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36-1.あやしい声



 北門城壁の上から眺める魔族軍は見るからに混乱していた。

 士官級と見られる魔族数人が激しく言い争っているように見える。ファムファテルはその様子を注視していた。

「さて、潔く撤退するか、あるいは無策で突っ込んでくるか」



 セッカはエイムを連れて庁舎の貴賓室に戻ろうとしていた。エイムの銃はケースにしまってセッカが担いでいる。

「夫婦仲が相変わらずみたいで安心したわ」

「うふふ……あの時はお世話になりました」

「そうねー、でも忙しいんでしょ? あいつ」

「そうですね。普段は秘書として付き添えているし、いろいろ配慮してもらって助かってます」

「はー、あたしもいい相手見つけたいなー」


 二人が貴賓室に近づくと、部屋の中から男女の艶めかしい声が聞こえてくることに気が付く。

 二人は扉に向かって聞き耳を立ててみた。

(ええ……この声って……)

(これは……お楽しみのようですね)

 いくら何でも緊張感がなさすぎる。二人は顔を見合わせてため息をつく。


(どなたがこの部屋に?)

(あたしが出てきたときはロベールっていう貴族のボンとストロベリーさんがいたはずだけど)

(旅をしているうちにそんな仲になってたのかしら)

(そうかもしれないですね)


 ひそひそ話をしているうちセッカは思い出した。

(でもロベールって姫様に惚れてたんじゃなかったっけ?)

 セッカはそう思ったものの、邪魔をするのも無粋だということで二人は貴賓室を離れることにした。



 西門にいた魔族軍は撤収していた。

 北門からの伝令によると、北門にいた魔族軍の司令官が狙撃によって打ち取られ、そのことにより魔族軍は混乱しているとのことだった。

 サイファーは西門の魔族軍が撤退したことを北門への伝令に伝え、その後の指示を待つことにした。


「魔法銃で敵の指揮官を仕留めたらしい。ここの敵が帰ったのはその影響みたいだ」

「へえー。それじゃもう、こういう戦になると剣も魔法も無用のものになっていくのかね?」

「そうかもな。銃の使用を封じる魔法はあるらしいが、その効果の外から撃ってくるんじゃ意味もない」

「アタイも銃の使い方教わろうかねぇ」

「その必要はないな。相手は魔族だ。今回はいなかったが、銃で仕留めるのが難しいような魔獣を従えてくることもあるだろう。そんな時はお前のような膂力のある戦士が必要になる」

「ま、出番があるならそれでいいけどね」


 しばらくして、西門の警戒レベルを一つ落とし、サイファーとガーネットには北門へ来るようにとの伝令が伝えられた。



ここまでのご愛読ありがとうございます。

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