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32-1.エイサムでの夕食


 聞き覚えのある声にジェットは思わず反応した。

「あ……、あの娘は」

「あ!」

 アンは席の埋まっているテーブルを見つけると、その顔ぶれを見て見知った顔があることを確認した。


「セッカさんじゃないですかー! なになに? どうしたんですか? こんな片田舎に」

「あ、れ?」

 ジェットはアンの視界に入っていなかった。

「ああ、アンさん、ご無沙汰しています」

 セッカは立ち上がってアンに対応する。


(あの娘、セッカさんと知り合いだったのか)

「なに? やっぱり気になるの?」

「あ、いえ」

 アンに視線を奪われているジェットをバーバラがたしなめた。


「ちょっとサノセクまでお使いで。今はその帰りなんですよ」

「それにしちゃ大人数っすね」

「ああ、この方々はサノセクで知り合ったんだけど同時にマルボークまで発つことになってね。ご身分の高い方たちなので護衛を買って出たんですよ」

「あー、もしかしてご貴族さまとか?」

「まあ、そんなところ。そういえばスカーレットさんは?」

「彼女はザグレーブに配置換えになっちゃって」


「うーん、なにこの見事に嘘は言ってない感じ」

「こういう任務を任されるだけはありますね」

 ジェットたちのテーブルではヒソヒソと小さな声でセッカの受け答えの巧みさに舌を巻いている。確かに王国の姫さまを護衛をしているとは大っぴらには言えないが、嘘は言ってないのは本当だ。


「……?」

 セッカと話していたアンは、隣のテーブルでヒソヒソと話している様子に気付いて目を向けると、そこに昼間見た銃使いの姿を確認した。

「あっと! あなたは昼間の銃使いさん!」

「ど、どうも。こんばんは」

 アンはジェットの座るテーブルに近づく。

「また会っちゃいましたね!」

「昼間はどうも。僕はジェット・フランネル」

「アン・ブルーフィールドです」

「この赴任地は長いんですか?」

「そうですね、3年くらい?」

「昼間にちらっと聞いた銃使いの子は・・・?」

「ほぼ同じくらいですねー。わたしがちょっと後だったけど」

「その人は、辞めちゃったの?」

「パトロール隊は、そうですね。今はマルボークにいます」

「そうなんだ。騎士団に正式に入ったという事?」

「そうですね。銃部隊じゃなくて、将官付きの秘書みたいだけど」

「それはすごいね」


「ジェット、ジェット」

 話が弾むジェットにミーナが声をかける。

「なに? 姉さん」

「話が長くなるなら座ってもらったら? アンさん、ご一緒にお食事どう?」

「はいはい! ご一緒します!」

 アンは即答する。


 その日の夕食は、人懐こいアンを加えて賑やかなものになった。




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