雨雨ふれふれもっとフレー!
佐藤みゆは、ごく普通の雨降らしである。
毎日自分の能力に気付かず、毎日ごく普通に一般的小学生の生活を送る、齢8の雨降らしである。
今日も今日とて、出校日で学校に行った帰りにゲリラ豪雨に見舞われ全身ぬれねずみになり、行きつけのコンビニで雨宿りをさせてもらったあと家路についていた―――のだが。
キイィッ!!キ――――イイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!
ぐわしゃぁああ!!
ぶちゅ。
真っ白な空間。
佐藤みゆの魂と…、女神が対面している。
「佐藤みゆさん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」
「ええ?」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください」
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佐藤みゆ(8)
レベル38
称号:転生者
保有スキル:雨雨ふれふれもっとフレー!
HP:2
MP:87
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「なに、これ〜?!草原しか、な〜い!」
ぺよん…、ぺよん…。
水色の、丸い塊…?が、雨降らしの前に現れた!
「わあ、スライム…だよね?透明でキレー!ぷにぷにで丸っこくて、かわい…くない?!よく見るとなんかシワシワしてる!ヒビ割れてる…どうしたの?」
興味津々の、雨降らし。
ここ3年ばかり続いている乾季の影響をガッツリ受けているスライムは、水分不足で濃縮してしまっていた。自慢の猛毒も干上がり、体内の水分量は95%減…はっきり言って、風前の灯状態だ!
「もしかして、干からびてるの?なんかかわいそう。そうだ、保有スキル?《雨雨ふれふれもっとフレー!》で、なんとかツルツルになんないかな?
うばほん!
もく、もくもくもく…!
ざざ、ざばー!
突如ドス黒い雲がたちこめ、ゲリラ豪雨が草原をおそった!
「スゴイ雨!傘ないのに〜!わ~ん!」
雨降らしは、あっという間にぬれねずみになった!
どんどん雨脚は強まっていく!
豪雨の勢いに潰されそうな雨降らし!
だがしかし…、水分を含んで滑らかさを取り戻したスライムが身を挺して守りはじめた!
雨降らしの上に傘状にのび、流されてしまわないよう船状に変化した!
猛毒成分が絶対に雨降らしに触れないよう工夫しているぞ!なんという気遣い!
「助けてくれるの?ありがとう!」
スライムは、雨降らしを連れて集落に向かった。
雨降らしは救世の巫女として崇められ、多種多様なモンスターたちと穏やかに暮らしていたが、愚かな人間が『人間は人間と暮らすべきだ』とほざいて乗り込んできて、逆ギレしたショボい神官に刺されて絶命してしまった。
ガチギレしたスライムはクソ人間どもを全滅させて魂を対価に雨降らしの復活を試みたが、失敗したという。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
雨降らしは時間を巻き戻されて、コンビニで雨宿りをさせてもらっていた。
コンビニのひさしの下に入る前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。
雨降らしはコンビニで雨宿りをしたあと、家路についた。
家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「雨降ってて良かった、もうちょっと早く通りかかってたらひかれてたかも!」
雨降らしは、結局自分の持つ能力に微塵も気付かず、104歳でこの世を去ったそうです。
なお、ひ孫は自他共に認める日本一の晴れ男として名をはせているとのことです。