42-2.会談(2)
「おぬし! この若者が魔王だとは言っておらんかったではないか!」
ファムファテルはヒコの左側に座っている魔族の男に指をさして文句を言った。
「要人を保護して欲しいとは言ったが、嘘は言ってないはずだ」
「ふむ、まあ良かろう。人間の子が魔王を名乗っている事情については聞かせてもらえるんじゃろうな」
「そうでなくては、この席に同席させない」
魔族の男がヒコに目配せをして発言を促す。
「僕は先代の魔王の養子だが、先代は実子を成さないまま亡くなった」
「それだけ?」
ヒコが簡潔に答えると、マリアが質問した。
「先代のお考えまでは知らない」
ヒコは変わらず簡潔に答える。すると今度はユウキが質問する。
「あのー、魔族の世界では魔王さま以外にも普通の人間は生活しているんです?」
「いや、僕だけだ」
「どうして魔族だけが暮らす世界に人間が?」
「それについては、わしが説明しよう」
マリアの左側にいた魔族の長老が口を開く。場の空気が少しだけ緊張感を帯びた。
「わしら魔族、長年の魔法研究の課題は、存在を異とする世界への門を開くことであった」
「いかほどの期間、その研究を続けておったのじゃ?」
「およそ2千年じゃな。無論、何世代、何十世代と成果を積み上げつつな」
「それは、魔族の世界の全住人が異世界への目指しての事なんじゃないか?」
静かに話を聞いていたサイファーが口を開く。
「俺たちエルフを含む亜人種たちもこちらの世界に越してきた。その時と似たような事情があるのかと思っていた」
「おお、懐かしいのお」
「俺が経験したことではないがな。俺の前の世代の話だ」
サイファーの方を振り返ってファムファテルがいうが、軽くあしらわれた。
話のころ合いを見て、ユウキは長老に質問を始める。
「ともかく、世界の全住人を移住させようって途方もない計画ですね」
「いかにも」
「そうしなければならない理由があったのですか」
「いかにも」
「そうしないと、その世界に住めなくなるという事ですか」
「いかにも」
「それにしても、その計画のために千年単位で時間をかけるというのも悠長な話じゃな」
ファムファテルは茶化すが、ユウキは真剣に考えこんだ。
「あ……、まさか太陽が?」
「いかにも」
「なるほど……、そりゃ大変だ」
「ちょっとユウキ、ひとりで納得しないでよ」
セッカがユウキに絡んで文句を言った。
「だから、太陽だよ。魔族の世界にある太陽は寿命が尽きかけてるんだ」
「太陽が?」
「太陽の寿命が近づいてくると、数億年単位をかけて気温が上がっていって、最後には海も干上がってどこにも住めなくなる、らしい。俺も文系だから詳しくはないけど」
「そうなんだ」
「だから異世界への扉を開いて新しい居住地を探そうっていう話になったんですね。数千年からのプロジェクトになるのも当然というか」
今回の話を書くにあたって、恒星の寿命末期の変化における地球の気候変動を改めてちゃんと調べてみましたが、地球が居住不可能になる時期は思ったより早かったです。
10~15億年後くらいに気温上昇が本格化して、20~25億年後くらいには金星のような環境になって居住不可能になるみたいです。
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