表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/38

五日後

 ◆ 五日後



わたしはいま、馬車に揺られている。


昨日、医師から「信じられない程の健康体だ」太鼓判を押され、日常生活どころか学校に行く許可が突然下りてしまった。

まだ疲れやすいから無理はしないようにと言う医師に、母は何度も頭を下げて見送り、嬉しそうにわたしのおでこにキスをした。

わたしはと言えば、友人達に会ったり学校の勉強についてけるかが不安で、また熱が出そうなくらい心臓がバクバクしていた。


学校に連絡をするわねとカレンダーを見ていた母が「あ」と小さな声を上げた。


「やだうっかり忘れていたわ、明日、学校は休校よエミリー」

「え? お休みなの?」

「そうなの、私ったらこんな大事なことを忘れてたなんて」


母は慌てたように口に手を当てて、侍女の名前を呼びながら部屋を出て行ってしまった。

カレンダーを確認すると“第二王子 慈善パーティ!!”と太字で書かれている。


慈善パーティ? ……ああ、思い出した。


我が国にはペルペトゥア教会というとても大きな教会がある。

分教会もたくさんあり、そこには孤児や恵まれない家庭の子供たちが勉強する施設が併設されている。


年に一度、貴族の屋敷で慈善パーティが行われることになっているのだけど、今年はその主催者に第二王子が手を上げたのだ。


わたしが通っている学校はリーリウム学院。

初等科から高等科までの所謂小中高一貫校で、貴族の公子公女は初等科から、王族は帝王学の基礎を学んだあと、中等科から入学してくる。現在わたしは高等科の1年生で、この国の第一王子と第二王子も同じ1年だ。


ということで、同じ学校でしかも第二王子が主催の慈善パーティ……。

わたし達は強制的出席しなくてはならず、授業は休まざるをえない。

よって、学校自体が休校になってしまったというわけだ。

ヘンリーは違う学校に通っているのでパーティには出られない、代表者として父親であるビリュザー伯爵が出席するそう。


あーもう、ここに来てはじめてたくさんの人に会うのがパーティだなんて……。

学校内なら何とかいけるかもと思ってたのに不安すぎるよ。

第二王子とはいえ、平日にパーティとか面倒なことしやがってと、つい悪態が口をつく。


えっと、第二王子の名前は……あ、ジークフリード・オルターね。

聞き覚えがある気はするけど、記憶はまだぼんやりとしている。

会えば一気に思い出せるかな?


揺れる馬車から窓の外を見ると、少し先に大きな門が見えた。

馬車窓のカーテンを閉め、深呼吸をする。


昨日、慈善パーティに出席することをロッティに連絡したら「うちの馬車で一緒に行こうよー」と返事が来た。

なので、わたしは今、フリューリング家に向かっている。

不安でいっぱいだけど、ロッティが一緒だというだけで心強い。

それにロッティと話すことによって、彼女との記憶を取り戻せるのも楽しみすぎる。


初等科から一緒なんだもん、小さい頃のロッティはきっと天使だよ、くぅー。

あとはちょっとだけ……実はパーティというものに正直興味がある。

記憶の中にある昨年までの慈善パーティは、両親と行っていたのでそんなに楽しくはなかったみたいだけど……ってあれ、かなり不安がなくなってきた。

なんだか大丈夫そうかも。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ