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だる~

小田蓮は、ごく普通の不健康である。


毎日夜更かしをし、毎日スナック菓子を食事代わりにする、齢18の不健康である。


今日も今日とて、電気もつけずに夜通しスマホでショート動画を見続け夜明けを迎え、行きつけのコンビニでキャラメルラテとキャラムーチョビッグパックを買って家路についていた―――のだが。



キイ―ッ!!キキイイ!!!


ドガ――――――――――――ん!!


ぐわしゃぁああ!!


ぶちゅ。




真っ白な空間。

小田蓮の魂と…、女神が対面している。


「小田蓮さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」

「はあ」


「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください」


────────

小田蓮(18)

レベル3


称号:転生者


保有スキル:だる~


HP:2

MP:1

────────




「というわけで、いきなり草原…うわ、眩し…」


べよん、べよん。


水色の、ぶよぶよした丸い塊が…くらくらしている不健康の前に現れた!


「スライム…って、武器も何もないんだけど…?戦うの?そんなん無理っしょ…」


ややうろたえる、不健康。


「保有スキル…《だる~》?うん、まさに今、ちょーだるいけど…」


スライムは気怠そうな不健康を見ていたら、なんか身体がだるくなってきた。


「無駄に戦うのもさあ、マジだるいよね…。ここはひとつ、穏やかに平和的にさあ、一緒にグダグダしよ~よ…」


たまにはそういうのもいいかもしんない…。

スライムはしゃがみ込んだ不健康の横で、ぐでーっとした。


気を抜いたスライムは、表面張力がゆるんで…ぺしょぺしょになっていく!


水っぽくなったスライムは、だらけている不健康のところまでがひろがり、じんわり浸透した。


「…ぅん?…って、ちょ!!ぎゃああアアアアアああ!!!」


猛毒が付着した不健康は勢いよく立ち上がり、キレのある動きで全身を激しくシェイクしたのち絶命した。


動かなくなった不健康をぺしょぺしょ状態のまま捕食したスライムは見る見るうちに活力を取り戻し、いつも以上にプルプルして草原の彼方に消えた。





「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」


不健康は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口に立っていた。

コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。


不健康はコンビニでキャラメルラテとキャラムーチョビッグパックを買って家路についた。


家の近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。


「わ〜、ぺっちゃんこだ…、もう少し早く歩いてたらヤバかったね。何事ものんびりが一番だよ…」


不健康は、回復力に優れた若い時代を不摂生と不養生で貫き通したあと、やたら健康志向の女性と縁があって一緒に暮らすようになりましたが、年老いたせいかなかなか効果が現れず常に疲労感に悩まされるようになり、何をするのにも消極的な生活を長く続けながらも108歳まで生きながらえて、長寿の秘訣をしょっちゅう聞かれていたそうです。





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