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体格がいいねえ

横井加奈子は、ごく普通の健康優良児である。


毎日お母さんのご飯を平らげて、毎日給食でおかわりをする、齢8の健康優良児である。


今日も今日とて、家に帰ったらじゃんけんで勝ち取った風邪で休んだクラスメイトのコッペパンにお気に入りのジャムとはちみつをたっぷりかけて食べよう♪と思いながら、学校近くのコンビニの横を通り過ぎた―――のだが。



キイィイーッ!!キ――――イイイイイイイ!!!


ドガ――――――――――――ん!!


ぐわしゃぁああ!!


ぶちゅ。




真っ白な空間。

横井加奈子の魂と…、女神が対面している。


「横井加奈子さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」

「ええ?」


「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください」


────────

横井加奈子(8)

レベル8


称号:転生者


保有スキル:体格(たいかく)がいいねえ


HP:28

MP:3

────────




「…とりあえず、コッペパン食べよ。モグ、モグ…」


べよん、べよん。


水色の、ぶよぶよした丸い塊が…健康優良児の前に現れた!


「あ、スライムさんもコッペパン食べる?」


うろたえる、スライム。

そんな貴重な食べ物、もらってもいいの?

半分に割って…大きい方くれた!

この子、良い人だー!


「ねえねえ、保有スキルって何か知ってる?《たいかくがいいねえ》って、よくおばあちゃんの友達とか親戚に言われるんだけど、よく意味が分かんないの。でもね、みんなお菓子とかいっぱいくれるんだよ!全部すっごくおいしいんだ~」


スライムは差し出されたコッペパンをモグモグしながら話を聞いている!


「パンなくなっちゃったね!ねえねえ、おなか空いてない?あたしのおばあちゃんち駄菓子屋さんなんだ、遊びに行ったら賞味期限切れのお菓子もらえるから一緒に行かない?おなかいっぱい食べられるよ!でも…ここ、どこなんだろ…帰れるかな…」


わーい!

お誘いしてもらった!

スライムは大喜びでおばあちゃんのおうちにお邪魔する気になった!

手をつないで、おいしいもののお話をしながら草原を行く健康優良児と、魔物。


「いつつくのかなぁ…、もうすごく歩いたよぉ…、おなか空いたよぉ…」


べそをかき始めた健康優良児。

スライムは、とっておきのおやつを取り出して、半分に割って、大きい方を健康優良児に差し出した。


「くれるの?ありがとう!」


ンヴォラ(崩れ魂の甘口しっぽを刻んでまぶした毒々ゾンビドラコンの骨粉だんご)を食べた健康優良児は、秒で毒が回って絶命した。


スライムは、大好きなお友達を捕食したあと、いつか必ず生まれ変わっておいしいお菓子を食べさせてもらいに行くんだと心に誓ったという。




「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」


健康優良児は時間を巻き戻されて、コンビニの横に立っていた。

コンビニの駐車場の入り口のところで立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。


健康優良児は今日のおやつの事を考えながらコンビニの横を通って家路についた。


家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。


「あっ、ポテトチップスの袋と…ケーキの箱が散らばってる!!もったいなー」


健康優良児は、プクプクコロコロとした見た目をからかわれたりしつつおいしいお菓子を食べたらサクッと怒りを忘れる暮らしを続けていたのですが、思春期を迎えた頃からどんどん体重が増え始めて不健康になり、大好きなおばあちゃんの駄菓子を食べるのをやめ孤独にストイックに頑張り過ぎて笑顔を忘れてしまったりしたものの、食いしん坊な男子と出会って一緒に食べ物の話で盛り上がったり運動と称して遠くまで散歩に出掛けたりしているうちに健康を取り戻し、そのまま人生のパートナーとして長く寄り添い続け98歳になるまで仲睦まじい夫婦として名をはせたのち、天国に旅立ったとのことです。


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― 新着の感想 ―
「健康優良児」、「体格が良い」、昭和ですな〜  (´∀`*)
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