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展示

池沢楓は、ごく普通の額縁屋である。


毎日展示してある額縁にはたきをかけ、毎日380万の額縁はいつになったら売れるんだろうと不安に思う、齢59の額縁屋である。


今日も今日とて、市民会館のAブースにレンタル額縁を80枚届けたあと、行きつけのコンビニでメガネレンズクリーナーシートと制汗スプレーを買って家路についていた―――のだが。



キキキイイィイ!!キイ――――!!!


ドガ――――――――――――ん!!


ぐわしゃぁああ!!


ぶちゅ。




真っ白な空間。

池沢楓の魂と…、女神が対面している。


「池沢楓さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」

「はあ」


「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください」


────────

池沢楓(59)

レベル36


称号:転生者


保有スキル:展示


HP:17

MP:22

────────




「というわけで、いきなり草原に放り出されてしまうとはねえ…」


べよん、べよん。


水色の、ぶよぶよした丸い塊が…額縁屋の前に現れた!


「スライム?!武器も何もないけど、どう戦うべきか…俺には戦う術はないぞ…」


うろたえる、額縁屋。


「うん?そうだ、保有スキル?が使えるのでは??《展示?》この場合…展示をするという事なのか、それとも展示されているものを使うという事なのか…、説明書は?」


うばほん!


草原のど真ん中に、市民会館のBブースが現れた!

展示床面積340m²、可動壁による分割利用や照明演出が可能となっている人気のブースだ!!

今展示されているのは…新進気鋭の現代イラストレーターの自主企画作品の模様!!


スライムはめっちゃごつい額縁に入れてあるかっこいいイラストに魅入っている!!


ナニコレ、まるで生きてるみたい!!

いいなあドラゴンは…こんなにカッコよく描いてもらえて!!


「スライムさんのイラスト、こちらにありますよ!癒し系ですねえ、見ていてホッコリします、安心感があるというか…」


ショボいプラスチックの額縁に入ったほのぼのテイストのイラストを見て、スライムはがっかりした!

僕だって…臨場感あふれる捕食シーンには自信があるのにー!!!


なんだか居た堪れなくなったスライムは、全てをまる飲みしてなかったことにした!

やけにしょっぱい味がしたのは、きっと年期が入った古い額縁のせいに違いない…。




「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」


額縁屋は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口前に立っていた。

コンビニの入り口のところで立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。


額縁屋はコンビニでメガネレンズクリーナーシートと制汗スプレーを買って家路についた。


家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。


「うわ、もうちょっと早く通りかかってたら…あの額縁が売れる日に立ち会えなくなってたよ、怖いなあ…」


額縁屋は、101歳まで店の営業を続けていたのですが、結局380万の額縁を販売することはできなかったとのことです。

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