ミンナのアイドル♪マリきュ〜にゃです♡みゃは☆
堀茉莉花は、ごく普通のアイドルである。
毎日カワイイ声を出して、毎日キラッキラのあまあまメッセージをスイーツ写真と一緒にSNSにアップする、齢26のアイドルである。
今日も今日とて、チェキ会が終わって控室に戻りメイクを落とそうと鏡をのぞき込んだ時に右目のつけまが無くなっていた事に気が付いて発狂したあと、行きつけのコンビニで女神の河（焼酎）となめたけの瓶を買って家路についていた―――のだが。
キキュキュキュキュ！！キ――――！！！
ドガ――――――――――――ん！！
ぐわしゃぁああ！！
ぶちゅ。
真っ白な空間。
堀茉莉花の魂と…、女神が対面している。
「堀茉莉花さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」
「ええ～♡」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください」
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堀茉莉花（26）
レベル9
称号：転生者
保有スキル：ミンナのアイドル♪マリきュ〜にゃです♡みゃは☆
HP：102
MP：99
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「ヤダ～♡まりきゅ…異世界転生ぇしちゃったっぴょん☆」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が…未装備のアイドルの前に現れた！
「スライムさん♡ぷるんぷるんのソーダゼリー☆めっちゃステキでマリビックルぅ！ノーセットアップでちょびっとアセアセ、でもぎゃぁあんばっ♪」
うろたえる、スライム。
「そぉだ～♡保有スキル試してみるる☆《ミンナのアイドル♪マリきュ〜にゃです♡みゃは☆》って、ヤーンぷんすかプンプン！！めっちゃショートカットしてるお？！」
うばほん！！
アイドルは秒で衣装チェンジした！！
フルメイク＆フル装備、場を盛り上げるためのショボい魔法もどきの仕込みもバッチリだ！
スライムは、頭にゲンコツをのっけたままちょびっと飛び跳ね腰に手をやり上目遣いでこちらを凝視するアイドルを見て、なんか逃げ出したくなっ
「は～い♡今日も鱗付きの生魚がとびきり美味しいぞ☆野良猫族愛でられ系地下アイドル♪セカンドシングル『可愛すぎて宇宙が滅亡したけどチートスキルはぎゅ×はぎゅで抱きしめたらすべて許されました♡』絶賛発売ちゅ～、ラブピ（ファンネーム）に心のモフモフをバッチリお届け☆ラブリシャスらぶMAX永遠の三番手(^ω^;)ミンナのアイドル♪マリきュ〜にゃです♡みゃは☆とっておきのラブあまスノゥ、受け取って♡」
アイドルが胸の前で手を交差すると、手首のバングルから粉が飛び出した！
ぱさー！
百均で調達したパッサパサの安いラメとピンク色に染められた片栗粉、粉糖、バニラエッセンスの混ざったものがスライムにふりかかった！
スライムのSAN値が…だだ下がっていく！
「今日はメインボーカルのみぅたんがいないけど…まりきゅちょ〜がんばるお☆んじゃミュージック、スタートォオオ♡」
～♪
ド派手なミュージックが流れると同時に、眩いステージがあらわれた！
あざとい振り付けのダンス、ぶりぶりのモーション、ガッツリ翻って見せパンを彩るギャザーミニスカート…うぉお…目が離せないのは何故だ！
もしかして…コレが、萌え…？
「♭ボエー♪」
予想外に破壊力のある歌声を聞いたスライムは、はっと我に返ってステージごとアイドルをまる飲みした。
「う、うーん？？？なんか夢でも見ていたような？？」
アイドルは時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。
コンビニの入り口のところで立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。
アイドルはコンビニで女神の河となめたけの瓶を買って家路についた。
家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「…キモ…じゃなかった♡やぁああああん、こっわぁあああああああああああい(´；ω；`)」
アイドルは、39歳までガッツリ設定を守り抜いて活動をつづけていたのですが、まな息子が中学受験をするころにメインボーカルが卒業することになりすっぱり足を洗うことを決め、ごく普通のお母さんとしてしばらくすごしたのち女優デビューをした娘のマネージャーとして活動を始め、バラエティ番組で過去をいじられ辟易したりしつつ、孫たちがマジシャンデビューし世界的に有名になれたのを見届けた翌年、89歳でこの世を去ったそうです。
なお、アイドル時代に着用していたマントとステッキは、今もひ孫が衣装として愛用しているそうです。
