フフ…
福岡奏は、ごく普通のもと神様である。
毎日ごく普通に暮らし、毎日登校していろんなことを学んでいる、齢15のもと神様である。
今日も今日とて、陰湿ないじめが起きているのを許さない熱血少年が目の前でアホをコテンパンにしたのを見届けたあと、行きつけのコンビニでパピポとマチロンを買って家路についていた―――のだが。
キ、キキイィイ!!キキキキキ!!!
ドガ――――――――――――ん!!
ぐわしゃぁああ!!
ぶちゅ。
真っ白な空間。
福岡奏の魂と…、女神が対面している。
「福岡奏さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」
「あ、そうなんだ」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください」
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福岡奏(15)
レベル102
称号:転生者
保有スキル:フフ…
HP:8/12
MP:25447
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「というわけで…、いきなり草原にきたよ、あはは」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が…もと神様の前に現れた!
「活きのいいスライムだ、この世界は肥沃なんだね」
うろたえない、もと神様。
「せっかく割り振ってもらった保有スキルは、試さないとね。《フフ…》ってずいぶん大雑把だね、どういう意図で付与したのかな?」
スライムは傷だらけで微笑んでいるもと神様を見て、なんかいつもと違うと思っている!!
「うーん、ここで過ごすのも面白そうだけど、できれば戻りたいかな。まだ学校の派閥問題が解決してないし、これから強くなっていく絆を見守りたいんだよね。愛する人が育っていく様子も間近で見たいし、まだ老いていく過程を楽しめてない…何より、せっかく縁があったみんなを悲しませたくないしね」
もと神様は、スライムに手をのばした。
「《フフ…》そっか、なるほどね。じゃあ、僕は帰らせてもらうよ。あ、ちゃんと残さずに捕食してね!」
この人なに言ってんだろ??
スライムが首をかしげた時、もと神様が猛毒の表面を撫でてきて、あっと言う間に毒が回って絶命した。
なにがなんだかさっぱりわからないものの…とりあえず、スライムは死にたてほやほやのもと神様をまる飲みした。
「うん、戻れたね」
もと神様は、時間を巻き戻されてコンビニの入り口前に立っていた。
コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのを…バッチリ認識しているようだ。
もと神様はコンビニでパピポとマチロンを買って家路についた。
家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「もう車の運転はできなくなったから、尊い命を奪えなくなれたんだね。あと8年我慢できるといいけど、暴言吐いちゃうかなあ…あれ以上染まってほしくないなあ…」
もと神様は、いろんな人と笑い合ったりケンカしたり熱中したり盛り上がったりしながらほんの少し切ない恋をし、愛する人を見守る選択をしたのち幼馴染の事業を手伝い財を成して遅い結婚をすることになり、3人の子供をもうけ温かい家庭を築いて、親友と妻、同志、仲間、友人、後輩、息子二人を見送り、18人いるひ孫の1人に「長寿日本一になれるかもね!」と言われた翌週、ポックリ逝ったそうです。
なお、訃報が回覧板で回された際、毎日近所の公園に出向きラジオ体操をしては顔なじみの皆さんとにこやかにジョークを飛ばしていた事から、あの人109歳だったの?!と、かなり相当驚かれたという事です。




