ブチ殺すぞ!!!
野々川昇太郎は、ごく普通の物騒な人である。
毎日必要以上に他人をビビらせて、毎日武器の手入れを欠かさない、齢41の物騒な人である。
今日も今日とて、生意気に口ごたえををしてきたスーパーのクソババアを自慢のクソでかいだみ声で罵ってスッキリしたあと、行きつけだったコンビニの跡地にできた無人冷凍食品販売店に行ってめぼしいもんをパクってやろうと乗り込もうとしていた―――のだが。
ギュギュギィイイイイイ!!キ――――イイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!
ぐわしゃぁああ!!
ぶちゅ。
真っ白な空間。
野々川昇太郎の魂と…、女神が対面している。
「野々川昇太郎さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」
「あ゛ぁ?!」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください」
────────
野々川昇太郎(41)
レベル8
称号:転生者
保有スキル:ブチ殺すぞ!!!
HP:2+380(狂化)
MP:-300
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「こんのッ…クソがぁああああああああアアアアアアア!!!」
ビリぃイイイイイイイイイイ!!!
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が…着ていたアロハシャツを怒り任せにビリビリに引き裂いた物騒な人の前に現れた!
「ぁあん?ぬぁにこっち見てんだぁアアアアアア!!!」
うろたえることなく、ぶよぶよしているスライム。
「《ブチ殺すぞ!!!》」
ブチ……、ブチ…、ブチッ、ブチ、ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ ブ チ ブ チ ・ ・ ・
スライムはブチブチになって飛散した。
「グわああアアアア!!!イテエ、苦し…ヒィ……ガッ…」
28兆86万2千8百62粒になったスライムは、物騒な人にまとわりついた。
スライム粒の一つ一つが小さすぎるため、捕食スピードが格段に遅い!!
たまにはまる飲みでなく、じっくりいただいてみるのも乙ですな…。
スライムは892日かけて物騒な人を消化した後、合体した。
なお、236粒は合体することを放棄して個々に捕食を始め、それなりに身を肥やしたようだ。
「…あ゛ぁん?!」
物騒な人は時間を巻き戻されて、無人コンビニの入り口付近に立っていた。
無人コンビニの入り口近くで立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのに…、何となく気が付いたらしい?
物騒な人は、無人コンビニのドアが開かなかったので六発ほどキックとパンチをぶち込んだあと、家路についた。
家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「あ゛ー、久々に思いっきり人轢いてスッキリしてえー!!!」
物騒な人は、すっかり顔なじみになった警察のおやっさんが「病気になってしまったからもうお前を追えなくなった」とショボいことをぬかしたので俺が引導を渡してやるぜと自慢の武器を手入れを始めたのですが、テンションをあげるためにウォッカで飲んだヤバい薬が効き過ぎたため慎重さが求められる箇所でうっかり手が滑り、床に落ちていたバールの上に落として暴発事故を起こしてしまい、中途半端に急所をかすめたせいで身動きもできず助けも呼べず痛みに悶えながらじわじわと命の終わりが近づくのを堪能させられたのち、この世を去ったそうです。
なお、旅立ちの際には恨みを抱えたままこの世を去った魂がわんさか迎えに来ていたとのことです。