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ピックの神

山本健太郎は、ごく普通のたこ焼き屋である。


毎日朝10時に店のシャッターを開け、毎日まん丸のたこ焼きを作る、齢32のたこ焼き屋である。


今日も今日とて、駅前のマルシェに出店している妻の元に追加分のたこ焼きパックを30個届けたあと、行きつけのコンビニでコッペパンと牛乳を買って家路についていた―――のだが。



キィ――――!!キ――――イイイイイイイ!!!


ドガ――――――――――――ん!!


ぐわしゃぁああ!!


ぶちゅ。




真っ白な空間。

山本健太郎の魂と…、女神が対面している。


「山本健太郎さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」

「はあ」


「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください」


────────

山本健太郎(32)

レベル15


称号:転生者


保有スキル:ピックの神


HP:67

MP:13

────────




「というわけで、いきなり草原…、ヤベーな…」


べよん、べよん。


水色の、ぶよぶよした丸い塊が…たこ焼き屋の前に現れた!


「スライムじゃん!!これは…ピンチなのか?武器も何もないからなあ、ここは友好的に一つ…」


ボチボチうろたえる、たこ焼き屋。


「そうだ、保有スキルをうまく使えば…《ピックの神?》ここで…たこ焼きを、焼けと…?」


うばほん!


たこ焼き屋の前に、24で独立して以来愛用し続けているゴテゴテのたこ焼き台&ガムテープで補修してある調理棚&取っ手の取れた冷蔵庫が現れた!!


「材料もある、火力も十分…よっしゃ!!異世界で自慢のたこ焼き、焼いたらぁっ!!!」


スライムは自慢のたこ焼きというパワーワードにwktkが止まらない!


たこ焼き屋は華麗な手さばきでたこ焼きを焼き始めた!!

草原に良いニオイが漂い始めた!!

モンスターたちが美味そうなニオイに釣られてやってきたぞ!!


「へい!!お待ちっ!!」


スライムは熱々のたこ焼きを頬張った!!

…熱っ!!ウマッ!!

ナニコレ、ちょーうまい!!

もっと欲しい!!


「あ、皆さん待ってるんで!!一番後ろに並んでくださいッス!!」


スライムは長い列の一番後ろに並んだ!

一時間くらい並んで、ようやく自分の番だと思った、その時。


「すんません、もうタコが無くなっちゃって…せっかく並んでもらったんですけど…、このあたりに新鮮なタコって売ってないですかね?」


話を聞いていた半魚人が、海でキラーオクトパスを釣り上げて持ち込んでくれた!


「って、ちょ…でかすぎねえ…?!」


自分よりでかいタコを前に、出刃包丁で果敢に挑む、たこ焼き屋。

だがしかし、活きのいい異世界のタコは108本の足でたこ焼き屋を捕らえ、秒でまる飲みした。


たこ焼きを作ってくれる人がいなくなったので、モンスターたちは青のりや鰹節、マヨネーズをつけてタコの踊り食いを楽しんだ。




「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」


たこ焼き屋は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口前に立っていた。

コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。


たこ焼き屋はコンビニでコッペパンと牛乳を買って家路についた。


家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。


「うわっ、もうちょっと早く通りかかってたらいつもの三倍仕入れてある材料がパアになるとこだったぜ…」


たこ焼き屋は、少々雑な性格が災いして害虫および害獣の被害に悩まされることが多いながらも店舗の人気を確保し続ける事に成功し、汚さも美味さも日本一という誇っていいのか恥じたらいいのかわからないような称号を喜びながら毎日自慢のたこ焼きを焼き続け、いつものように生きたタコを二槽式洗濯機に放り込んでゴウンゴウンやっていた時に意識を失い、生臭い両手のまま救急車に運ばれて行きましたが目覚めることはなく、87歳の生涯を閉じたという事です。






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