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減量の秘訣

米松敏夫は、ごく普通のダイエット成功者である。


毎日100キロあった頃の自分の写真を見せ、毎日長くなりすぎてしまったベルトをスラックスに通す、齢38のダイエット成功者である。


今日も今日とて、退社後に駅前のジムに寄り平日メニューのトレーニングをこなした後、行きつけのコンビニで水とソイスナックバーを買って家路についていた―――のだが。



キキキキキュー!!キキキ――――!!!


ドガ――――――――――――ん!!


ぐわしゃぁああ!!


ぶちゅ。




真っ白な空間。

米松敏夫の魂と…、女神が対面している。


「米松敏夫さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」

「はあ」


「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください」


────────

米松敏夫(38)

レベル27


称号:転生者


保有スキル:減量の秘訣


HP:39

MP:21

────────




「というわけで…、いきなり草原とは…。民家も見えないし…、マズいなあ…」


べよん、べよん。


水色の、ぶよぶよした丸い塊が…ダイエット成功者の前に現れた!


「スライム!武器…何もないな…。隠れようにも…出会ってしまっているわけで、いわゆるピンチ的な‥‥」


うろたえる、ダイエット成功者。


「あっ、保有スキルがあるから、なんとか?《減量の秘訣》って…戦うやつじゃ、ない!」


うばほん!


痩せる前のダイエット成功者が出てきた!!

盛大に突き出た腹部、たるんだ二重あご、ボテッとして背中の丸まった姿勢の悪い立ち姿、パツンパツンに着こなしているジャージの股の部分は摩擦によるダメージがひどく穴が開いている!


「うわ、醜い身体!!俺、こんなんだったの?!って、今はそれどころじゃない!!よし、協力してアイツを…倒すぞ!!」

「わ、わかった」


ダイエット成功者とダイエット未成功者は、スライムを翻弄して足元に事がっている大きめの石を投げつける作戦に出た!


「スライム!こっちだ!!」


ダイエット成功者がスライムをおびき寄せている隙にダイエット未成功者が石を拾い、投げつけようと…って、なんかめっちゃモタモタしてる!!

突き出た腹がつっかえて、足元の石を拾うのに手間取っているぞ!


拾った石を投げつける前にガッツリ気付かれてしまったダイエット未成功者は、ボテボテと逃げ出したが…あっと言う間に追いつかれた。


「よし、アイツを追いかけてる隙に石を投げつけよう…って!!めっちゃ…食われとるがな!!!」


ダイエット未成功者を見捨てて草原を走り去ったダイエット成功者は、小さな村にたどり着いた。

人手が足りず困っていることを聞いたダイエット成功者は、スキルを使ってダイエット未成功者を召喚し、村作りに貢献することにした。


初めはブヨブヨとしていて足手まといになりがちだったダイエット未成功者達だったが、毎日土木作業に明け暮れているうちに減量し、やがてダイエット成功者と見分けがつかなくなった。

ダイエット成功者となったダイエット未成功者は、スキル《減量の秘訣》が使えるようになった!


ダイエット成功者たちは、ダイエット未成功者を召喚しては村のために働かせた。

よく働いたダイエット未成功者はダイエットに成功し、スキルを使って村民を増やした。

どうしても叶いそうにないモンスターに遭遇した時は、人身御供にしてピンチを乗り切ることもあった。


ダイエット成功者が村人の半数を超えた。


日焼け具合や筋肉のつき方に多少差こそあれどほぼ似たり寄ったりの背格好であったため、少々の混乱が生じることがあったが、おおむね平和な暮らしができるようになっていた。


このまま繁栄が続くのかと思われたある日、いきなり同じ背格好をした村民が全員消えた。

クラーケン討伐のエサになる事を強制されたダイエット未成功者が自分を召喚したダイエット成功者を恨んで闇討ちしたところ、きれいさっぱり全員消えてしまったのである!

どうやら、一番おおもとの初代ダイエット成功者が死亡すると全部なかったことになる模様!


いきなり村民の1/3が消え、働き手も防壁も商品も失った村は滅亡した。



「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」


ダイエット成功者は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。

コンビニの入り口のところで立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。


ダイエット成功者はコンビニで水とソイスナックバーを買って家路についた。


家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。


「もうちょっと早く通りかかってたら…明日のようやく取れたハードトレーニングの予約がパアになるとこだったかも…」


ダイエット成功者は、業務不振で駅前のトレーニングルームが閉店したあと自主的に体を動かす意欲が消滅してしまい、二年かけてじわじわとリバウンドをし、体重増が止まらず最高記録125キロをマークしたあたりで痩せないとマズいと思い減量に取り組み始めたのですが長続きせず、過去に30キロやせたという栄光をひけらかしながら暴飲暴食を続けて136キロまで増量して過体重に耐え切れなくなった下半身が崩壊し長期入院をする羽目になったのち、縁があった管理栄養士さんに厳しく管理をしてもらって78キロまで体重を落とすことに成功し、その後緩やかに体重は減少を続け、73歳でこの世を去った時は62キロだったそうです。


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