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38-2.替え玉



「現実的ではないな」

 ファムファテルは否定する。周囲の反応もやや冷ややかだ。

「どうしてですか!」

 サリーは興奮気味だ。


「魔王軍の一派に過ぎないとはいえ、拠点として確保しているところじゃ。敵の備えもはっきりしないところへ殴り込みに行こうというのか?」

「だけど……!」

「まあ、やるなら最少人数で忍び込むか、大軍で取り囲むかの2択だな。冒険者パーティのような中途半端な人数で乗り込むやり方は一番の悪手だろう」

 サイファーが具体的な指摘をして見せる。


「わしは外交的な手筈を検討する。先にマルボークへ戻るぞ」

「承知した」

「エイムは皆と一緒にゆるりと戻って来ると良い。無理をするでないぞ」

「わかりました」

「サリーよ。これより王国の宮廷魔導士の名において任務の変更を申し付ける。これよりエイムの護衛をしてマルボークへ帰還させよ。身重なのが分かったので細心の注意をするように」

「……はっ」

「そちはバーバラと言ったかの」

「はい」

「お主はマリアの替え玉だったな? これより先はマリアに変装して護衛対象として振舞うように」

「わかりました」

「あたしは?」

「セッカは……言いたいことがある者の愚痴を聞いてやってくれ」

「はいはい」


「それじゃあの」

 ファムファテルは皆に手早く指示を残し、魔法の杖に乗って飛んでマルボークへ帰っていった。



「そろそろあなたたちの名前を教えてもらってもいいかしら?」

 マリアたちは不凍の森の奥へ向けて歩いている。

 魔族軍の拠点は上空から直接入れないように偽装しており、拠点の入口までしばらく歩かねばならなかった。

「僕は、ヒコ。彼はノクタブル」

 ノクタブル、と呼ばれた銀髪の魔族は2人を先導して周囲を警戒していた。

 不凍の森の、魔族の拠点の外にいる野生動物の一部は魔族に対して敵意をむき出しにしているらしい。

「不要な衝突は避けたいものだ」

 ノクダブルはそう語る。魔族と言えど自然の中で自然と共存するという意識はあるらしい。

「私たちもそうありたいわね」

 マリアの言葉を受けて、ヒコはかすかに頷いた。



「驚いた。顔立ちはそこまで似てると思ってなかったけど」

 セッカは、マリアに変装したバーバラを見ると素直に驚いた。

「メイクにちょっとしたコツがあってね。背は同じくらいだし服が入るように体作りも普段からやってる。いつだって入れ替われるのよ」

 バーバラは、普段の口調も封印してマリアになり切ろうとしている。




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