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4.シスター・ストロベリー


 マリアとサリーは王城内にある教会に向かっている。王国圏の宗教は多神教で、教会は主に慈愛と教育の神の神殿である。その他の神はそれぞれの小さな祠だったり、お(やしろ)に祀られていた。

 教会の神官には、就学前の子供にその前段階として識字魔法をかけることが求められる。そのため王国圏の識字率は非常に高く、教育水準は高い。


 二人が尋ねに向かっているシスターストロベリーは、本名はストロベリー・ハスカップという。彼女も魔法学院の卒業生で、マリアとサリーの同期生だった。彼女は神官の家庭に生まれ、識字魔法を行使するための魔力のコントロールを学ぶために魔法学院に入学していた。成績も上位10%に入るほど優秀で、治癒魔法の適性を見出され、卒業時には”マスター”の称号を得るほどの使い手になっていた。

 この旅に姫様が同行を求めるには、うってつけの人材と言える。


(うーん、ストロベリーをこの旅に連れて行く危険性をマリアにどう説明したものか……)

 サリーは教会への道すがら、そのことばかり考えていた。うつむいて考え事ばかりしていたので、マリアに突っ込まれてしまう。

「どうしたの? そんなに反対?」

「いえ、そういう訳ではないのですが……」

 返事はサリーらしくなく、歯切れが悪い。


「ここね」

 教会の敷地内には、礼拝堂と聖堂が別に建っている。礼拝堂は儀式などで使われるものなので、シスターストロベリーは聖堂の中で日常の業務をこなしているはずだ。

「あ、いた」

 二人は聖堂の正面玄関の扉を開けると、早速シスターストロベリーを見つけた。修道服をまとった彼女の大きな胸は、それが目印になるほど目立ってしまう。

 彼女は玄関ホールの隅のデスクで、受付業務をしながら事務仕事をしているようだった。

「あ、姫様お久しぶりですー」

「御無沙汰ね、シスターストロベリー」

「サリーちゃんもー」

 シスターストロベリーはニコニコしてサリーに手を振った。サリーは”お仕事モード”の対応で礼をする。


挿絵(By みてみん)

「ちょっと大事な話があるんだけど、今時間は取れるかしら?」

「ここでいいなら大丈夫ですよー」

「ここではちょっと……」

 と、マリアは言ったものの周囲に人はいない。用件だけ手早く伝えてしまおうと思った。

「あたし、とある事情で非公式にマルボークに行くことになってね。同行者を探してるの。一緒に行ってくれない?」

「なるほどー。遠いですし急ですねー」

「返事は急がないわ。出立日はまだ決まってないから」

「うーん……、家族には相談しても?」

「それ以上に他言しないなら」

「それなら前向きに検討しますー」

「ありがとう。いい返事がもらえるならあたしを訪ねてきて。王宮の通行証を回しておくわ」

「承知いたしましたー」

 シスターストロベリーは、おどけて敬礼をしてみせた。


「シスターストロベリー、学院の卒業以来ですね」

 用件が終わった所でサリーが声をかけた。

「王都に帰ってきてからは会えてなかったですねー」

「あれからは、その……大丈夫?」

「はい? 大丈夫、と申しますと?」

「何でもないわ……。忘れて頂戴」

「ふふっ。サリーちゃんちょっと変ですねー」


「???」

 マリアは事情が呑み込めない。

「ま、まあそういうことだから。お仕事の邪魔してごめんね。シスターストロベリー」

「いえいえ、お構いできなくてすみませんですー」

 笑顔で手を振って見送るシスターストロベリーに軽く頭を下げて、マリアとサリーは聖堂を出た。


 王宮の私室に戻った二人は、残りの人選について話す。

「あとは”影”でしょうか? 影を連れて行く意図についてお聞かせ願えますか?」


 王室の人間には、儀式なとにさまざまな理由により本人が欠席しなけばならない、しかし公式には出席していることにしたい、という事情に対応するために影武者を置くことになっている。

 平和な時代には不必要な制度だが、王国にも政情が不安定な時期があり、その頃から制度が続いている。


「これはバーバラ一択ね。アリスの方が礼法や所作が上というのもあるけど、バーバラは馬術から剣までなんでもこなすし」

 アリス、バーバラという名前は二人の”影”を区別するための符丁だ。彼女らの本名は姫様も知らない。

「連れていく理由は、念のため。例えば、あたしの顔を知っている人に出会っても『他人の空似でした』みたいな工作もやりやすいでしょ?」

「なるほど。そうですね」

「彼女らは国家に仕える身だから、気の毒ではあるけど了解は必要ないわね」


 二人で話していると、コンコン、とマリアの部屋のドアがノックされた。サリーが対応する。

「姫様、財務官のロイさんが面会をお求めです。外遊の件で打ち合わせをと」

「そう。通してください」


 ロイは、黒い短髪の利発そうな青年官吏だ。弦無しの眼鏡は仕事が出来そうな雰囲気を醸し出している。マリアはテーブルで席に付き、ロイと対面して打ち合わせを始めることとなった。

BingのImage Creatorでチャチャっとイメージ画を生成して貼ってみました。

プロンプトは適当なので、あとで同じキャラのイメージ画を貼っても、顔も服のデザインも変わると思います。すみません素人なので……。


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