もっと良い人がいるかも…
長岡春樹は、ごく普通の独身である。
毎日後輩がデスクで愛妻弁当を広げているのをぼんやり眺め、毎日どこかにいい人いないかなとふんわり思う、齢38の独身である。
今日も今日とて、独身仲間のツレから送られてきたマチアプでイイ感じだった女に高い昼飯をおごらされただけで終わってムカつくという長文LINEを流し見したあと、行きつけのコンビニで豚汁カップと助六を買って家路についていた―――のだが。
キイィイ!!キ――――イイイイイイイ!!!
ドガ――――――――――――ん!!
ぐわしゃぁああ!!
ぶちゅ。
真っ白な空間。
長岡春樹の魂と…、女神が対面している。
「長岡春樹さん、あなたは気の毒ですが人生を終えてしまいました。転生してもらいます」
「はあ…」
「あなたにはチートをお一つ差し上げます。ステータスをご確認ください。」
────────
長岡春樹(38)
レベル12
称号:転生者
保有スキル:もっと良い人がいるかも…
HP:39
MP:45
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「というわけで、いきなり草原に放り出されちゃったなあ…」
べよん、べよん。
水色の、ぶよぶよした丸い塊が…独身の前に現れた!
「スライムだ…初めて見た」
あまりうろたえない、独身。
「これって保有スキルで切り抜けるパターン?《もっと良い人がいるかも…》って、誰か出てくるのかな」
うばほん!
同い年の、ちょっと疲れが見えるご婦人が現れた!!
「え…戦ってくれるの?いや、無理じゃないかな。もっと良い人がいるでしょ?」
うばほん!
年上の、ガッツリフルメイクの熟女が現れた!
「強そうだけど…もっとこう、ウーン...他にも良い人がいるよね?」
うばほん!
ひとつ下の、ふくよかすぎるおばちゃんが現れた!
「ないない、つぎお願いします...」
うばほん!
うばほん!
うばほん…
なんかめっちゃ女の子出てきた~!
丸いの騒がしいの派手なの動くの細いの白いの動かないの…みんなカワイイなあ!
スライムは異世界の女子を眺めてうっとりしているぞ!
「みんなしっくりこないなあ、どうしたもんか…」
魅力に溢れるご婦人を前にして、腕を組み組み偉そうなことをほざいた独身に心底ムカついたスライム!
なんだコイツは!
オメーに誰かを選ぶ資格は…ねえ!
独身はスライムに丸飲みされた。
なお、女性陣は無事もとの世界に戻された模様。
「う、うーん???なんか夢でも見ていたような??」
独身は時間を巻き戻されて、コンビニの入り口前に立っていた。
コンビニの入り口で立ち止まる前に、ちょっとだけ時空がゆがんだのだが…、それに気づく様子はない。
独身はコンビニで豚汁カップと助六を買って会社に戻った。
自社ビルの近くの交差点で、車の暴走事故が発生していた。
「すごいな、記念に写真とっとこ…」
独身は、誰かに合わせることをよしとしないスタイルを貫き、自身の男らしさに惚れるような和風美人を求めて積極的に婚活に励んだ結果、三歩下がってついてくる地味な女性と出会いましたが、付き合うほどにイライラが増していき、最終的に女性という生き物すべてに嫌気がさすようになって、なよなよした男に手を出すも返り討ちにあい、そのときの傷が癒えぬまま52歳の時に不注意で事故を起こしてこの世を去ったとのことです。




