに会社関係者たちは動く。
そのお客さんのところへ行って、感謝を告げたあと、「謝礼」を払った。
選手にあげる賞金とくらべたら、安い金額だ。けれども、お客さんはとても喜んでくれた。
で、次の試合だ。
例の看板の前では、異変が起きていた。
手に野球のグローブをはめた、大勢のお客さんたち!
――ホームランボールをキャッチして、ついでに「謝礼」をもらっちゃおう。
そう考えて、看板の前に集結したのだ。
彼らの活躍により、この会社は今シーズン、あと一回の『看板ホームラン』で乗り切ることができた。「謝礼」は十回以上払うことになったけれど、やったね♪
次回は「ドラフト会議」のお話です。




