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魔王軍、おもてなしの極致 〜聖女の笑顔のために軍予算を「観光」へ全振りしたら、魔界が爆益を上げ始めた件〜  作者: いたちのこてつ


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第12話 そして伝説の経済支配へ

魔王城の玉座の間。至高の晩餐会は、デザートの『魔界イチゴのムース 〜聖女の微笑み仕立て〜』が完食され、幕を閉じようとしていた。


「クク……。勇者よ、そして聖女よ。我が軍の『総力』を尽くしたこの死へのカウントダウン(※もてなし)、十分に味わったか?」


魔王ヴォルガディスは、空になった皿の山を見下ろし、勝利の確信とともに古代魔族語で告げた。アルバスがすかさず人間界の公用語で通訳を被せる。


「(捏造通訳:魔王様は『お食事はお口に合いましたでしょうか。皆様が満足されたなら、これ以上の喜びはございません』と、感無量の面持ちで仰っております)」


「はい! 本当に、人生で一番幸せなディナーでした、魔王様!」


エリナが立ち上がり、魔王に向かって深々と一礼した。その瞳には一抹の恐怖もなく、ただ純粋な感謝と敬愛の念が宿っていた。


「……ミラ、お前はどうだ。本当に、これでいいのか?」


レクスが震える声で尋ねる。彼は未だに、この豪華な食事がいつ「血の惨劇」に変わるのかと剣を握りしめていたが、ミラの反応は残酷なまでに冷静だった。


「……満足。シフォンの口溶け、ムースのなめらかさ。魔界の製菓技術、世界最高峰。……移住、検討中」


「移住までする気かよ!? ゴルド、お前も何か……」


「……あ、あぁ……。魔王様……次は……次はどこの銘柄を飲ませてくれるんだ……?」


ゴルドは既に空になった酒瓶を抱え、夢うつつのまま床に転がっていた。


「……くそ、俺だけか。俺だけがこの『魔王の毒』に抗い続けているのか……っ!」


レクスは悲壮な決意で、目の前に置かれた残りのスープを一口啜った。その瞬間、彼の脳内に、かつてないほどの芳醇な出汁の旨味と、魔界ハーブによる至高の癒やしが駆け巡った。


「…………っ!? 美味い……美味すぎる……。ちくしょう、負けた……。こんなに美味いものが、悪の拠点で出てくるなんて、もうどうだっていい……!」


レクスはついに聖剣をテーブルに置き、ガツガツと料理を口に運び始めた。


「これは……毒味だ。勇者としての、最後の毒味なんだ……!」


そう自分に言い訳しながら、彼は心の底から満たされた表情で食事を楽しんだのである。


***


「さて、魔王様。仕上げに入りましょう」


アルバスが、一枚の美しい金縁の書類と、魔王の魔力を込めた『契約のペン』を差し出した。


「それは……何だ、アルバス」


「これこそが、人類の命運を我が手中に収める『永久不可逆的・魂の拘束文書(※実際は宿泊アンケート)』……すなわち、魔界側から見た『無条件降伏条約書』です。これに聖女が署名し、さらにあなたが承認の印を刻めば、人間界は未来永劫、我が魔界の『支配(※リピーター)』として組み込まれることになります。奴らは自ら望んで、この地に富を運び続ける家畜となるのです」


「ほう! ついに、奴らに敗北を認めさせる時が来たか!」


ヴォルガディスは、アルバスが聖女に手渡した書類を、満足げに眺めた。聖女エリナには「魔界をより良くするためのアンケート」として渡されたその紙には、彼女によって丁寧な文字でこう記されていた。


『スタッフの皆さんがとても親切で、お料理も最高でした! 特にパンケーキと温泉が忘れられません。次は家族も連れてまた絶対に来ます! 10点満点中、100万点です!』


アルバスは、その「感謝の言葉」を魔王に向けて冷徹に翻訳した。


「(捏造通訳:『我ら人類は魔王様の圧倒的なおもてなし(武力)の前に完敗しました。今後は経済パンケーキと文化(温泉)の軍門に降り、全人類を魔界への朝貢(観光客)として差し出します。屈辱のあまり、評価は測定不能です』……と書いてあります。聖女の署名は、全人類の『屈服の誓い』に他なりません)」


「ハハハ! 素晴らしい! ついに、この我が……剣を抜くことすらなく、全人類を屈服させたのだな!」


ヴォルガディスは、覇者の笑みを浮かべ、その書類に『魔王の印』を力強く刻印した。その瞬間、聖女の「喜びの声」と魔王の「承認」が魔法的に結合し、魔界と人間界を繋ぐ「恒久平和条約(※アルバスによる公式ツアー開通許可証)」が、魔王自らの手によって成立したのである。


(……勝った。これで聖女エリナ様は、いつでも公式に、安全に、この魔界を訪れることができる。おまけに、彼女のご家族まで来るとは……! 家族構成は調査済みだ。お父上には最高のゴルフ場を、お母上には極上のエステを……くく、推し活の地平はどこまでも広がっていく……!)


アルバスは、聖女の隣で、誰にも気づかれぬよう小さくガッツポーズを高速で決めた。


――そう、魔王は純粋バカだった。


そしてアルバスは、推しの笑顔のために世界の勢力図を塗り替えた狂信者であった。


***


一年後。


かつて「絶望の地」と呼ばれた魔界は、今や世界中から観光客が押し寄せる「至高のリゾート・アイランド」へと変貌を遂げていた。


国境の舗装路には、一日中観光馬車が列をなし、温泉関所は一年先まで予約が埋まっている。ピエールの作る『魔王様パンケーキ』は、人間界の貴族たちが並んででも食べたいと願うステータスシンボルとなった。(※もちろん勇者パーティーはVIP待遇ですぐにお通しするが)


魔王ヴォルガディスは、城のテラスから、眼下に広がる活気溢れる街(※魔王にとっては「完璧な統治下の捕虜収容所」)を眺め、深く頷いていた。


「見ろ、アルバス。人間どもが、自ら金を払い、行列を作り、感謝の言葉を述べながら我が領地に吸い込まれていく。これこそが、最強の王が辿り着くべき『支配の完成形』だな」


「御意にございます、魔王様。現在、魔界の国庫はかつてないほどの爆益を上げており、この富をもって、さらなる『支配域(※リゾート施設)』の拡大を計画しております」


「うむ! お前に任せる。次は、あの勇者どもが絶望し、涙を流して命乞いをするような、究極の『拷問場』を作ろうではないか!」


「はっ。既に設計図(※ウォーターパーク)は完成しております」


アルバスは慇懃に頭を下げ、その視線を、今日もプライベートツアーで来賓室を訪れているエリナへと向けた。

彼女の満面の笑み。それこそが、この魔界を支える真の魔力源であった。


「――そう、魔王は純粋バカだった」


だが、魔王が幸せで、部下が潤い、推しが笑い、世界が平和で、そしてアルバスが誰よりも潤っているなら……。それがたとえ、一人のオタクによる「職権濫用の極致」であったとしても、誰もそれを間違いだとは呼ばないだろう。


魔王軍おもてなしコメディ。ここにて、めでたく「大団円(※推し活継続中)」である。


(完)

ここまでお読みいただきありがとうございました。この物語を気に入っていただけましたら、ブックマークや評価をしていただけると嬉しいです。


明日、2/10からは、新作を投稿していきます。


「異世界に転生した俺は、前世のペットたちを召喚する ~レベルアップで家族が増えていく万象飼育ライフ~」


https://ncode.syosetu.com/n1355ls/


「もう一度、あの子たちに会いたい――」

そんな切実な願いから始まる、少し変わった召喚士の物語を明日から公開します。


召喚されるのは、かつて日本で共に暮らした“家族ペット”たち。


召喚獣としてとんでもないスキルを携えて戻ってきた家族たちですが、飼い主であるカケルの目的はただ一つ。「あの子たちが一生安全に、美味いものを食べて暮らせる場所を作る」こと。


最強の召喚獣を従え、徹底した合理主義と過保護さで突き進む。

そんな一人と家族たちの、モフモフで賑やかな異世界サバイバルです!ぜひよろしくお願いします!


執筆の励みになりますので、続きを読みたいと思っていただけたら、ぜひブックマークよろしくお願いします!評価もいただけると嬉しいです。


また、本作の他にも完結済みの作品を公開中です。


■人間嫌いの私は闇の精霊(上級)に転生しました。~見た目が「黒い毛玉」なので無能と罵られましたが、契約主の孤独な侯爵令嬢と共にレベルアップして毒親たちを断罪します~

https://ncode.syosetu.com/n5749lp/


■異世界コンサルはじめました。~元ワーホリマーケター、商売知識で成り上がる~

https://ncode.syosetu.com/n5582kv/


ぜひあわせてお楽しみください!

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