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復讐

道重エミは、ごく普通の復讐者である。


毎日最愛の兄の命を奪うきっかけを作った誰かを呪い、毎日いつか恨みを晴らすことを誓う、齢26の復讐者である。


今日も今日とて、探偵との会談を終え、行きつけのコンビニで兄が好きだった漫画雑誌と兄と一緒に食べたバウムクーヘンを買って家路についていた―――のだが。



キイーィ!!キ――――イイイイイイイ!!!


ドガ――――――――――――ん!!


ぐわしゃぁああ!!


ぶちゅ。




真っ白な空間。

道重エミの魂と…、女神が対面している。


「道重エミさん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」

「……。」


「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」


────────

道重エミ(26)

レベル81


称号:転生者


保有スキル:復讐


HP:2

MP:102

────────




「いきなり、草原…か」


べよん、べよん。


水色の、ぶよぶよした丸い塊が…復讐者の前に現れた!


「スライム…」


うろたえない、復讐者。


「…あのね、私、復讐しなくちゃいけないの」


スライムはうろたえている。

なんかこの人、シリアスすぎて…怖い!


「こんなところにいちゃ、いけないんだ……」


復讐者は、スライムを抱きしめた。


じゅ、じゅわあああ!!!

スライムの体表の猛毒が、復讐者を溶かし始めた!


「……こんな痛み、お兄ちゃんに比べたら。……。」


スライムは、無言で震えている復讐者をまる飲みした。


なぜか胃の奥がズーンと重苦しくなって、しばらく食欲が湧かなくなったが…、世界樹の新芽を食べたら元に戻ったらしい。




「なんか…夢で、お兄ちゃんを…、ううん、気のせいだよね」


復讐者は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口前に立っていた。

コンビニの入り口前で立ち止まる時に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。


復讐者はコンビニで兄が好きだった漫画雑誌と兄と一緒に食べたバウムクーヘンを買って家路についた。


家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。


「もうちょっと早く通りかかってたら、恨みが晴らせなくなってたかも、なんてね…」


復讐者は、地道な努力と聞き込み&多数の協力者のおかげで長年追い求めていた人物を探し出すことに成功し、己の心をひた隠しにして復讐の舞台を整えた後長きにわたって恨みを晴らし続けましたが、いつかこの憎しみが消えて許しに変わってしまうのではないかと怯えるようになり、兄の墓前で自問自答を繰り返していたある日復讐すべき人物が他界したことで気が抜け怨む心を失い、平凡な人となって縁があった人と結ばれ穏やかな生活をおくったのち、89歳で迎えに来た兄とともに天に上ったとのことです。




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