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31 先生!チャラ男がいます!




 なんだ?お勉強できるって自慢しに来たのかい?小悪魔系美少年の加藤 凪史さま、我らの部長は流石に一味違います。いや~殺意がみなぎりますな?


 なんて本人に言ってみたいけど、私の冴えている勘は「返り討ちにあうから止めとけ」と止めてくれた。


 「で?俺が上位100名に入らなきゃ都合でも悪いのか?」


 別に一週間休みを取りたいとか、希望してないのだけど。


 家には確かに帰りたいとは思う、家族にも会いたいし。


 以前あった時はファーロウとの会話を邪魔しないために直ぐに立ち去ったが、今度はゆっくりと異世界の女神として苦労している光喜君を労って、ファーロウの腐るほど貯金の溜まっているクレジットカードで豪遊させてあげたいとも考えている。


 でも、全ては上位100名と狭き門だ。


 この学園には何人の生徒がいると思っている?名門校で全国からしたら入れる確立の低い学園だが、千人以上はいるだろう。


 正確な全生徒の数は知らない、携帯を当てている耳の反対に変えて、イスを後ろのヒバリに向けている体制から正しく前に座りなおした。


 『当然じゃないか、副部長の君が成績悪かったら示しがつかないよ、それに僕の別荘に君を招待してあげようと思ってさ』

 「へー…金持ちめ」

 

 別荘だって、セレブですこと。まぁ一週間も時間があるならプチ旅行気分でいくのも悪くない…。


 「だが断る」

 『僕の申し出を即答で断るなんていい度胸をしている』


 即答した私に突っ込みを入れる凪史は、ちょっと音程が低くなった。


 「真心を言うと面倒くさい、勉強への意欲を感じない、勉強したくない、興味が無い、寝ていたい」


 これで私が100名に入るほど、頑張る気が無いと分かってくれただろうか。


 『君の人生終わっているね』


 間違いじゃない、実際女としての人生は終わりました。もうそんなに抵抗かんじてないけどさ。


 「そうゆうことで。次の授業が始まるので、さようなら」

 『ふ~ん、まあいいよ。じゃあね』


 思いのほか、あっさりと凪史から切られた。もっと駄々こねると思っていたので、ちょっと拍子抜け。


 私も自分の通話を切って、制服にしまうとヒバリとハンスがこちらを見ていた。


 「加藤君から?」


 やっぱり気になっていたみたい、ヒバリが窺う声で問うてきた。それに私は笑って手を振って否定をする。


 執行部のことじゃなくて、凪史が私への個人的なお誘いを簡単に説明すると、ハンスは楓に向き合い。うっとりする笑顔で言ってきた。


 「そこは恐らく、私も同じ場所に別荘があるでしょうね。加藤氏の別荘ではなく私の別荘にいらしてください」


 ハンスはもう顔の一部である、王子様スマイルを惜しみなく私に向けて、両手をハンスに握られ迫る。第三者から見たら、でも楓は無心に。


 動くハンスと一緒に、金髪の髪が光りに反射してキラキラしてんな~。としか考えてなかった。


 「僕もあるよ。○○市でしょ?多分この学園で別荘を持っている人は皆そこじゃないかな?あと早く手を離したら?」


 随分と含みのある笑顔で、楓の後ろのヒバリも2人の会話に割り込む。


 ああ、そこなら別荘地として有名ね。訪れた経験はないけどテレビでよく別荘ならってここって、放送されている場所なのは私でも知っていた。


 「そうかい、お金持ちはいいなぁ~で、ハンス手を離して」

 「貴方からよい返事をいただくまで離しません」


 極上スマイルに、更に私に顔を近づけるハンス。手を握ったまま一切視線を逸らさない彼に、私はなんとなく顔を背けちゃう。


 「(顔が近い…)……でもさ、その為には勉強しなきゃならないだろう?」


 当然、別荘にいくには上位100名。その為にはすべての教科において平均的に高得点を取らないと、まず無理。だから私には。


 「無理」


 私は自分で演じられる最高の笑顔で答えてやった。


 くっと顔を背けたヒバリとハンス。


 あれ、どうした?


 男としてのプライドか、ヒバリとハンスは近くで見た楓の笑顔を赤くして、それ以上直視できなかった。


 そういうジャンルには、たいへん鋭い勘は働かない楓マジックを披露する楓ちゃん。


 首を傾げて不思議がる楓を他所に、次の授業を担当する教師が教室にやってきた。楓のやや得意な歴史の授業だ、理数系は意外にもファーロウのお世話を余り受けずにこの学園のレベルについていけている。


 ファーロウの教えが的確で、分かりやすいのもあるが。


 社会教師は頭がいいらしいが、そこら辺にいるおっさんなので容姿的に余り人気はない。教え方は悪くないのだけど、ファーロウには劣る。


 別に私は嫌いじゃないが、時々見られている気がするのは自意識過剰か?まだ珍しいのか、転校生が。そいや江湖ちゃんも見ている気がする。新しいもの好き?


 因みに、教師が楓を見つめている時に楓の横と後ろに座るナイト2人の顔を見ると、石になりそうな恐怖を感じるのでご注意を。


 私はハンスから手を離してもらい、机に入っている教科書と参考書とノートを取り出す。


 ノートを書くためのシャーペンを布製のシャーペン入れから出すと、一度だけ指で回転させてシャーペンを握りノートを開く。これ実は最近大田からやり方教わった。


***


 それから数十分の休みを間に入れて、お腹が減った頃には12時過ぎ。タイミングよくお昼休みの鐘が全校舎に鳴り響く。


 よっしゃ、午前の授業はすべて終了。今日の授業は苦手な教化じゃないから時間が遅く感じなかった。


 なんでだろう?嫌いな授業ほど一分一秒がスローに感じるのは。


 背伸びを軽くしてから楓は、自分の席から立ち上がる。


 当然食堂へ行ってお昼を食べる為だ、席は多くあるから混むことはないけど。


 いつも通り私と一緒に行くヒバリとハンス、そして最近メンバーに加わった江湖ちゃん。大田は江湖ちゃんと一緒に食事を一瞬考えた様子だが、用があるとかで1人で教室から出て行った。


 なんとな~く皆仮先生の所へいくのだと思う。確証はさっぱりない、しかし大田と皆仮先生の繋がりなんて私には関係ありません。家政婦は見ちゃったみたく、他人の事情に首をつっこまない。


 嬉しそうに私に話しかけてくる江湖ちゃんに、相槌を返しつつ私たちも教室を出る。


 さて、一時限目はふざけた挨拶をさせられたお返しも含め、直樹が食堂にいたら緊張させられた復讐を胸に掲げて、食堂に向かう。


 いなかったら別にそれ以上探さない、そこまで執着してないよ。でもあのニアニアした顔を思い出すだけで怒りのゲージが溜まっていくのを感じる。


 なんだかんだで、あの2人に手の上で見事に踊らされて、嵌められている実態の自分が許せない。


 食堂の…毎回食堂って言っているけど、食堂の名を借りた高級レストランに入ると先にいた生徒たちがざわついているのに気がつく。


 遠巻きに誰かの様子を窺っている感じがする、私は咄嗟にめったに此処にこない人物が食堂に訪れているのかと、足を進めてみた。


 注目されている人物は1人でテーブルに座っている様、私は特にその人物と話がしたいとかじゃなかった。


 もしかして生徒会として人気のある直樹が珍しく、食堂に顔を出しているのかと思ったのだけれど違った。


 ここに直樹がいたら、それいったれ!と復讐を完了させるが、人の頭の上から覗き見た人は知らない人だった。


 ふ~んと呟きながら、ちょっと人が集まっている場所から離れようとするが、前にいた男子生徒全員が私に場所を明け渡すように左右に避けた。


 モーセの十戒?人の波が左右に避けて、私は一直線に注目されている生徒に道が出来てしまった。


 ここで知らないふりをして去る、雰囲気じゃないね。まったく。


 冷静に考えて、学園内で特別な権利を持っている執行部の副部長が覗きに来たら普通の思考回路を持っている人なら譲るよ、楓。


 とは楓の後ろ姿を見つめていた、ヒバリには伝えられなかった。軽く息を吐いて楓の後を追う他のメンバー。


 楓は仕方なく、流れ的に注目されている人物と接触しなければいけない展開だ。軽く挨拶一つでもすればいい、全校生徒の前でマイクを持って執行部の副部長として挨拶したんだ、相手は私の顔を知ってくれていると思う。


 近づくと相手がはっきり見えた、第一印象は……チャラ男?


 ちょっと肌寒い時もあるこの季節に、上着はなしでシャツはボタン全開、金のネックレスを二重に下げている。肌は焼いてない、そこは流石にこの学園ではヤバイだろうね。


 顔はとてもいい、タイプとしてはちょっときつめな目が野生的な魅力がある、でも大田とは違い軽い雰囲気を前面に出していた。


 髪は染めた茶色に、特別長くないであろう前髪をヘアーピンを何本も使いオールバックにしている。それがますます軽い印象を私に与えた。


 出来れば関わりたくない、ちょっと私の苦手なタイプ。チャラ男はそんなに好きじゃない、う~んおばちゃんの視線で悪いが何事も中途半端なことしてそうで。

 

 彼らの内面を知らないから、中途半端は言い過ぎ?偏見かな…、顔はいいのに何でわざとだらしない格好するんだろう?


 だらしなく椅子に座って携帯をいじっているチャラ男がふと私を見た、目だけを動かして。


 ちょっと見詰め合う私たち、私はどうやって話しかけようとかと考える。用事は特にないし。


 釣り目を大きく目を開き、満面の笑顔になるチャラ男クンに私は少し引く。これは近所で飼われているゴールデンレトリバー(大型犬)の、マック君が嬉しそうに遊び相手をみつけて笑顔全開で私に突進してくる時の空気と同じだ。


 その後マック君に突進されるわ、涎たらすわ、舐め回されるわで大変だけどかわいいので許す。尻尾ブンブンふってさ、無垢な眼差しに私はいつも折れてしまい遊ぶ。

 

 が、この男にそんなものは望んでない上に、構われたくないのだが去るにはもう遅すぎた。

 

 すばやく携帯をポケットに入れると、チャラ男は立ち上がり。

 

 私の前にズッと顔を近づけた、身長は私と同じくらい。すなわち長身だ。


 随分とお顔が近くいらっしゃる、チャラ男はわざとしたから覗き込むように私の顔を見る。


 「アンタ!あれでしょ?朝めっちゃCOOLに舞台に立っちゃった系の人ぉぉ~」


 両手を使って二本の人差し指を同時に楓に指差した。


 若干その動作に楓はイラっとくる。深い意味はないがわざとらしい動作が…。


 (語尾を延ばすな!初対面の人に指差すな!顔が近いちゅーねん!!)


 楓は心で罵倒して、一歩後ろへ下がる。まるで其れを許さないかのように、更に顔を近づけてきたチャラ男に楓は心で舌打ちをした。


 「すいません、どなたでしょうか?」


 一応礼儀をもって私は聞いておこう、もしかして相手をすると面倒な人物かもしれないし。ネクタイピンを見ると宝石は二年の私とは違う、三年生がつけるダイヤがついたネクタイピンだ。


 転校初日に説明したがあえてもう一度、一年が真珠のついたネクタイピンで二年がエメラルド、ダイヤモンドは三年生。


 よってチャラ男は上級生である三年つー事だ。


 「あ~れ?俺のこと知らないのぅ?チョー悲しい!あっそうだったね」


 ガバッと私の肩を抱いて、顔を私の肩に乗せた。


 随分…馴れ馴れしいな、このチャラ男は。


 「アンタは外から来た人だったねぇー、それって自由人?」


 知るか!つか自由人って何だ?チャラ男の思考回路の繋がりがさっぱり私には理解できない。自由人って野生人に聞こえるから止めて欲しい。


 無礼な態度に、ちょっとムカッときた私は強めにチャラ男の腕をのけて、距離をとる。


 今度は顔を近づかせないために先ほどよりも離れた。


 チャラ男は逃げた楓をキョトンとして見て、また嬉しそうに笑っていってきた。


 「へ~媚びないね~やっぱ自由人だからか?俺、実はぁ、生徒会役員の1人なわけ」


 あっそう、だから食堂にいた生徒がアンタを見て注目していたのか、きっと生徒会のメンバーって事でプレミアついているだろう。

 

 悔しいがコイツ自身に人気があるなんて思いたくない。個人的意見ですみませんが!


 さっき私に指した人差し指の二本を、今度は自分に向けて。


 「生徒会役員で会計やってますぅ、瀬尾せお 悠斗ゆうとクンです。よ・ろ・し・く!」


 わざとスローな口調で私に自己紹介をしてくる瀬尾に、自分も同じく自己紹介をしようと口を開きかけたが。


 「ノンノンノン!かえチャンの事は俺と同じくらい人気者で有名だからしってるよん!」


 掌を目の前でヒラヒラ動かし、オーバーリアクションで私を止める。


 あっそう、ではさようならをしましょうね、明日までにはアンタの名前は消去されているだろうけど、私の頭の消しゴムが容赦なく消す。


 でも初対面の人間にはきちんとした態度でいないと。


 「そうですか、今後ともよろしく。では俺たちはあっちの席で食事を取るので、お邪魔します」


 そう丁寧な態度を崩さず、私は返事を待たずに後ろを振り返った。瀬尾は私の拒絶を感じたのだろうか、つまんなそうな顔をした後。


 何か思いついたのか、ふざけた笑みで笑い。


 さり行く私の背中に。


 「アンタ馬鹿ってなんだって聞いたけどさぁ、それって本当なわけ?」


 その一言に私の足がピクリと止まる。 


 上等じゃないか、殺すぞチャラ男…。


 胸の奥からこみ上げて来る何かを押さえて、私はにこやかな顔で振り返った。瀬尾も満面な笑みを乗せている。


 そして


 「ねえ、本当に馬鹿なの?」


 暴言リターン。


 追尾攻撃の手を緩めない瀬尾に、私は無言で拳を握り締め、チャラ男の顔面めがけて攻撃を仕掛けた。


 「うおっ!?」

 

 私のストレートパンチを寸前でチャラ男は避けた。その機敏さにちょっと見直す楓。


 壁の向こうで待っている姿の見えない不意打ちならともかく、完全に姿が見られている状態で攻撃すると動作がバレるが、この至近距離で避けるとはよっぽど反射神経がよくないと普通は喰らう。


 直感で、楓はチャラ男がヒバリや大田みたいに何かをやっている、もしくはやっていたなと感じた。


 「噂どおり、危険なキャッツだな。アンタ」

 「キャッツ…猫って事?」


 構ってくれるのが嬉しいのだろうか、攻撃をされても上機嫌で話を続けてくる瀬尾に、やっぱり近所のゴールデンレトリバーを重ねてしまう。

 

 「そっ、生徒会長の飼っていた黒猫に似ているから、会長アンタのいない所ではキャッツって呼んでいるよぉ」


 直樹、アンタ随分と恥ずかしい呼び方してやがんな。また顎からの一撃を食らわしてやるわ。

 

 その前にこのチャラ男を何とかしないと、周囲をそっと見ると食堂に集まっている生徒たちの注目の的だ。


 ちょっと!生徒会役員メンバーに、ここで馬鹿呼ばわりされたら、どんな噂たてられるか分からじゃない!?


 秀才のパーフェイクと超人と思われなくてもいいから、赤点しか取れない馬鹿と噂を流されるのは嫌!!


はい、ごきげんよう長毛種の猫です。いきなりですがネームの由来は自分が飼っていた猫が長毛種だったからです。

本当に為にならないあとがきですね(笑)

もうお約束道をまっしぐらですね、瀬尾は結構動かしにくいキャラです。

頭の中であまり動いてくれないので苦労しました。

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