28.夕凪の会談
”オアシス”の酒場では、セッカ、バーバラ、ストロベリーが自己紹介を終えたところだ。バーバラは、この場に居ない3人についても説明をする。
「アタイらとは別に、貴族の坊ちゃんとそのお付きが2人。こっちは全部で7人になるね」
「その貴族さまは、どうして姫さまに付いてきたんですか?」
セッカは、素直に思ったことを聞いた。
バーバラは、言ってもいいのかな? と言いたげにストロベリーを見た。ストロベリーはニコニコするばかりだ。バーバラは肘をテーブルに付いて手の甲で壁を作り、声が大きく漏れないように小声で話す。
「ここだけの話、その坊ちゃんは姫さまに惚れてるっぽい。いいところを見せて気を引きたいんだろうね」
「殊勝なこったねえ。温室育ちの坊ちゃんにしては行動力がある。評価できるかは実力次第だけどさ」
ガーネットは、ロベールの心情については評価した。
「でもその坊ちゃん、姫さまの縁談についてはご存じないのです?」
「縁談があるのは知ってるけど、相手までは知らないらしいよ? 縁談と外遊は別件だと思ってるっぽい」
「……それは、気の毒ですね。姫さまがマルボークに到着したら、即結婚式ですよ」
「なんだってーーーー!!」
2時間後、セッカは”オアシス”から数ブロック先の宿屋”夕凪”に来ていた。バーバラたちの親睦会はロベールたちを加えて続いている。セッカは退出する際に、バーバラにマリアの結婚のことについては伏せておくように念押しをしていた。
「ここね」
セッカが”夕凪”の扉を開けると、受付のあるロビーでサリーが待機していた。
「あっ、あなた確か……」
「セッカさん、お疲れ様です。宿には話を通してあるのでお話は姫さまのお部屋で……」
「わかりました」
サリーがセッカをマリアの部屋の前まで案内をする。サリーは、ドアをノックすると返事を待たずにドアを開けた。その行動にセッカは少し驚く。
サリーとセッカが部屋の中に入ると、マリアはソファでくつろいでいた。
「マリア、セッカさん来たよ」
「!!」
主従関係ではありえないサリーの振る舞いにセッカは驚愕する。
「ありがとう。あら、驚かせちゃったわね」
マリアが二人の方を向くと、セッカが驚いた顔をしている。
「サリーはわたしの侍女である前に親友でね。二人きりの時は仕事は忘れてもらってるの」
「……今は、ワタシもいますけど?」
「あなたとも、出来れば身分の違いを取り払ったお付き合いをしたいと思うの。どうかしら?」
「ワタシは器用なタイプじゃないんで、状況によった切り替えが出来ないかもしれないですよ?」
「構わないわ」
マリアは、セッカの目を見つめて言った。
「……ん、わかったわ。お望みどおりに」
「じゃあ、改めて」
マリアは、セッカに右手を差し出す。セッカはその気持ちを受け取った。二人は握手を交わす。
「まあ、ここに来てもらったのはちょっと込み入った話になりそうだったからなんだけど、どこまで話してたっけ?」
マリアたちはソファーに座り、話の続きを探る。
「縁談の発起人が大魔導士さまだったってところ」
サリーはマリアの隣に座る。
「そうだった。セッカは大魔導士さまのことはよく知ってるの?」
「そりゃもう」
「セッカはあの人の事、どう思う?」
「この世界のラスボス」
「ラス……ボス?」
「ああ、ごめん。この世界で誰よりも強くて、誰よりも権威と権力を持っている。そう感じた」
「でもまあ、それで合ってるわね」
「亜人種の人たちを森の中の結界に閉じ込めてるのがあの人だって知った時はムカついたけどね」
「不凍の森って言ってたっけ?」
「そう」
「不凍の森が魔族の棲家っていうのは噓だったのは聞いたけど、冒険者たちってそこを目指してるんじゃないの?」
サリーが当然出てくる疑問をを投げかける。マルボークの冒険者ギルドは騎士団が運営していて、魔物の討伐に賞金を出している。
「冒険者ギルドに登録すると、本当の魔族の棲家の場所を教えてもらえるの。不凍の森にあった亜人種の里は結界の中にあるから、普通の人間に見つかる事はない」
「本当の魔族の棲家ってどこ?」
「不凍の森から南に120キロ、三日月の森。その奥に”狭間の迷宮”の入口がある」
「その迷宮の奥に魔族の棲家があるのね?」
「いや、迷宮の奥の方はまだ全然踏破されてないんだけど、分かってるのは迷宮の中に魔族が転移して来てるってこと」
「魔族も転移者かぁ」
サリーがため息をついた。
「……いや、あり得るかも。魔物の出現記録は200年くらい前のものが一番古くて、それ以前には無いもの」
マリアは、セッカの説明に信憑性を感じたようだった。
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