表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/57

20.盗賊の後始末



「くそっ! 退け! 退けーっ!!」

 開戦早々に負け戦を突きつけられた髭面は、眼帯の馬の手綱を取り退却の号令をかける。顔や腕に無数の小さな刺し傷を受けていた盗賊たちは一斉に退却して、馬車の後方でロベールと対峙していた3名もそれに続く。最後にミーナとジェットの追撃を警戒しつつ髭面が苦虫を潰したような顔をして退いて行った。


「あーあ、こいつ置いて行かれちゃったねえ」

 馬車を降りて来たバーバラは馬の背に倒れている眼帯の様子を確認している。

「助からないと判断したのでしょうか」

 盗賊の退却の様子を注視したままのミーナが聞いた。

「多分ね。そこまでの深手ではないようだけど」

「眼帯の死角から斬りこんだ分、急所には届きませんでしたからね」

「なるほど」


「治療しましょう」

 馬車を降りてきたマリアがそう言った。

「まあ、このまま捨て置くのは目覚めが悪いけど」

「傷口を診ます。馬から降ろしてください」

 マリアに付いてきていたストロベリーが、普段とは違う口調で言った。


 ロベールとジェットが協力して眼帯を馬から降ろして地面に寝かせた。そして、ストロベリーの指示に従って上半身の服を切り裂いて剝ぎ取った。

「どう?」

「とりあえず出血を止めます」

 治癒魔法での外傷の治療にも手順がある。まず止血をして、後に傷の程度と種類に合わせた治癒魔法を施さなければならない。皮膚や筋肉の治療は内臓へのダメージには意味をなさない。逆も然りであるし、骨についても同様である。

「ブルト・ストッペン」

 ストロベリーは両手を眼帯の傷口にかざして魔法で止血をした。そして傷口の詳細を観察する。

「右の脇から腹部の筋肉が切れていますが、内臓には届いていませんね」

「筋肉は繋がないで、皮膚だけ繋いで傷を塞ぐってことは出来る?」

「はあ?」

 マリアが一見突拍子もない質問をする。


「ここには置いていけないし、次の町まで連れて行ったら役所に引き渡してしかるべき罰を受けてもらうことになるけれど、暴れられたら面倒じゃない。もちろん縛ってはおくけど」

「まあ、大人しくしてもらう事にこしたことはないですけどね」

 マリアの考えに、サリーは概ね同意する。

「うーん、ほぼ表皮だけ繋げる感じになりますけど」

「それでいいわ」

「では、はじめますね」


 ストロベリーは、再び眼帯の身体の上で両手を開いて、治癒魔法を発動させる。ストロベリーの両手から青白い光が放たれて、眼帯の傷口が塞がっていく。5分ほどで治療は完了した。



 マリアたちの一行は街道を東へ向かっている。次の町までは、あと1時間ほどかかる距離だ。馬車の中では腹部に包帯を巻かれた眼帯が目と覚ましたていた。

「……ここは?」

「あ、起きた」

 眼帯が声の方に目を向けると、仲間と共に襲っていた馬車の御者をしていた女が座っている。

「貴様は! ……痛っ!」

 バーバラの隣に座っていたマリアが、眼帯をたしなめる。

「大人しく寝ていた方がいいわ。応急処置はしたけれど、起き上がれるような傷じゃない。もっとも、その足じゃ起き上がれはしないけど」

 眼帯はそう言われて足元を見ると、なるほど膝から下ががっちりと縛られている。

「手当てしてくれたのか」

「私たちの一行の中に、治癒魔法が使える僧侶がいたからね」


「俺の仲間はどうした?」

「逃げたわ」

「そうか、俺は捨てられたか……」

「あいつら、あんたが倒れた途端に尻尾を巻いて逃げて行ったのよ」

 バーバラが煽り気味に説明した。

「ちっ! ……まあ、そうだろうな。あの中でまともに剣を振るえるのは俺だけだ」


「ねえ、あなたウネンドリッヒの周辺で活動してる盗賊について知らない?」

「……」


 マリアは、ウネンドリッヒで盗賊に誘拐された人たちの事を案じていた。同じ街道で盗賊をしている者同士の横のつながりで、何か情報は得られないかと考えている。

「俺が何かを知っているとして、なんでお前らに教えなけりゃならんのだ?」

 眼帯がそう言うのも当然だろう。彼が何かを知っていたとしても、それを教えるメリットを提示する必要があるとマリアは考えた。

「そうね、このままこの先の町に着いたら、しかるべき場所に突き出して罰を受けてもらうことになるけれど……」

「見逃してくれるのか?」

「もっとも、その身体じゃどこにも行けないでしょう?」

「どうにかするさ」

「手持ちの路銀もないのに? また法を犯すのなら、今度は見過ごさないわよ」

「どうしろって言うんだよ」

「傷が癒えるまで、教会で保護してもらえるように手配するわ」

「そんな事が出来るのか?」

「さっき言った僧侶が王都の教会の司祭の家系でね。ちょっとしたお願いは聞いてもらえるわ」

「悪い話じゃないが……」


「今のアンタの身体じゃ、牢屋暮らしはキツかろうね」

 決断を渋る眼帯に、バーバラが追い打ちをかけた。

「分かったよ。話す話す」


「ありがとう」

 思わずお礼を言ったマリアだが、眼帯の情報は予想以上のものだった。

「さっきお前が言った西の盗賊は、今俺らアジトに居る。ウネンドリッヒでさらってきた連中も一緒だ」



ブックマーク、評価、感想等お待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ