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15 執行部ってなんですか?



 「まあ、凪史の親族を知れて嬉しいが、勘弁してくれ」


 とにかく私はこの生徒会長の直樹クンの膝から脱出できたらそれでいい。


 「ぼくが許すから好きにしていいよ」

 「オッケ!」


 凪史が何とかしてくれるなら私は遠慮なく後ろから拘束するアホじゃなく、直樹の顎を下から殴った。もちろん手加減などしない。


 顎のダメージは脳に響く、流石に直樹も「うげぇ」とか言って私から手が離れた瞬間に脱出。


 「ひでー!」


 顎を押さえ私を涙目で睨むが、拉致監禁した上に軽い痴漢行為をしたにしては優しいほうだと楓は自負している。


 「はいはい、すみませんね。凪史くんの許しがでたので恨むなら凪史にしてくれ」


 腰に手を置き。ふん、と鼻をならす凪史。普段からこんな感じにやり取りしているのだろう。直樹も痛みさえ引いたらもう何とも思っていない感じだった。


 「君の勝手な行動はほとほと呆れる、自分が生徒会長なら人を無断で連れ去っていいと思っているわけ?」


 凪史のターン。


 「俺が気に入ったものは俺のもの。俺の辞書にはそう書いてあるんだよ」


 凪史の攻撃は効かない。


 ふんぞり返る直樹。どうでもいいから帰りたい楓と睨む合う二人をほって書類を片付け始めた副会長の怜。


 「そんなことだから増加する学園の問題の数が多くなっていくんだよ、ぼくは君を認めないからね」


 肩をすくめて凪史をみているだけの直樹に、イライラとしているのだろう。楓の手を取ると。


 「もう、行くよ」


 私の手を引いて、生徒会室から出た。ドアが閉まる瞬間私にウィンクをして手を振った男が見えたが、この男に多分また絡まれるだろうと特化した私の直感は伝えていた。


***

 

 「何をやっているの?どうしてヤツと一緒にいたわけ?」


 浮気現場を押さえた妻よろしく私を質問攻めにしてきた凪史に押された。


 「凪史に言われたとおり行きましたが、あのモンスターに拉致されたんだよ」


 プンプン怒る凪史が私の手を引っ張ったまま、第6校舎66資料室へついた。


 生徒会室は第6校舎の最上階、そして資料室は下の階にありこの第6校舎は生徒のために明け渡されているクラブハウスのようなもので、周りには余り生徒が見受けられない。


 プレートには資料室の文字がついている、そこのドアを凪史が持っていたIDカードをスロットに通せばカチャリと鍵の開く音がした。


 スライド式の扉が自動で右に開く、楓が通っていた高校とやはり違うのを見せ付けてくれる。


 資料室は使われていないのかシートがイスやテーブルにしている、一応全部屋を清掃しているので使用していなくても部屋は綺麗だ。もちろん誰かが使って掃除に入られるのを嫌ならば借りている人の一言があれば機密は守られるらしい。


 部屋の中はガランとして、革で出来たイスと長いテーブルがあった。部屋は窓から明るい光が差し込んでいて陰気な雰囲気は感じない。


 資料室とありながら資料の一つもなく、前に使っていた人が撤去したあと最低限の備品のみ残し資料室の名前だけが残ったのだろう。


 広さも十分にあり10人くらい入っても息詰まる空間ではなかった。


 「ところで、こんなところに俺を呼んだ理由をそろそろ教えてくれないか?」


 凪史は一番奥、テーブルの配置からすると上座のイスのシートを外して座る。


 「今日からぼくが管理する執行部をつくる、そして君はぼくの執行部のメンバーさ」


 はい?何を仰りますか?こんのリトルキングは。


 「なんで俺がメンバーに組み込まれているわけでしょか?」

 「ぼくが気に入ったから、さっきのアホの直樹に一撃いれた楓にぼくの眼には狂いがなかったと確信したよ」


 うんうん、と一人納得する凪史に楓は何とも言えない表情で見つめる。


 「部活活動に入るつもりは俺にはないぞ?他をあたってくれないか?」

 「拒否は認めないね。ぼくにそんな口を聞ける、だから君を選んだんだよ」


 ニッコリ笑う凪史に楓の頭に大きな?マークが浮かんだ。


 「生徒の大半はぼくを学園の理事長の息子ってだけで媚を売る、そんなのぼくのメンバーにいらない。それにこの執行部は部活動ではなく生徒会に代り独立して学園の風紀を守るのを活動目的にするんだ」


 漫画か夢を見すぎじゃないの?なんて楓は思ったが口には出さない。そして正直な話、面倒よね。


 「生徒会があるなら風紀委員もいるでしょ?なんで俺たちがわざわざ風紀を正さないといけないんだ?」

 「知らないの?ここの学園に風紀委員いないよ。直樹がすぐクビにするから」


 なんちゅう生徒会長だ…。ああ、だから副会長の怜って子以外に生徒会室にいなかったのか。


 「直樹もぼくと似ていて媚びるやつは嫌いなんだ。だから学園の風紀は一向によくならない」


 平和そうに見えるけどな鳳凰学園は、といってもまだ一週間も学園にいないけど。凪史の目は真面目な色になり私は黙って話を聞く。


 「特に最近、不穏な事件が突発として起こっている。普段まったく問題を起こさなかった生徒が突如に人が変わり犯罪レベルの問題を起こすケースがあるんだ。これは学園の都合や相手側の問題もあって表には出てないだけ」


 楓は静かに、お金で解決か…と心で呟いた。確かに学園の名前と被害者と加害者もどっかのトップでしょうね。


 社会的地位を考えて、被害を受けた側も被害を与えた側も名誉が傷つくのは避けるだろう、楓がため息をつきつつ。


 「それで凪史は学園の秩序を守るために執行部を立ち上げたいと?」

 「その通り、ぼくは権力や金の重圧で見過ごされてきた不祥事を裁きたい。これは学園の経営する者の責務だ。そしてより強い強制力をもった者がいれば風紀を乱す者への抑止力にも繋がるし」


 胸をはって凪史は言う。うーんと考えてしまう楓は凪史の発言が突拍子も無い上、結局こっちも学園の権力を使っているんじゃねーの?みたいな感想で。


 しかし現実問題、それが一番てっとりばやいのも確かなのだ。


 「うーん、この話いったん保留にしてくれないか?今そういわれても困る」

 「好きにしなよ、君もその外見だ、狼の群れの羊だね。すぐに分かる」


 怖いことを言うなって…。私の繊細なハートがチクチクしちゃうぞ。


 でも、冗談抜きで今の私はいい男だ。ファーロウにも何度も忠告を受けている。


 他人事じゃないかも…。


 あっ私の直感って当たるんだった…。うげー。

 

***


 そんな話を夕食時にヒバリとファーロウにした。


 「随分と加藤君も思い切った行動にでたよね」


 ヒバリは私が作ったカレーを食べながら言う。庶民的なカレーを食べるのはヒバリには初めてらしい。


 美味い美味いと絶賛してくれながら食べている。


 「うん、それで俺にメンバーの一員になれってさ、どうしよう…その気はないけど逃げれる気がしない」


 凪史にはゆるぎない自信があるらしい。楓が執行部に入るのに。


 面倒な事になりそうだけど、多少の見返りもあるとのこと、この学園にパイプラインのない私の自衛にもなるかな?しかし突発的に犯罪を起こす生徒が多くなったって何でだ?


 「なあ、ヒバリこの学園で結構悪さするヤツ多い?」


 うーん、と少し考えるヒバリ、彼は小中高の小から学園にいたらしいから詳しいと思って聞いてみた。


 「確かに完全平和とは言わないけど、自分の立場を分かっている人は分かるし、ぼくは陰険なイジメとかは目撃したことはないよ。大人になってから人脈に響くもんね」


 ヒバリはでも、と続ける。


 「言われてもたら、ここ最近になって学園から姿を消す生徒多くなったよ。ほら楓が座っていた教室の机も前の生徒が突然やめたし」


 私の席いわくつきだったの?やめてよー、なんか不吉-(ギャル風に)。


 ふーとため息をついていると、テーブルに置いてあった楓の携帯がプルルルルと着信音が鳴った。


 「ちょっと御免」


 立ち上がり、台所まで移動してから着信の相手を確認した。送信者は家族の誰でもなくクラスメイトのハンスから。


 「はい、もしもし」

 「ごきげんよう楓さん、こんな時間にすみません。お邪魔でしたか?」

 「いいや、邪魔なら出てないよ。何か用がある?」

 「以前に見たいと仰っていました映画のお誘いです」


 ああ、昨日携帯サイトを見ながら久しぶりに映画館で映画を見たいとこぼしていた。学園の中にも映画館はあったりするのだけど、やっぱり私も閉鎖的な空間でなく街の映画館に行ってつでに世間の流れ、買い物や学園の生徒と教師以外の人間にも会いたい。


 ぶっちゃけ女の子が見たい。あ、いや深い意味はないのよ?ただ男は見飽きて女の子がリアルに動く姿を見たいだけ。


 多分、ここが女だけの学園で私も女のままだったら逆に男の子が見たいと思う、だから精神的に同性愛に目覚めたって勘違いはしないでほしい。


 でも私は自分専用の車を持っていない、自家用車だよ。運転手つきの。庶民なめんなよチクショー。


 そんな訳で学園での初めての休みはこの部屋で引きこもろうかと思っていたが、ハンスが連れて行ってくれるなら山の中にある学園でも街に移動できる。


 タクシー呼べば街には行けるんだけど、そこまでして行きたい程でもなかったので、ハンスのありがたいお誘いに二つ返事で返した。


 「はい、わかりました。では明日、おやすみなさい楓さん」


 別れの挨拶を済ませ、プッと時間と場所を決めたら通話を切った。


 明日は楽しい街めぐりといたしますか。

なっが!ここまで来るのに15話になってしまいました。これからもっとテンポよくしたいです。


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