38-1.マリアはどこへ(4)
ファムファテルは引き続き語る。
「これは、こっちの世界で活動している魔族の情報収集をしていて分かったことなんじゃが、エイムがいつぞやの戦いで討ち取った魔族軍の女大将がおったじゃろ。それ以来、そいつの一派が魔族軍全体から疎まれるようになったらしい。その一派は、魔族軍から離れて独自にこちらの世界で拠点を作るうごきをするようになった」
「その拠点が、不凍の森の中に?」
「いかにも」
不凍の森には、サイファーやガーネットなど異世界から転移してきた亜人種たちが暮らしている集落があった。亜人種たちは魔族がこちらの世界への侵略をもくろんでいることが判明したことでその集落を放棄してマルボークへ移住していた。その不凍の森に魔族の一派が移り住んでいる、という事のようだ。
「魔族軍としては、その一派の動きにどう対応したんだ?」
サイファーが疑問を口にする。
「放任していたようじゃな。こちらで拠点を作ろう、というのは向こうとしては悪い話じゃない」
「なるほど」
「ところが、そうもいかなくなった」
「どうして?」
「そのカギは、銀髪の魔族が連れていた少年にある」
「こんな風に運ばれるのは生まれて初めてだわ」
マリアは、上空を飛行する魔族の男に抱えられている。そんな状態に思わず皮肉が口に出た。
「一国の王女に対し礼を失している事は承知している。だけどもうしばらく辛抱して欲しい」
同じように抱えられている少年がマリアに声をかけた。
「あら、ごめんなさいね。そんなつもりじゃなかったの」
「そうですか」
「私も少しなら魔法で空を飛ぶことはできるけれど、この高度をこの速度で飛ぶことは出来ないわ。開放的で気持ちはいいけれど、自分の力で飛んでるわけじゃないからちょっと悔しかったのね」
「僕とは違う感覚だ。僕は魔法が使えないから」
「あら、そうなのね」
魔族の男の腕の中で、二人は愛想笑いのような微笑みを交わす。
「此度攻め入ってきた魔族の軍は、その少年を追ってきてたのは間違いない。銀髪の男が属する一派は泳がされていた訳じゃからな。つまり、その少年が魔族社会のパワーバランスのカギを握っていると考えていいだろう」
ファムファテルは改めて状況を整理した。
「おおよそ何が起こったのは分かった。問題はこれからどうするかだ」
両腕を組んだ状態のサイファーが言う。この旅の目的は、マリアが無事にマルボークへ到着することだ。そのマリアがいないのは本末転倒である。
「決まっています! 姫さまをお救いせねばなりません」
サリーが語気を強めて言った。
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