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10 知れば知るほどよくわからん学園


 「「かんぱーい!」」


 学寮434号の部屋で2人だけのささやかな歓迎会が始まった。転入生の新井 楓と先に434号室に暮らしていた高木 雲雀ヒバリが炭酸飲料の入ったガラスのコップを軽くぶつけ合い、飲む。


 テーブルの上には二階の通称「コンビニ」で買ってきたお菓子や加工食品、ついでに楓が簡単に作った手料理が並び即席にしては見栄のある食事がそろった。


 楓のペットのフリをしているファーロウもテーブルの上に乗って料理に舌鼓を打っていた。本来の猫なら食べてはいけないネギ類やチョコレートのたぐいも生来の猫ではないファーロウに関係なんてないのでパクパク口に運んでいく。


 ルームメイトのヒバリは猫の生態に詳しくないから飼い主が咎めないのなら大丈夫だろうと気にも留めていない、それによってファーロウの食事を煩わせなくてすんだ。


 「コレ美味しいね、こんなに楽しいご飯は久しぶり」


 ヒバリは竜田揚げ(楓が作った)を味わって言う。


 「一人で食べているのか?寮の食堂には」


 楓がコップにジュースを足しつつヒバリに聞いてみる。


 「あんまり行かない、食堂の料理を電話で注文して運んでもらって済ませるのが多いよ。どうしても食堂だと皆の目があるから落ち着かなくて」


 ヒバリは楓に向かってニッコリと笑う。総理大臣の嫡子という肩書きは伊達ではないようだ。その名はどこまでもヒバリを放っておいてくれない。


 いかに取り入ろうかと虎視眈々に狙ってくるらしい。適当に返事をして其れをきっかけにまとわり付かれては堪らないそうだ。


 誰かと一緒なのに気詰まりを感じないで食事を誰かと楽しむのは随分久しぶりと言って、上機嫌なほどヒバリは嬉しそうに楓の用意した料理を頬張っていく。


 年相応なのか次々と料理を口に運ぶヒバリをみて楓は微笑ましく思い、店のお惣菜に箸をすすめる。自分の料理を喜んで食べてくれる人は見ていて気持ちがいい。


 食事をしながら自然とお互いの話になっていった、ヒバリは空手の部活動をしているので早朝に寮をでて夕暮れに戻る、今日は楓のために特別朝の鍛錬を休んでくれたらしい。


 部活動や学校行事を大まかに説明されても楓はイマイチ腰を入れて聞いてない、楓は部活動をする気は起こらなかった。


 楓としては部活という青春は女子高で没頭したテニスで終わっている。


 大学になってきっぱりと止めた。特別目を見張るような才能があったわけでもない、ただ皆と青春を謳歌しただけ。


 未練があるとしたらテニスじゃなくて、皆と馬鹿笑いした時間の方だった。


 なんて考えていたら、ヒバリの皿からドンドン減っていくので楓は大皿からよそってやる。この辺は弟がいるので本人も無意識に行動しているもよう。


 「明日から楓も学校へ登校するの?」


 よそってくれたおかずにお礼を言って、ヒバリが楓に話を切り出した。


 「ああ、クラスが一緒だといいな」

 「そうだね、でも学校では生徒会メンバーには近づかないほうが良いよ」


 おかしい物言いをするので楓は怪訝そうな顔でヒバリを見た。


 「お主は面白いことを言申す、…俺の人生で生徒会に関わる要素も接点もかけらもないぞ?」

 「うん、楓が意図的に近づかないか、あちらから気にいられない限り大丈夫だとは思うけど…」


 でも楓は美人だから危険かも…本人にはその気がなくても。


 と心で呟くと言葉を続ける。


 「どっちかというと生徒会より、その親衛隊のほうが厄介かもね」


 ぶっと丁度ジュースを飲んでいる楓は咽せてしまった。


 「ちょっと大丈夫?」


 ヒバリが台拭きの布をもって立ち上がるが、楓は手のひらをヒバリに向けてストップをかけた。


 「だ…丈夫…それより何だ親衛隊って…」


 楓が持つ親衛隊のイメージは昭和の時代にペンライトをもってハチマキを頭に巻いた、今で言うアイドルオタクしか浮かばない。

 

 この学校ではこんなのが流行っているのか…ちょっと学校に対して不安。


 「彼らは自分のこと生徒会とか目立つ人物のファンクラブって名乗っているけど、彼らを嫌っている人は親衛隊って皮肉で呼ばれているの。特に生徒会の親衛隊たちが一番過激で有名なんだ」


 「たとえば?」


 凄いどーでもいい話ではあるが、注意されるほどなんだから少しは気にかけるべきだと判断した楓。


 「一言で言えば集団の結束の力かな?目障りな奴がでると親衛隊が押しかけて潰すらしいよ、しかも彼らマネージャーか秘書を気取っているから目障りな生徒を排除する権利があるみたいな態度だし」

 「へー…普通に納得しそうになったけどさ、親衛隊も生徒会のメンバーも男だよな?」

 「当然、一人も女子はいないよね」


 当たり前とばかりにヒバリは楓に同意する。


 「隔離されるとこうなるのか男の欲求とは…」

 『世も末ですね』


 横から黙って食事をしていたファーロウが楓に相槌をうつ、確かに賛同はできない。青春時代を此処に何年も幽閉されると変な方向へ進むのか?


 「基本的に本人の承諾がないとファンクラブは結成されないようだけど、こっそりそんな感じのサイトを立ち上げているようだよ。実際僕のファンサイトホームページもあったくらいだし」

 「へーモテモテじゃないかヒバリ」


 ちょっと冗談半分にヒバリをからかうとヒバリは眉を八の字にして笑う、まさに苦笑い。


 「学校側に連絡してホームページを削除してもらった。中には下品なサイトもあるから中途半端に放置して調子に乗って欲しくなくてね」

 「たとえば?どんな下ネタなんだ?」


 面白そうに楓はヒバリに尋ねる、ヒバリはう~んと躊躇い。


 「…聞きたい?」

 「聞きたい、先生」

 「まぁ楓は容姿がいいから知っていたほうが自衛になるだろうし…あんまり気持ちのいい話じゃないんだけど、学園内や寮でとられた盗撮のサイトとか誰を抱きたいランキングだ…うわ!楓っ!!」


 ブーッと楓は口に含んだチキンを吹いた。再び咳き込む。


 テーブルに吹いたチキンをヒバリは布巾で拭いてくれているが、被害はテーブルに収まらずテーブルの上に座っていたファーロウの横顔にもふっ掛かった。


 『楓さん…ひどすぎます…』

 「ゴメン、ファーロウ!…ってどんだけこの学園は欲求不満なんだよ!!そんなに不満ならエロ本でヌケ!!パソコンが一人ずつ支給されていんだろ!?AVサイトでも見てろ!!」


 テーブルに両手をついて立ち上がる。しかしコレが元女性の台詞だろうか、ファーロウは小さくため息をつく。


 でも、楓にはそんなの関係ない。楓は顔を曇らせ唸った。


 全国でもトップクラスの学園が変態どもの巣窟だったなんて!!ちょっ、おまっファーロウどんな所へ転校させてくれたんだよ。


 死ぬほど勉強しても家柄や財力が足りなくて、この学園に入れない人だっているのに、実態はこれだったなんて哀れすぎる。あの有名大学が大麻の栽培している事件並みにガッカリだ!


 「僕に言われても…」


 ヒバリはティッシュでファーロウの顔に付いたチキンをとってやりながら言った。


 「確かにそうだ、ありがとうヒバリ学校で十分警戒する必要性を学んだ」


 同性愛者を否定する気持ちはない、イエス様がいる以前から同性愛禁止されてきてもなくならない愛を否定するほど暇じゃない。でも一時の感情に任せて近くの美少年で済ませるというのが気に食わない。


 恋愛は真剣に節度を持つべきだ。ヒバリの話だと真剣さにかける気がする、偏見かもしれないけど盗撮まで相手にする行動はどう見ても私の理解を超えていた。


 ふうっと楓は一つため息をつくと、気を取り直して食事を食べ始めた。

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