暴走超特急・美佳【第2駅】空から降ってきたメガネをかけたら見たくないものが見えるようになってしまいましたダァシエリイェス!!
※この列車は暴走超特急です。途中下車はできません。あらかじめご了承ください。
「今日は何食べよっかなー。パフェかな?プリン・ア・ラ・モードかな?どっかで期間限定やってたっけ?」
街をるんるん歩く美佳。スマホに夢中で下を向く人々の中で、一人だけ顔を上げて上機嫌に空を見上げていた。
──ひゅるるるる……
「ん?」
突然、空から何かが降ってきて、美佳の顔にすぽっ。
「いたっ!?……って、メガネ?」
外そうとしてみたが、びくともしない。
「……ま、いっか。どうせ見えるし」
気にも留めず、そのまま喫茶店へ。
運ばれてきたパフェの横に、小皿。角砂糖が二十個、ごろりと積まれている。
無慈悲な立て札には——
『このパフェには角砂糖20個分の砂糖が使用されています』
「……えっ!? なにこれ……」
ケーキには十五個、ジュースには十個。
きっちり正確に数が並び、立て札が突き刺さっている。
「なんで数まで正確なんだよぉぉぉ! 余計に怖いんだけどぉぉぉ!!!」
両拳でテーブルをダンッ!と叩く。
パリンッ! メガネが砕け、小皿は一斉に消えた。
と同時にメガネも外れた。
「……はぁっ、はぁっ……よ、ようやく……」
脱力して天を仰ぐ。
──ひゅるるるる……
「またかよぉぉぉ!!!」
新しいメガネがすぽっと顔に。
【アナウンス】次の駅は塩分地獄〜
――ダァシエリイェス!!
「やめろぉぉぉ!!!」
ラーメン屋に入った美佳。
丼を前に「いただきまーす!」と箸を構えた瞬間、目の前の小皿に白い山がこんもり。
しかも添えられたメモには、やたら真面目な書式でこう記されていた。
『このラーメン一杯に含まれる塩分:約6g』
(※スープをすべて飲み干した場合、さらに増加します)
美佳「そんなマニュアルみたいな注意書き要らんわーーー!!!」
「ひぃぃっ……やっぱり外で食べるからいけないんだっ! 家にあるものなら安心だよね!」
慌てて逃げ帰り、戸棚からポテチを取り出す。
袋をビリッと破いた瞬間——ごとっ。
中から、小皿が転げ出た。
「うそだろぉぉぉ!? 袋の中にまでぇぇぇ!!!」
『このポテトチップス(60g入り)に含まれる塩分:約0.5g』
美佳「栄養成分表示をここで見るなーーーっ!!!」
絶叫とともに、美佳は袋を掴んでフルスイング!
ブンッ! 袋は壁に直撃し、散らばったポテチがメガネにぶち当たり、パリンッとレンズを砕いた。
小皿は消えた。
だが安堵する間もなく。
──どさどさどさどさどさっ!!
四方八方から、大量のメガネが雪崩れ込み、美佳を押し潰す。
山の中に完全に埋もれ、声も消える。
……しんとした空気。
そして、山の中から。
──ガッ!!
突き出た手が、必死に空を掴む。
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ラスト・アナウンス
【アナウンス】
ご乗車ありがとうございます。
この列車は「暴走超特急・美佳号」、糖分駅発・不摂生行きです。
停車駅は角砂糖駅、塩分駅、脂肪駅、炭水化物駅、混沌地獄駅です。
途中駅・混沌地獄駅で混雑が発生しているため、運行に遅延が出ています。
お乗り換えのお客様はご注意ください。
生活習慣病行きは3番線から発車いたします。
車内販売は胃薬・カロリーメイト・inゼリーでございます。
――ダァシエリイェス!!
美佳「誰が買うかぁぁぁぁ!!
※本作執筆中、著者は新作パフェを食べていました。
※ですが!生活習慣病は持っていません!(今のところ!)
※暴走超特急はフィクションです。……たぶん。