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なんだんまあ!!

小林栄子は、ごく普通のえせ名古屋人である。


毎日名古屋メシを好んで食し、毎日マナーの悪いドライバーにクラクションを鳴らす、齢58のえせ名古屋人である。


今日も今日とて、旅行先で全国区のバラエティ番組の街頭インタビューを受け「お住まいはどちらですか」と聞かれて名古屋市民じゃないくせにいけしゃあしゃあと「名古屋です」と答えたあと、地元で見かけたことのないコンビニでエビチリまんと麻婆豆腐パンを買って家路につこうとしていた―――のだが。



キイィイ!!キ――――イイイイイイイ!!!


ドガ――――――――――――ん!!


ぐわしゃぁああ!!


ぶちゅ。




真っ白な空間。

小林栄子の魂と…、女神が対面している。


「小林栄子さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」

「はあ?」


「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください」


────────

小林栄子(58)

レベル14


称号:転生者


保有スキル:なんだんまあ!!


HP:80

MP:2

────────




「こんなん()()だわ!」


べよん、べよん。


水色の、ぶよぶよした丸い塊が…えせ名古屋人の前に現れた!


「わたし知っとる!!これ、スライムだらあ?!ヤダ、どいだね?!戦わなかんの?武器も何も…あぁへんが!」


うろたえる、えせ名古屋人。


「保有スキル?《なんだんまあ!!》って、なんだん!?」


スライムは今にも襲いかかろうとしている!


「ちょい待ちん!あんた、あたしみたいなおばちゃんなんかかじっても美味ないで!!!名古屋メシや銘菓のがよっぽどええわ!とりあえず1回食べてみりん、絶対ハマるでね!」


うばほん!


みそカツにエビフライ、きしめんに台湾ラーメン、あんかけスパに甘口抹茶スパ、おぐらトーストに鉄板スパゲティ、スガ◯ヤの特製ラーメンセットにココ◯チの全トッピング乗せ、手羽先に天むす、ひつまぶしにみそ煮込みうどん、土手煮にカレーうどん、ぴよりんにういろう、ナヤバシまんじゅうにバンカクのゆかり、鬼まんじゅうに五平餅、しょうゆ味のヌーディなたこ焼きにたません、赤だしにみそ田楽、生せんべいになごやん、カエルまんじゅうにダイナゴン、しるこサンドにさきイカチョコ、シャチボンにつけてみそかけてみそ、ビスくんにクッピーラムネ、大あん巻きにうなぎパイ以下略…若干名古屋をはみ出した地域の名産も含まれつつ、いっぱい出てきたぞ!


スライムは名古屋グルメをいただきはじめた。

甘さが際立つ濃いめの味付けはスライムの好みに合っているようだ…。

ずいぶんご機嫌で捕食につとめている様子。


「名古屋はね、ホント美味い食べものが豊富だもんで、ついつい食べすぎてまうのが玉にキズなんだわ。こないだなんか名古屋城に行く前にモーニングではらぎし食べたのに、城の中でも名古屋コーチンと五平餅食べて!城から出たあともシロノワールとコーヒーぜんざいよばれたでしょう、御当地スーパーの激安弁当目当てで乗り込んだらげんこつみたいな肉だんごや手の平よりデカいチキンカツが売っとったもんでそれも買ってさあ、知っとる?あんこだらけのぼた餅が…」


食が進む話を聞かされたスライムは捕食スピードがアップした。


見る見る名古屋グルメが減っていく!

一番最後に取っておいたアワユキをそっと口に入れたスライムは、次のグルメが出てくるのを待っているぞ!


「何気にさあ、食品メーカーがいっぱいあるもんでええんだわ!直売所に行くとお得に買えるでね!シュークリームにチョコカステラ、クッキーにビスケット、ブラックサンダーにバウムクーヘン、レモンティーに日本酒、えびせんべいにあられ、アウトレットスイーツはもちろん野菜や肉、魚の大型直売所が…、漁港も…、美味いのなんの…、キャベツはしゃきしゃきで…、菊の花…サボテン…」


えせ名古屋人の話を聞いていたスライムは、おなかが空いてたまらなくなった!

あー、もうなんでもいいから食べたい!


がまんが限界を超えてしまったスライムは、えせ名古屋人を一口で捕食した。


ちょっぴりみそのような風味を感じたが、どうやら気のせいだった模様。




「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」


えせ名古屋人は、時間を巻き戻されてコンビニの入り口に立っていた。

コンビニの入り口のところで立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。


えせ名古屋人は、コンビニでエビチリまんと麻婆豆腐パンを買って家路についた。


高速バスの乗り場近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。


「どいだね東京は!おそがい事故がこんなとこで!たいがいにせなかんよ!」


えせ名古屋人は、娘が結婚する時に式も餅まきもやらないことにガッカリもしましたが、みそとあんこ多めの日常を過ごしながらのんきに歳を重ね、結局一度も名古屋市内に住むことなく86歳でこの世を去ったそうです。なお、最後に食したのは赤福のあんこだったそうです。


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味噌カツにゃあ赤出汁の味噌汁だぎゃぁ♪
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