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16.思わぬ再会・その2



「護衛? 何のことかしら?」

 王都から3日もかかるウネンドリッヒまで自分を追ってきていることを踏まえると、非公式の外遊をしていることはロベールにはバレているのだろう。だがあえてマリアはとぼけて見せる。

「姫さま、ちょっと……」


 サリーは、マリアの腕を取ってこの集団から引き離した。その上で、小声で耳打ちする。

「とぼけても無駄のようです。あのお連れの方々には、私たちの事は筒抜けでした」

「ええっ、そうなの? どこまで?」


 マリアがマルボークへの旅をするために、王国では各部署で準備に追われていた。準備に関わっている人数は多い。調べる気になれば調べられるかもしれない。

「ラファイエット家の坊ちゃんがどこまで聞かさられてるかは測りかねますが、恐らくは全部……。でもウネンドリッヒに着いてからのことはご存じないでしょう」

「そっか、それは彼らが移動中だものね」

「お連れの方たちは、私の実家のような立場の方なのでしょう。情報収集に特化した感じの」

「貴族に仕える家来って感じの?」

「はい」

「ともかく、戻って話してみるかぁ」


 マリアとサリーが皆のところに戻ると、バーバラがロベールの連れと話していた。

「じゃあ、あんたたち二人でご主人を守れるって自信があったわけ? その自信はどこから来るの?」

「まあ、王都に近いほど危険は少ないですし。姫さまの一行と合流するまでならって感じですよ」

 バーバラの問いにロベールの連れの男が答えた。そしてマリアが戻ってきてロベールに言う。

「ロベール、私がどこまで行くのか知ってて同行したいって言ってるのね?」

「うん。騎士団領の首都、マルボークだよね」

「そっか。お連れの方を紹介してくれない?」


 マリアにそう促されて、ロベールは二人をマリアの前に引き合わせて紹介した。

「この二人は、僕の実家の家宰のフランネル家の子息でね。姉のミーナと弟のジェットだよ」

「お初にお目にかかります、姫さま。ミーナ・フランネルです。ロベールさまの傅役を務めさせて頂いております」

 ミーナは、マリアに社交儀礼に則った礼をした。

「ロベールの傅役なのね。苦労してるでしょう?」

「ちょ……」

 マリアのロベールに対する評価が透けて見える会話に、ロベールはショックを受ける。

「いえ、ロベールさまはご自身の課題に真摯に取り組んでいらっしゃるので……」

 取り繕ったような返事だが、ロベールは少しほっとした。


「ジェット・フランネルです。はじめまして、姫さま」

 ジェットの自己紹介は、ミーナに比べてフランクだった。

「はじめまして、じゃないですよね。()()


 周りの者は「えっ?」と、少し驚く。半面、ジェットは苦笑いした。

「覚えられてたのですね」

「ええ。あの時は大変お世話になりました」


 ジェットは、マリアが在学していた公国の魔法学院の生徒だった。マリアやサリーの2年先輩で、マリアが校庭で足をくじいた時に、たまたま通りかかって助けたのがジェットだったという話だった。在学期間が被っていたのは1年だけで、マリアとジェットが会ったのはこの一度きりである。

「あの時の下級生が王国の姫さまだと知ったのはだいぶ後のことでした」


「へー、弟が魔法学院の出身ってことは、姉が剣士で弟が魔導士ってこと?」

 親密な空気におバーバラが水を差した。ミーナが剣士なのは、彼女が控えめな旅装に大きな剣を佩刀してることからも分かる。

「いや、魔法学院は卒業できたけど、成績は中の下ってところでね」

「あら、そうなんですね」

「でも、魔力は小さいながらも魔力のコントロールは並以上に出来てるってことで、騎士団で新設された部隊の訓練生に斡旋されたんだよ」

「何の部隊ですか?」

「魔法銃」

 ジェットは、指で拳銃の形をまねて撃つふりをする。


「銃……、ですか」

 銃は、王国の知識層では欠陥武器という認識だった。50年ほど前に銃身に仕込んだ火薬で弾丸を発射するマスケット銃(火縄銃)が発明されていたが、発射までの手順の煩雑さと、それに見合わない命中精度の低さから欠陥武器との烙印を押されていた。騎士団では、銃を集団戦術に組み込むことを想定・研究し、その過程で魔法銃が開発されていた。

「魔法銃というのは、魔法で制御することで、銃の弱点を克服した……というものなんですか?」

「そう。全部じゃないけどね」


 ここで、サリーとバーバラに同じ思いがよぎる。

(バーバラさん、彼の銃は大きな戦力になるのでは?)

(そうね……、でも今、彼は銃を所持してるの?)

(同行を許可するには、それを確認する必要がありますね)

 二人はこっそりと相談した。


「ジェットさん、その魔法銃というのを見せてもらってもいいですか?」

 サリーはストレートに聞いてみた。

「いいよ。大きな音がするから、ちょっと街はずれまで出ましょうか」


 マリアたちは街の外に出て、魔法銃のデモンストレーションを見ることとなった。




魔法銃の仕組みや、その活躍については前作「異世界のガンガールは引き金を引かない」をご覧になってください。

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