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うちの子が一番!

横沢佐紀は、ごく普通のムウちゃんのママである。


毎日ムウちゃんのフワフワの毛をくしでとかし、毎日ムウちゃんを抱っこして30分の散歩に出かける、齢63のムウちゃんのママである。


今日も今日とて、近所の公園のちびっ子広場で犬友と井戸端会議を楽しんだあと、行きつけのコンビニでノンアルコールポケットウェットシートとミネラルウォーターを買って家路についていた―――のだが。



キイィーイ!!キイイ――――イイイイイ!!!


ドガ――――――――――――ん!!


ぐわしゃぁああ!!


ぶちゅ。




真っ白な空間。

横沢佐紀の魂と…、女神が対面している。


「横沢佐紀さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」

「はあ」


「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください」


────────

横沢佐紀(63)

レベル17


称号:転生者


保有スキル:うちの子が一番!


HP:18

MP:12

────────




「というわけで、いきなり草原に放り出すの?!ちょっと、ムウちゃんのご飯は?!」


べよん、べよん。


水色の、ぶよぶよした丸い塊が…ムウちゃんのママの前に現れた!


「スライム!ヤダっ!!武器も何も…ない!ウソっ!!」


うろたえる、ムウちゃんのママ。


「あっ!!えっと、保有スキルあるんだった!!《うちの子が一番!》そんな当たり前のことが?!」


うばほん!


ムウちゃんが召喚されてきた!!

対スライム戦を意識してか、サイズ感がバグっている!!


スライムは目の前に現れたオシャンでキュートなもふもふにメロメロになった!!

スライムは魅了されていて動けない!!


「ムウちゃん!!ママのこと助けに来てくれたの?ありがとー!!」


ムウちゃんはいつものようにママの顔をぺろぺろした!


ぺろぺろ、べろべろ、べろんべろん!!


「ちょっ…むうちゃ…、うっぷ‥‥」


べぼぐじょりぬっちょむちゅっ!!!


初めは舌先でちょろちょろ舐めていたムウちゃんは、つい勢い付いてしまいいつもの調子でフルマックスでムウちゃんのママをなめ倒した!

濃厚なヨダレがムウちゃんのママの顔を覆う!!


ムウちゃんのママは意識を失った!


だがしかし、ムウちゃんはなめることをやめない!

やがてムウちゃんのママの顔の皮は破れ始めたが、ムウちゃんはなめることをやめない!


なめるものが無くなってしまったムウちゃんはあたりをさまよい始めた。

ブラッシングをしてもらえなくなったムウちゃんはあっと言う間にゴワゴワの汚い見た目になり、魅了が切れたスライムがまる飲みした。




「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」


ムウちゃんのママは時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。

コンビニの入り口のところで立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。


ムウちゃんのママはコンビニでノンアルコールポケットウェットシートとミネラルウォーターを買って家路についた。


家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。


「ヤダ、コワい!!もうちょっと早く通りかかってたらムウちゃんのお誕生日フォト撮れなくなってたかも!!」


ムウちゃんのママは、日課の散歩に出かけた時に段差で躓いて骨折してしまってから外に出る習慣が無くなり、インドアで犬友と交流を続けていたもののパソコンがいきなり壊れてしまい、自力で直そうと奮闘した結果大事なデータをすべて失って盛大に落ち込んだりもしましたが、ムウちゃんが寄り添ってくれていたおかげで毎日笑顔になれるのよと長いこと自慢したのち、入浴中に不慮の事故で意識を失い73歳でこの世を去ったそうです。


息子に引き取られたムウちゃんは、22歳まで生きてテレビの取材を受けたとのことです。

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