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17 転校生は可愛い女の子

 



 ニヤニヤとした竹丘の笑みに、楓は意味も無く体が引きそうになる。 


 「何の御用で?」

 

 何気なく喋ったつもりでちょっと声が上ずった。かっこ悪い。


 「どうして~そんなに警戒しているのかな~?」


 私の質問スルー、そして分かった上で聞いてくるこの態度。最近私の問いにちゃんと答えてくれた人は何人いるんだろ。

 

 まずは竹丘は自分を振り返ってみるといいですよ。こんな時でも突っ込み精神を忘れない私は凄い、別の意味で。


 「竹丘寮長、どうしましたか?」


 私がちょっと緊張しているのを知ってか知らずか、ヒバリが私の代わりに竹丘に向き合う。


 「別に~ちょっと楓君に言いときたかった事があるんだよ~」

 「…なんですか?」


 こいつは妙に的確な言葉を投げる、私が女だってこともファーロウがただの猫ではないことも知っている口ぶり、そのクセ私に何かをしようとする素振りも無い。


 気持ち悪い…私の直感はコイツの警戒を忠告していた。別に嫌いとかじゃない、こんなんでも個性で許せる程度だし純粋に絡んでくるだけなら面倒な寮長ですむ。


 理解できない、この男の存在が分からないが恐怖になっている。


 それだけではない気がするのだが、今は出来るだけ竹丘に関わりたくなかった。


 「ちょっとね~君は執行部だっけ?加藤理事長の息子さんが立ち上げた特別風紀とかなんとかの~」


 気のせいか少し竹丘の眼の色が変わった気がする。


 「分かりません、今のところは入る気は無いです」

 「あはっ~それは良かった」


 ちゃらけた様子で嬉しそうに笑う竹丘に楓は少し眉をひそめた。


 楓の気分を害しているのに気づいたハンスは、ニッコリいつものプリンススマイルを浮かべ。


 「ご用件はそれだけでしょうか?なら行きましょう楓さん、では失礼します寮長」


 意見を聞くフリをして有無を言わせぬ勢いで楓の手を取ると、エレベーターのスイッチを押してドアを開かせたら手を引いて中に入った。


 ヒバリもハンスの後を追ってエレベーターに入り込む。


 「あはは~これまたぁ~強引だね」


 顔だけ振り返ってヤツの唇は無音で動く。


 

 (余計な真似をするな)


 ……か、見ていた私にはちゃんと伝わった。

 

***


 日曜日が終われば月曜日がやってくる。


 祝日でも振り替え休日でもないので、通常通り朝起きて学校へ行く準備をしなければならない。携帯の目覚ましを楓がのぞ~とした動作で止めると大きな欠伸と背伸びをする。


 「ふぁ~あ」


 枕もとのファーロウも猫の姿で猫の背伸びをして、チャーミングな声で挨拶をした。


 「お早うございます。今日もいい天気ですね」

 「そうだね。どうでもいいけど月曜日の朝はいつもより朝がつらい気がするわー…」


 でも学校には行かねばならぬ、ダレる体に鞭(大げさな)を打って起き上がると学校へ行く仕度を始めた。


 ルームメイトのヒバリは部活でクラスメイトのハンスは、静かな教室で読書をするのが楽しみの一つらしい。つまり私は一人で学校の校舎という御殿に向かう。


 実のところヒバリとハンス以外は一年の凪史…いや凪史を友達とカウントしていいのか?後輩の凪史も含めて三人しか私に気軽に話を掛けてくれる人がいないこの現実。


 私としては別に孤高の転校生になりたいわけじゃないんだけどな~。


 などと思っているのは楓一人だけであった、楓の容姿が余りにも現実離れしていて近寄りがたいのも原因の一つ。そしてヒバリとハンスが両サイドを固めていては気軽に声など掛けられるはずもなかった。


 即、デット ヘヴンズゲード 1名様ごあんなーい


 であろう予測が簡単にできる。

 

  そんなつわものはそうそう出現せず、楓は遠巻きの観賞用になっている。


 そうそう、不良の大田おおた たくとは友達になろうとも学校へは余り来ていない様子。楓自身も登校初日の出来事を思い出さないと彼を思い出さない程度だったが。


 彼の観察をいつかやってみたい。ものすごく最高に暇でどうしょうもない時に。


 教室につけば私は自分の、突然転校したという机と椅子に座った。


 「おはようございます、楓さん」


 笑顔が眩しいハンスが優しく朝の挨拶を楓に交わす。


 「ああ、おはよう何をざわついているんだ?」


 そうなのだ、今日は眉を顰めるほどクラスが浮き足立つ。いつも適度に騒がしい教室がいつもよりテンションが上がって。


 「ちょっとうるさいかな…」


 楓がため息をついて呟くほどだ。


 「そうですね、実は今日になってもう一人の転入生がやってくるんだそうです」

 「転入生?わた…じゃなく俺以外にも転校生いたの?」


 頷くハンスに楓は「へー」と返事をした。


 「本当は楓さんと一緒に転入する予定だったのですが、一週間ほど転入が遅れたそうです」

 「フーン、可哀想に一週間前の俺の状態になるだろうな」


 呟く楓に、ハンスは無言で笑った。 


 (貴方の場合は転校生だけではないのですが)


 あえて教えてくれるほどハンスはいい人ではない。哀れなほど自分の容姿について無頓着さはハンスにとって今は都合がよかった。


 必要なら危機感というものをじっくり教えてあげよう…だがそれは今ではない。


 騒がしいクラスをよそに楓とハンスが、昨日の外出を笑いあいながら話しているとヒバリ登場。


 楓の席の後ろに座り、話の続きは皆仮先生が来るまで続いた。


 皆仮先生が到着した瞬間、楓が転入して初めて教室についた時と同じ皆が黙り、シーンと皆仮の言葉を待つ。


 案の定の反応に笑うしかない皆仮先生は、手短に転入生を呼んだ。


 このへんは私の転校初日と変わらないと親近感が沸く。


 ガラリとスライドドアが開き、小柄な少年が教卓まで歩む。


 少年は少年だったが。


 つか…。


 かわいいいいいいいいぃぃぃぃ!!!!!

 

 現在のクラスの皆の思いだろう、此処に今クラスの野郎どもの心は一つとなった(楓も含め)


 除外はヒバリとハンス。


 彼らは可愛いと思うのはヒバリは猫くらい、ハンスにいたっては楓だけだ。見かけだけでは小柄の少年は対象外になった。


 それにハンスはもう残念な病気にかかっているので……仕方ない。治療は諦めたほうがいい。


 小柄の少年は高校生よりも中学生といった方がシックリくるほど小柄で美少年顔、背も楓の胸辺りに頭がくるほど。


 楓は素直にちびっ子可愛いとほのぼのな気持ちになっているが、ヒバリとハンスを除きそれ以外の飢えた生徒は鼻息が荒くなる。


 単純な反応に、楓は周囲に呆れ。これが名門学園かよ…と呟いた。


 (まって…もしかして)


 妙に既視感を少年に感じる、どこかで…。


 ああああ!思い出した!!なんという

 

 お・や・く・そ・く!!!


 ドンと当たって次の日であう~これぞ王道。あの子だ。


 昨日で肩が当たったお嬢様系の美少女、可愛い顔はすでに楓の中では一致していた。間違いはないでも何でまた男しかいない学園に?


 そしてロングヘアーはばっさり切られて今は男の子と違和感のない短髪になっている。


 坊ちゃん刈りより髪が長い感じに短く整えられている。


 街で偶然であった転校生が女装していたというパターンは違うと思う、かといってこの場所で転校生のズボンを下ろすわけにもいかぬ。


 「五十嵐いがらし江湖こうこですわ。末永くよろしくお願いいたします」


 おもいぃきりソプラノの声で紹介されてもなぁ、でもなんとか声域は誤魔化せるけど。


 体も細いから制服をきれば、失礼ながら年頃の女の子にしては発育が見当たらない体系で、華奢な男の子で通せば何とかギリギリセーフをあげよう。


 しかしながらお嬢言葉は止めてくれ。完全アウト言い直すならパーフェクト駄目。


 「わたくしの至らないところは皆さんの知恵を貸して頂きたいですわ」


 可愛い獲物…ではなく新しいアイドル予感にクラスの皆が騒ぎ立つ、楓の時は違ったテンションだ。


 五十嵐お嬢様…貴女は男装する気があるのでしょうか?ちょっと違うけど男装の先輩として指導してやろうか。


 まあ、私が女だったなんて証拠も過去もなく虚しいだけなんだけどね。


 「はいはい、じゃあ空いている席に座って」


 精一杯背伸びをして男らしく振舞っているであろう五十嵐の横で、皆仮先生が空席を探して指差した。


 「あの席空いているね?座って」

 「はい」


 短く五十嵐が返事をしたら楓から少しばかり前の席に座る。といっても楓は左端の列で彼女は真ん中の列だ。


 「では、ホームルー…」

 

 ガラ

 

 皆仮先生が出席をとろうとした瞬間後ろの教室のドアが開く。


 ナンチャって不良の太田 詫だった。いつもダルいファッションに赤系の髪。どこの社長だといって欲しい時間帯にやってきては自分の席に挨拶もなしに向かう。


 「こら!もっと早くこないか!」


 皆仮先生は一応怒るが大田 詫には右に左。それより自分の席に座り空席であったはずの席に誰かが座っている。


 存在自体が目障りだといわんばかりに、一睨みでもしてやろうと隣を見るが、相手は見たこともない美少年。


 可愛い子はこうであるべきだと賞賛されるキング・オブ・ベストベターな美少年が隣にいて挨拶代わりの笑みを溢した。


 大田 詫は彼女と目が合った瞬間、顔を真っ赤にして折角座った席を乱暴に立ち上がると酒に酔った酔っ払いのように教室からでていった。


 「こらー大田!席に戻らないか!!」


 皆仮先生の言葉など一切入ってない。


 こっそり楓は面白そうなことになりそうだと、男装している彼女へ伝わらない笑みを浮かべた。


 そして本当に女の子なら余計なお世話だとは思うけどちょっと気に掛けておかないといけないという保護者みたいな感情が湧き出たのだった。

ちょこちょこ書いていますがスピードがついて行かないです。もっと早く書ける文才が欲しいです。

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