31-1:不穏な空
不凍の森に亜人種たちの里があった頃、里の周囲は侵入者を拒む結界が張られていた。
亜人種たちがマルボークへの移住を決めて旅立つと、まだ小勢の軍しか派遣できない魔族は無人になった里の奪取に動く。
力づくで結界を破って里の奪取には成功したが、軍そのものはマルボークへ向かっていた亜人種たちを追いかけ、騎士団の軍と交戦して壊滅した。
マルボークの騎士団は里の再奪取には動いておらず、不凍の森の里は50名ほどの少数の魔族が占拠して、偵察活動の拠点にしていた。羊角の魔族はそのうちの管理職クラスの者である。
「例の件の報告書が上がってきております」
「うむ……」
マリアたちとの戦闘に敗れたのは羊角の魔族にとっては想定外の出来事である。個々の戦闘力は取るに足らないものだったし大半の攻撃は捌ききれた。最後の雷撃の乗った剣の攻撃は少し堪えたが、問題はそこへ繋ぐための連携だ。あまりにも統率が取れすぎている。ただものではないと感じたこの魔族は、部下にその動向を追わせていた。上がってきたのはその報告である。
「ほほう。まさかワシにあの一太刀を浴びせたあの女があの一行の護衛対象だったとは」
羊角の魔族は不敵な笑みを浮かべる。
「この女を捕えれば利用価値が高そうだ」
「いかがいたしましょうか」
「行き先は知れておる。今は遠巻きに監視しておくように」
「御意に」
羊角の魔族は、地図を広げて思案を巡らせた。
マリアの一行がサノセクを発ってから七日が過ぎた。旅路は順調そのもので、時折魔物には出会うものの、全く問題なく退治していっている。
この日も後方から追いかけてきた魔物をジェットが引き付けつつ背面撃ちの銃撃で仕留めていた。
「ふぅー……。撃ち込んでも止まらない魔物の執念ってば凄いね」
「そうね。人を襲うことに執着させられてる感じすらある」
ジェットとミーナのフランネル姉弟が話しているとガーネットが様子を見に来た。
「二人とも無事かい?」
「ご覧の通りです」
「いい腕だね」
「ありがとうございます」
「問題なければ先を急ごうか……、ってあれ?」
「どうかしましたか?」
「後方から駆けてくるのが3騎。ありゃあパトロール隊かな」
「どうしますか?」
「まあ、挨拶しといても損は無いんじゃないかね」
一行はパトロール隊と思われる騎馬3騎が追い付いてくるのを待つことにした。
「街道パトロール隊です! みなさんご無事ですか?」
パトロール隊の隊長と思しき男が一行に追いつくと声をかけてきた。
「ありがとうございます。魔物の退治はご覧の通りで」
「おー、こりゃ見事ですねー。おや、この魔物の傷は……」
追いかけてきたパトロール隊のうちの紅一点の女性隊員はそう言うと、下馬して傷の様子を確認する。
「もしかして、この中に銃使いがいます?」
青髪の女性隊員はそう言うと両手で銃を撃つ仕草をした。




