人化
真田洋一は、ごく普通の鬼である。
毎日大昔に成敗されそうになった時のことを思い出してムカつき、毎日昔のことを思い出してクサクサするのもダセえよなと前を向く、齢280の鬼である。
今日も今日とて、異世界転生ものアニメを見てずいぶん思想が麿くなったもんだとしみじみしたあと、行きつけのコンビニでイワシの梅鰹煮の缶詰とホロよおっか桜風味を買って家路についていた―――のだが。
キイィイ!!キ――――イイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!
ぐわしゃぁああ!!
ぶちゅ。
真っ白な空間。
真田洋一の魂と…、女神が対面している。
「真田洋一さん、あなたは気の毒ですが鬼生を終えてしまいました。転生してもらいます」
「はあ」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
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真田洋一(280)
レベル126
称号:転生鬼
保有スキル:人化
HP:12269
MP:2203
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「というわけで、いきなり草原に放り出されたぞ。なんか久しぶりだなあ…こういうの」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が…鬼の前に現れた!
「おお、この世界の主生物??スライムかあ…、意思の疎通は図れるのかな。できれば有無を言わさずに襲いかかられることは勘弁してもらいたいもんだけど」
うろたえない、鬼。
「保有スキル…《人化》って…おお、なんだ素に戻ってんじゃん。俺は…この姿でいてもいいという事か…?」
うばほん!!
鬼は、真田洋一に変化した!
めっちゃゴツイ鬼がいるからビビったけど、無害そうな人になって良かった~!
これなら安全に食べられる♡
スライムは貧弱ななりの青年を有無を言わさずいきなりまる飲みした。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
鬼は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口前に立っていた。
コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。
鬼はコンビニでイワシの梅鰹煮の缶詰とホロよおっか桜風味を買って家路についた。
家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「ちょ…!!中に人はさまってんじゃん?!力を使えばまだ助かる…か?…クッソぉ!!間に合えっ…」
鬼は、大昔に成敗されかかった恨みを忘れることは結局できませんでしたが、人として暮らしてゆく中で胸がほんのりと温かくなるような出来事に何度も遭遇し、思い出したい幸せがたくさんある毎日を穏やかに過ごしつつ時折弱い誰かに手を差し伸べ、最後は大きな事故に巻き込まれた一般人たちをいい人も悪い人も残念な人も気の毒な人も無関心な人もやじ馬もすべて助けるために全力を振り絞り、この世からふわりと消えたとのことです。




