33-2.開戦迫る
「魔族の軍勢がこの街に迫っているということですか?」
「うむ」
「マルボークじゃなくて?」
「うむ」
マリアたちは騎士団庁舎の貴賓室に通されていた。テーブルを挟んだソファーにマリアとファムファテルが向かい合って座り、それぞれの従者が後ろに控えている。
「狭間の迷宮の出口には常に見張りを置いておるからの。やつらの事は筒抜けじゃ」
「数は?」
「おそよ200」
「この街の備えは?」
「500じゃな」
「それなら問題は……」
「人と魔族の戦力を単純に数で評価してはいかんがの」
「まあ、そうですね」
魔族は戦闘能力でゆうに人間に勝る。なのでこのザグレーブの街に危険が迫っている事に違いは無い。
「まあ、心配はいらん。そのためにワシが出向いたという訳じゃ」
「なるほど。そうでしたか」
「そういうことじゃから、事が済むまで街に滞在してくれんかの」
「わかりました」
「この庁舎内に宿所は用意させておる。面倒にならんように庁舎内に留まっておくようにな」
「はい」
「サイファーとガーネット、おぬしらは守備隊に加わって欲しい」
サイファーは静かにうなずき、ガーネットは「よしきた!」と返事をした。
「それじゃエイムや、後は頼んだぞ」
そう言うとファムファテルはサイファーとガーネットを連れて貴賓室から出て行った。
3人が出て行くのを確認すると、マリアはエイムと呼ばれた女性士官に向き直る。
「ねえ、私たちに出来ることはあるかしら?」
「とんでもないですよ。大人しくしてて下さいね」
「あ、やっぱり?」
マリアは苦笑いしてみせる。
「さて、お前たちには精兵50を率いて西門を守ってもらおうと思う」
ファムファテルは廊下を歩きながらサイファーとガーネットに説明している。
「主力は北門に来ると見ているのか?」
「西門はもう、堀の吊り橋を落とさせておるからの」
「ずいぶんと慎重だね」
「戦いの筋書きはこちらで決める。基本じゃな」
「ま、暴れられりゃ文句は言わないけどね」
閉じた門を突破して進むことを目的とした部隊は愚鈍で橋を落とされると空堀を越えられないので北門を攻める。そして、堀を超えられる機動性の高い小隊が西門に来ると予想してサイファーたちを当たらせるのがファムファテルの目論見だった。
「エイムさん、魔法学院の出身だったんですか?」
「ええ、1年ちょっとで退学したんですけど、そのあと騎士団の銃部隊の訓練生への斡旋があって」
「あ、それならジェット先輩と同じですね」
マリアとエイムが話しているところに、突然ジェットへ話題が振られた。
「ああ、ボクもマルボークで銃の訓練を受けたんです。その時に支給された銃がこれで」
ジェットは装備していた銃をエイムに渡して見せた。
「旧式の銃ですね。私もこれには随分とお世話になりました。ちょっと懐かしいな」
「え、これってもうそんな旧式なんですか?」




