39-1.主なき旅
「あの伯爵家の坊ちゃんと、その従者はこの先どうするのかな」
セッカはロベールたちの去就について考えていることをエイムに話していた。
ロベールがマリアへの個人的な想いから護衛を無償で引き受けて、旅に同行していた事は聞かされていた。そして、ロベールの従者2人は戦力として十分機能していた。
ザグレーブからマルボークへの道のりは、ここまでの旅路を思えばそう厳しいものではない。魔物との遭遇報告数も格段に落ちる。
「いなくなっても別に困らないけど、ここまでお世話になっているから黙って置いていけないし、はっきりして欲しいところだわ」
「色んなことが一気に起きたので混乱するのは仕方がないですけどね」
「正気じゃなかったとしても、他の女に手を出してる最中に本命がさらわれたんじゃあね。バツが悪すぎて逃げ出しても不思議じゃないし、誰も責めないよ」
「シスターの方は全然気にしてないんですよね」
「彼女は彼女で、ちょっとオープンすぎるというか、本当に聖職者なの? という感じもするけど」
「はい、実は本人に聞いたのですが……」
エイムは、セッカに耳打ちをする。
「うそ! 本当に?」
エイムは真剣な表情でそっと頷く。セッカは血の気が引いた。
「坊ちゃんには絶対教えられないわね」
コクコクとエイムは頷いた。
「ロベールさま、王都へ帰りましょう」
「いや、ここで逃げ出すのは不義理だし僕も格好がつかない」
ロベールはすっかり落ち着きを取り戻していた。
「シスターに合わせる顔はないんだけどね」
ロベールは苦笑いをしてみせた。
「おお、ご立派です」
ジェットはやや形式的にロベールをほめる。ミーナはそんなジェットを横目で軽く睨んだ。
「差し当たって、マリアを救出に行く話は出てるの?」
「いえ、メイドは食い下がったようですが、ファムファテルさまは無謀であると反対されたそうです」
「まあ、そうだよね」
「情報部の女が替え玉として変装してマルボークへ入る予定だそうです」
「対外的にはマリアは無事だと知らしめる、ということだね」
「そうです」
「じゃあ、僕も最後まで護衛を務めないといけないね。決まりだ」
ロベールたちはマルボークまで一行の護衛を務めることを決めた。
翌日、主なき一行は北への旅を再開した。
南風を幌に受けて馬車はマルボークへと進む。
王都から長く続いた旅は、あと数日で終わろうとしていた。
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