ギャハハハハハハ!
滝川瑞希は、ごく普通のお笑い好きである。
毎日SNSをチェックして、毎日お笑いのネタ動画を見ながら就寝する、齢19のお笑い好きである。
今日も今日とて、地下芸人のゲリラライブに行ってしこたま笑い転げたあと、行きつけのコンビニで納豆巻きと玄米茶を買って家路についていた―――のだが。
キキキキー!!キギギュイイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!
ぐわしゃぁああ!!
ぶちゅ。
真っ白な空間。
滝川瑞希の魂と…、女神が対面している。
「滝川瑞希さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」
「はひ??」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください」
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滝川瑞希(19)
レベル11
称号:転生者
保有スキル:ギャハハハハハハ!
HP:19
MP:32
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「とんでも展開、キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が…お笑い好きの前に現れた!
「スライムだ!ちょ~ウケる!めっちゃ透明!向こう側スッケスケ!あは、あはははは!」
大ウケする、お笑い好き。
「保有スキル《ギャハハハハハハ!?》ナニコレwww笑ってたらおけ?じゃーさ、とびきりのお笑い芸人…出てこーい!」
うばほん!
スライムの前にスタンドマイクがでてきたぞ!
「ちょ、キミが芸人なんかい!なんちゅー出落ち!」
お笑い好きが突っ込んだら、何やら背後が…うわ!
なんかめっちゃ観客がいる!
お笑い好きは、最前列の席に腰かけた。
スライムがマイクスタンドの前で伸びたり震えたりするたびに、モンスターたちはバカウケしている!
「なんか何いってんだかわかんない!つまんないな〜」
お笑い好きのつぶやきを聞いたスライムは、お笑い好きを丸のみした。
今異世界で空前の大ブームである丸のみツッコミに、会場は湧きに沸いたという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
お笑い好きは時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。
コンビニの入り口のところで立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。
お笑い好きは、コンビニで納豆巻きと玄米茶を買って家路についた。
家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「やば、もうちょっと早く通りかかってたら、今日のワンマンライブ…空席出ちゃってたかも!」
お笑い好きは、毎日お笑いを視聴しながら少々のやらかしや失敗は笑うことで吹き飛ばし、ご機嫌に日々を過ごしていたのですが、ある時ぜんぜん笑えない芸人に出会い衝撃を受け、いつか腹の底から笑える日が来るはずと見守り続けているうちに愛が芽生えて結婚する事になり、遅咲きの旦那が爆笑の渦のど真ん中にいるのをたまに真顔で見ている事を孫や曾孫にツッコまれたりしつつ、99歳でこの世を去ったそうです。