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☆いきなり転生☆ さらに~   作者: たかさば


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85/88

ごはんだよ!

山田朝子は、ごく普通の肝っ玉母ちゃんである。

毎日シャキッとしない息子どものケツを叩き、毎日会社でミスってしょんぼり帰ってきた旦那の丸まった背をバチンと叩いて励ます、齢39の肝っ玉母ちゃんである。


今日も今日とて、うっかり弁当を忘れていった真ん中の息子のところへ怒り心頭でランチバッグを届けに行ったあと、行きつけのコンビニで泣ける話50選ムックと堅焼きせんべいのお徳用袋を買って家路についていた―――のだが。



キイーッ!!キキキキキ――――!!!


ドガ――――――――――――ん!!


ぐわしゃぁああ!!


ぶちゅ。




真っ白な空間。

山田朝子の魂と…、女神が対面している。


「山田朝子さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」

「はあっ?!」


「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」


────────

山田朝子(39)

レベル38


称号:転生者


保有スキル:ごはんだよ!

HP:102

MP:23

────────




「ちょ!!これってまさか異世界転生?!ヤバイ、王子様が…って、若返ってない!!詰んだ!!!」


べよん、べよん。


水色の、ぶよぶよした丸い塊が…肝っ玉母ちゃんの前に現れた!


「ちょいとアンタ!!この世界のこと教えてくんない!!あたしゃ初心者でね、ホント困ってんの!!困った時はお互いさまっていうでしょう、あたしもいつか絶対アンタのこと助けるからさ!!」


うろたえない、肝っ玉母ちゃん。


「あ、保有スキルもらったっけ、《ごはんだよ!》って…ちょっと待て、あたしゃこんなとこに来てまで毎朝パンを十枚焼いて目玉焼きを一パック分作って、米を五合炊いて弁当五つ作って、どでかい鍋に豚汁作って…大飯食らい3人+小食1人+自分が満腹になるおかずをいかに安く作るか考えなきゃいけないってこと?!…くっそー、やったるわ!!!」


うばほん!!


肝っ玉母ちゃんの家のキッチンが出てきたぞ!!!


「肉はある、卵もあるし米は10キロの無洗米がおいてあるな、キャベツにもやしに…、これ給料日あとの充実した冷蔵庫じゃん!!よーし、めっちゃ作っちゃる!!でもって胃袋を掴んでお礼に…グフフ!!!」


スライムは勢いのある発言に少々たじろぎつつも、大人しくごはんが出てくるのを待っている!!


肝っ玉母ちゃんは手際よくごはんを作りはじめた!

家族が大好きな豚汁にホクホクのつやつやに炊きあがったご飯、お手製ふりかけに甘すぎる卵焼き、ゴロゴロしたじゃがいもと人参がやや家族に不評ではあるが味は絶品のカレーにジャンボ肉シュウマイ、ちょっとバサバサしてるけど食べ応え十分の卵サンドにニラたっぷりお好み焼き、めんつゆで煮ただけでなぜかおいしい鶏の手羽先、たまに小骨が残ってるけどつぎからつぎへと手が止まらないサバのほぐし身入りおにぎりに手のひらサイズのお稲荷さん、中にも上にもチーズがたっぷりのフライパンサイズハンバーグ、胸肉と豆腐とはんぺんで作った特製ナゲットに特別な日にしか作れないスペシャルすき焼き―――!!!


「はー、さすがにちょっと作り疲れたわ…、ご飯食べながら一休みしよ」


スライムと同じ食卓に着いた肝っ玉母ちゃんは、1つだけ残されているジャンボ肉シュウマイをつまんで口に入れた。


ちょ!!!

それ、めっちゃおいしいから最後に食べようと思ってとっといたのにー!!!


一番好きなやつを食べられてしまったスライムはついつい反射的に肝っ玉母ちゃんをパクッといってしまった!


またあとで作ってもらえばいいじゃんと気付いたスライムは秒で吐き出したが、すでに消化が始まっていてドロドロになっていたため泣く泣く飲み込み、しょっぱくなってしまったご飯を一人寂しく食べたという。




「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」


肝っ玉母ちゃんは時間を巻き戻されて、コンビニの入り口前に立っていた。

コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。


肝っ玉母ちゃんはコンビニで泣ける話50選ムックと堅焼きせんべいのお徳用袋を買って家路についた。


家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。


「なんか手伝えることある~?警察や救急車呼んだ?あ、ダメダメ、近づくと危ないよ!!」


肝っ玉母ちゃんは、笑顔と恐怖を遠慮なしに振り撒いてパワフルに日々を過ごしながら、忖度を強要してきやがるクソどもが蔓延るPTAをぶっ潰したり、保身のために子どもの気持ちを蔑ろにする腐った大人たちに真正面から挑んでとある組織を崩壊させたりして鬼目立ちするようになったものの、思いがけず末娘を授かったあたりから恐ろしさはなりを潜め始め優しいまなざしを振り撒くようになり、8人の孫たちには穏やかで優しい慈愛の塊みたいな奥ゆかしいおばあちゃんだと信じられて79歳で旅立ったとのことです。




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