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☆いきなり転生☆ さらに~   作者: たかさば


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87/88

なにがいい?あんまり複雑なのはやめてね!

肌野孝明は、ごく普通の飴職人である。


毎日上白糖を沸騰させ、毎日大量の小銭をコインカウンターに投入する、齢48の飴職人である。


今日も今日とて、初見のアニメキャラの飴をスマホを見ながら仕上げて感嘆の声をいただいたあと、行きつけのコンビニでバケモンパン(期間限定シール2枚入り)とアーモンドミルクコーヒーを買って家路についていた―――のだが。



キイ―――ッ!!キキキキキっ!!!


ドガ――――――――――――ん!!


ぐわしゃぁああ!!


ぶちゅ。




真っ白な空間。

肌野孝明の魂と…、女神が対面している。


「肌野孝明さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」

「はあ」


「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」


────────

肌野孝明(48)

レベル38


称号:転生者


保有スキル:なにがいい?あんまり複雑なのはやめてね!


HP:33

MP:16

────────




「というわけで、いきなり草原…すげえなあ、俺の田舎よりもなんもねえぞ!」


べよん、べよん。


水色の、ぶよぶよした丸い塊が…飴職人の前に現れた!


「げえ!!スライムだよなこれ?!武器も何もないのに…やべえ!!!」


うろたえる、飴職人。


「はっ、そうだ!!保有スキル…《なにがいい?あんまり複雑なのはやめてね!》って…ちょっと待て、飴…作るのかよ?!」


うばほん!!


飴職人がいつも組み立てて営業している屋台が出てきた!!

いつもだったら衣装ケースの中から一本ずつ出してセットしなければいけない完成品が、キッチリ飾ってある!

いつも使っている茶色く変色した小鍋も、飴だらけの形成台も、木の棒も包装用の袋も揃っているぞ!


「小銭と金庫がないのは…無料で配れという事か??タダ働きになるかもしれんが、命の方が大事だ…やるしか、ねえ!」


スライムは、異世界で人気だというネコ型ロボットをお願いした!


注文を受け、茶色い飴でキャラクターの形を作っていく飴職人。

見事な一筆書き…シンプルなラインでの再現度!

その手際の良さにスライムは夢中だ!


「はい、おまちどお!!はい、次の方どーぞ!あ、出来上がってるのも買えっからね!!名前も書けるよ!」


いつの間にかずらりと並んでいたモンスターのリクエストを聞き、次々に注文品を手渡していく飴職人。


チャリ、チャリ……


なんだか変な音がするなと思って飴を手渡したついでに屋台の前の方をのぞき込むと、コインらしきものがわんさか積まれている!

どうやら飴をもらったモンスターたちがおひねりを置いて行ったもよう!!


「うお!!すげえ売り上げだ!!早く数えねえと!!あ、今日はもう店じまいね、おしまい!また明日きてー!」


客そっちのけでコインを数え始めた飴職人を見た()うには、孫のために三時間も並んだのに!!とたいそう憤慨して怒り任せに麻の糸でぐるぐる巻きにした。


温厚で優しい穏やかな苧うにしか知らなかったモンスターたちは、この妖怪が怒るって事は相当なことだぞ…と思って懲らしめに加わり、飴職人はあっと言う間に絶命した。


なお、後年この場所から大量のコインが出土され、研究者たちによってここは古代の銀行であった可能性が高いと発表されたという。





「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」


飴職人は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口前に立っていた。

コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。


飴職人はコンビニでバケモンパン(期間限定シール2枚入り)とアーモンドミルクコーヒーを買って家路についた。


家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。


「うわ…もう少し早く通りかかってたら仕入れたばっかの砂糖が無駄になってたかもなあ、怖い怖い」


飴職人は、ノリのいい接客と確かな技術で多くのお客さんを楽しませていましたが、神経質なおばさんに衛生面がどうたらこうたらと粘着されたことをきっかけに転職を考え始め、クレープ屋にりんご飴屋にハッカパイプに大学芋屋にカルメ焼き屋その他もろもろやってみたもののしっくりこず、どうしたもんかと馴染みの砂糖卸業者に相談したところ後継者のいない和菓子屋のご主人を紹介され、50を過ぎて弟子入りをしたのち繊細な飴で包まれたあんこ玉が大ヒットして一大ブームの火付け役となったのち、明日の仕込みをしようと砂糖の大袋を持ち上げて転倒してしまい砂糖まみれになりながら83歳の生涯を閉じたとのことです。




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