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よくお似合いですよ!

森永一夫は、ごく普通の眼鏡屋である。

毎日ずらりと並ぶメガネのホコリを払い、毎日お客様のお顔にメガネをかけてさしあげる、齢33のメガネ屋である。


今日も今日とて、ショーケースの中のブランドフレームが売れてホクホクしたあと、行きつけのコンビニでのど潤いマスクとぞらえモンのうちわを買って家路についていた―――のだが。



キイィイ!!キ――――イイイイイイイ!!!


ドガ――――――――――――ん!!


ぐわしゃぁああ!!


ぶちゅ。




真っ白な空間。

森永一夫の魂と…、女神が対面している。


「森永一夫さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」

「はあ」


「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」


────────

森永一夫(33)

レベル6


称号:転生者


保有スキル:よくお似合いですよ


HP:12

MP:6

────────




「というわけで、ううむ、いきなり草原に放り出すというのは…なんという横暴な」


べよん、べよん。


水色の、ぶよぶよした丸い塊が…メガネ屋の前に現れた!


「スライム?!武器も何もないのに、どう…、どうすんだ!」


うろたえる、メガネ屋。


「そうか…、保有スキルを試せばいいんだな!《よくお似合いですよ?》」


うばほん!


メガネのフレームがずらりと並ぶ六畳ほどのミニ店舗が出てきた!


スライムは自分に似合うメガネがわからず、うろたえている!


「こちら最近の人気デザインでして…こちらはかわいく見えるタイプ、こちらはシンプルなもの、こちらは…」


メガネ屋が一生懸命オススメするも、スライムはしっくりくるものが見つからず決めあぐねている。

どうせなら奇を衒ったのにするか…スライムは小さな丸メガネに手を伸ばした。


「あ、それはダメですかね~、お顔のシュッとした方でないと…、そもそもサイズが小さすぎて顔にめり込んじゃいます。お高いお品なので…フィッティングはご勘弁下さい」


スライムは身体を細長く変形させた。


「あ、これならなんとか!はい、失礼します…」


スライムはメガネをかけてもらった!

そっと差し出された鏡をのぞいてみる…、げえ!

お世辞にも似合っていない!

スライムは四角いメガネが似合うタイプだった!


「よくお似合いですよ!」


嘘つけ!

さては売り上げのことしか考えてなくて、適当な事言ってるな?!


怒りが抑えきれなくなったスライムはメガネ屋を丸のみした。


草原には誰も来ないメガネ屋が残されたが、ダークドラゴンが地上に降り立った際に踏み潰され、106本のフレームは全てひしゃげてしまった。




「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」


メガネ屋は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口前に立っていた。

コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。


一般人はコンビニでのど潤いマスクとぞらえモンのうちわを買って家路についた。


家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。


「うわ、ものすごい潰れっぷり…たぶんかけてたメガネもくちゃくちゃだろうね」


メガネ屋は、激安眼鏡店が近所にオープンして戦々恐々とした日々もありましたが、地道に真面目に真摯に丁寧な仕事だけをしている様子を地域住民に広く知られていたため長く店舗を運営し続けることができ、79歳で愛用のメガネをうっかり踏み潰し新しいものを作らないといけないなという話を孫にした翌日の朝、この世を去っていたそうです。

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