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23.不審な影



カール隊長が率いる近衛兵は、あっという間に盗賊を制圧した。

 ウメンドリッヒで数多くの人を誘拐した西の盗賊は、この周辺を根城にしている盗賊のアジトに潜伏していたが、その人々を売り渡す段階では当地の盗賊の協力を仰がなかったようだ。元のアジトでも仲間の大半を捨てていた彼らは、2名だけで誘拐被害者を売った金を山分けするつもりでいたのだ。


 王国軍の精兵たる近衛兵5名と、落ちこぼれの盗賊2名では勝負以前の話だ。盗賊は容赦なく斬り殺され、首を刎ねられた。この首はウネンドリッヒに送られ、市中に晒されることになるだろう。


 荷台に乗せられていた誘拐被害者は大人の女性が4名で、子供は男子4名女子2名だった。手枷と猿ぐつわをされていたので、近衛兵たちがそれらから解放する。


「この中にユベイルはいるか?」

 カールは、この事件の捜索のきっかけになった少年の名を呼んだ。彼を発見できなければ、事件解決の喜びも半減する。

「はい、俺です」

 12歳くらいの純朴そうな少年が手を上げた。

「お前か! 妹が心配していたそ! ウネンドリッヒに帰って安心させてやろうな」

 カールはユベイルの頭を髪がぐしゃぐしゃになるほどに撫でた。


「あのー……、あなた方は一体……?」

 そばにいた女性がカールに聞いた。それもそうだ。カールたちは武装しているとはいえ商人に偽装している。軍人には見えないはずだ。

「あー……、特務で動いていた王国軍の者です。安心してください」

 嘘は言っていないが、王女の命令で動いていたと言っても信じないだろうとカールは思った。剣の鞘の装飾に付いている徽章(きしょう)を見せて身分の証明とした。


 マリアたちの馬車はカールたちを追っている。バーバラは、マリアに盗賊の討伐を終えたカールに対面する役目を影武者である自分と変わるかどうかの打診をしていた。

「手早く討伐を済ませた場合だと、どんな問題があるって言うの?」

 遠回しに言っても意味が分からないようなので、バーバラはストレートに言うことにした。

「盗賊を生かしておいて面倒なことにならないように、首だけ持ってくる可能性が高いってこと。立場上、姫さまはその首を検分しなきゃいけない」

「あー……、そういうことか」

「どうします?」

「変わらなくていいわ。大丈夫よ」

「そうですか。検分は眼帯の彼にも協力してもらって、サリーとストロベリーは奥に控えててもらいましょう。年頃のお嬢さんに見せるものじゃないしね」

「そうね」

「あら、ご自分がそこに含まれない事には抗議しないので?」

「私はもちろん別よ。私の指示で動いている人がいる。その結果がどうあれ、受け止める義務があるのよ」

「うん……そうね。その通りよ」


「……」

 ミーナは、マリアとバーバラの会話を聞いて、マリアの温室育ちの王女とは思えない振る舞いに感心した。


 やがて、盗賊を討伐して帰還した近衛兵とマリアたちは再び合流する。

 マリアは下馬して彼らを出迎える。その後ろにはサリーとストロベリー以外の4名が控えていた。


「スニーク、この首級(しるし)は西の盗賊のもので間違いないかしら?」

「ああ、そいつらで間違いない」

 マリアは、カールに相続討伐作戦の顛末の報告を聞いて、持ち帰られた首級の検分を行った。眼帯の証言により、西の盗賊の討伐の完了が確認される。


「カール隊長」

「はっ」

「盗賊討伐の任、大儀でした。このことは、私の護衛の件とは別に論功を行います」

 これは、恩賞を出すという意味である。

「はっ」

「本当にありがとう。それで、救出した人たちの事なんだけど……」

「近衛でウネンドリッヒまで送るしかないでしょうな」

「そうね。引き続きお願いします。とりあえず次の町で態勢を整えましょう」

「はっ」


 馬車2台と8騎になった一行は、次の町を目指すため街道に復帰するための進路を取った。

「あー……、なんとか吐かずに済んだ……」

 マリアは、休息のため馬車の幌の中にいる。サリーとストロベリーと一緒だった。

「そんなにひどかったの?」

 マリアの緊張を解きたかったのか、友人だけの空間になったからか、サリーは”お仕事モード”を解除していた。

「うん……。生気が無いのがもう……気持ち悪くて」

「わたしも、仕事柄大きなけがを負った人を診ることはありますが、さすがに生首を見る機会は無いですからねー」

「そりゃそうでしょうよ……」

「はいはい、えらかったねー。よしよし」

 サリーは、マリアの頭をポンポンと撫でた。

「サリー……!」

 マリアはサリーの腰に抱き付いて甘えた。

「あらあらー。とんだ甘えんぼさんですねー」

「まあ、少しくらい気を抜く時間も必要よね」

 サリーは、マリアの頭を撫でながら優しい目をしていた。



 だが、そんな時間は長く続かなかった。

 一行の進路に、不審な男が立ちふさがっていた。その男は、顔立ちは壮年だが身長は180cmほどあり、筋骨はしっかりとしていて迫力がある。しかし、その男が危険人物だと感じさせる要因は、こめかみのあたりから生えている2本の角だ。明らかに人間ではない。


 一行が馬を止めると、その男はさらに数歩近寄って言った。


「後ろの馬車の荷は、ワシが注文していた品だ。引き渡してもらいたい」

挿絵(By みてみん)


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