ピロリ、ピロリ、ピロリ
山村智樹は、ごく普通のハンバーガーショップスタッフである。
毎日使い捨ての紙キャップをかぶり、毎日出来たてのハンバーガーをラッピングする、齢18のハンバーガーショップスタッフである。
今日も今日とて、女子高生のスマイル0円下さいと言う注文に応えたあと、行きつけのコンビニでポテショートとスイートポテトスムージーを買って家路についていた―――のだが。
キイィー!!キュキ――――イイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!
ぐわしゃぁああ!!
ぶちゅ。
真っ白な空間。
の魂と…、女神が対面している。
「山村智樹さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」
「はあ」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください」
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山村智樹(18)
レベル4
称号:転生者
保有スキル:ピロリ、ピロリ、ピロリ
HP:9
MP:6
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「というわけで、いきなり草原!!ウザー!」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が…ハンバーガーショップスタッフの前に現れた!
「スライムかよ?!武器も何もないっつーの、マジやべー!」
うろたえる、ハンバーガーショップスタッフ。
「そうだ、保有スキルあるべ?《ピロリ、ピロリ、ピロリ?》はあ?なんこれ!」
うばほん!
ハンバーガーショップのフライヤーがでてきたぞ!
ピロリ、ピロリ、ピロリ!
「げ、揚がってんじゃん!」
ハンバーガーショップスタッフは、揚げたてのポテトをバットの上にあけた!
いつものように塩を降るハンバーガーショップスタッフ。
「やべ、かけすぎた!まいっか、どうせ味なんか分かんねーだろ」
ハンバーガーショップスタッフは、アツアツのポテトSサイズをスライムに差し出した。
スライムはポテトを一本、口の中に…塩っぱっ!
見る見るうちに萎れていくスライム!
「あ、コレ勝っちゃう系?」
バットの上にあるポテトをわしわしつかんでもしゃもしゃ食べているハンバーガーショップスタッフを見たスライムは、怒り心頭だ!
塩の少ない部分あるならそっちくれればいいじゃん!
Sサイズ渡してきたくせに、なに食べ放題してんの?!
スライムはハンバーガーショップスタッフを一口で捕食した。
ぼちぼち塩気は強かったが、食べられないほどではなかったらしい。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
ハンバーガーショップスタッフは、時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。
コンビニの入り口のところで立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。
ハンバーガーショップスタッフは、コンビ二でポテショートとスイートポテトスムージーを買って家路についた。
家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「うぅわ、きんも!もうちょっと早く通りかかってたら異世界転生でチーレムwww」
ハンバーガーショップスタッフは、マニュアルのしっかりしたバイト先でみっちりマナーや社会人の常識を学んだ事が功を奏し、希望した企業に入社してバリバリ働きサクサク出世したのち、定年退職を期にハンバーガーショップでアルバイトする事にしたのですが、マナーのなってない若者どものせいで怒り心頭で毎日を過ごすハメになり、やけにキレる爺さんとして憎まれながら75歳でこの世を去ったそうです。