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FairyTame-妖精交換(仮)-  作者: 雲散無常
第九章:陰謀の糸
83/225

9-10


 陽光が眩しい午後。

 少し暑いとさえ感じる窓からの陽射しを受けながら、寄り道亭の離れの小屋で共にいるのはナリスだ。

 アッシュブロンドの髪を櫛で梳いている。いつも綺麗に整えているが、散髪をしているところを見たことがないと思い当たる。思えばシィーラの、つまりは自分の髪も適度に同じ長さに切り揃えられている気がした。ナリス自身が手入れをしているのだろうか。うっかり聞きそうになったが、師匠が言っていた言葉で思い留まった。

 曰く「いいか、坊主。女に髪のことを話すときは慎重にやるのじゃぞ?時間、場所、機嫌によって正解は異なる。良かれと思って言った言葉で雷が落ちることもある。下手に手を出すより、ただ褒めるだけにしておけ。まぁ、それですらなぜか頬をはたかれたことがあったがな。がっはっは!」だそうだ。要するに、不用意に話題に出さない方が安全だということだ。

 ナリスがわしを叩くことはあるまいが、不機嫌になる可能性はある。シィーラのようにあからさまに態度があれになるわけではないが、無言の非難のような圧を感じていたたまれない気分になったことがあったのでそれは避けたい。まだ分かりやすいシィーラの方がマシだと思ったものだ。

 その妖精ユムパはいまこの場にはいない。

 イビサ村から帰ってきたマワリと街へと繰り出しているからだ。久方ぶりの再開と料理屋での休みが重なって楽し気に出ていった。童と同じ感覚なのはいかがなものかと思わないでもないが、積極的に人間と交流することは推奨しているので悪くはないことだろう、多分。

 (丁度本人がいないので確認しておくが、シィーラは店で本当に大丈夫なのじゃな?)

 既に一巡りは働いているので事実なのだろうが、どうしても確かめておきたかったことだ。

 「え?あ、はい。そんなに心配なさらずとも、やっていることは単純作業ですから問題ないですよ?」

 ナリスが笑いながら言う。それほど不安げに見えたのだろうか。

 (ひき肉を作っているらしいが……店主の着眼点は素晴らしいと思う一方、いかんせんすぐに飽きそうに思ってな……)

 「私も初めはそう思ったんですけど、本人的にこだわりがすごいあるらしくて、いつも出来上がりを見て『まだまだピシャーンって行けるなぁ』とか『まぽーるが足りない』とかうなっています。何かの研究をしている感じですかね。意味はまったく分からないですけど」

 シィーラが任せられているのは硬い肉を叩き棒でミンチにするいわゆる雑用だ。料理人にとっては下ごしらえの重労働にも近いものがあり、あまりやりたがらない類の仕事なので軽い気持ちで振ったのかもしれない。

 この辺りの地域では肉団子は名物料理で大量にひき肉を作っておきたいらしく、その仕事を嫌な顔をせずにするシィーラは重宝されている。妙な縁もあったものだ。もともと、その料理屋はコニーの酒場の主人に無理やり斡旋してもらった場所だ。妖精の性格からしてまともな店では取り合ってもらえないと踏んで、かなり融通の利く店を紹介してもらった流れだ。それが結果的に良い形ではまったということになる。

 (問題がないのならそれでよい。それで、先のブリッツの情報とボーランのものを合わせ、改めて今後の方針を決めようと思う)

 「シィーラがいないですけど、いいのですか?いえ、むしろその方がいいと判断してってことですね……」

 (あやつにはまた後で要点だけの方がよかろう。どうせ、最初から聞いていても話半分が常じゃしな……)

 長話に耐性がないのは妖精の欠点だが、特性でもあるので何とも言えない。他種族を人間の論理のみで語るのは驕りだろう。

 「分かりました。ええと、ブリッツさんはそのヌーリャ、既に現地入りしていた第零の人に救出されて今はもう大丈夫なんですよね?あ、身体的という意味ではなく、厄介の種の方ということですが」

 (うむ。甥の件はボーランがどうやったのか、手を出させないようにヤーゼルの眼の方に何か仕掛けたようじゃ。おそらく脅迫の類かと推測しておるが、わしらは触れずともよかろう。おかげであのゴロツキ連中の動きが大分鈍っていることからみて、相当えげつない方法だったとしても、こちらには好都合じゃ)

 見聞屋のブリッツは現在、身体の方は完治しないまでも活動できるくらいには回復しており、ダーヴナーヴの件に関しての追加調査をしてもらっている。

 「その占い師の館の方ですが、ブリッツさんの情報を信じるなら、立ち退きを迫っているのはダリドアリ教団で間違いなさそうですね」

 (じゃが、穏健派の方だったのが良かったのか悪かったのか……裏派であれば大元を叩き潰すなりなんなり強行策もありじゃったが、街長の意向だとしたら更に面倒なことになりそうでな……)

 ダーブナーブの館というか、あの一帯の土地を欲しているのが、どうやらデルデ=ガルデ議会員の貴族の一人である何某だというとこまでブリッツは突き止めていた。具体的にそれが誰なのか追っているところで、ヤーゼルの眼の襲撃を受けたという話らしい。

 先日の経過報告で悔しそうにそう語っていた。調査がバレているので続行不可能だと言いに来たのかと思えばそうではなく、もう少し時間がかかるとやる気を見せていた。見聞屋の誇りにかけて最後まで調べると言い切ったので、信用してもいいだろう。身辺の問題が片付いて動きやすくなったのかもしれない。

 とはいえ、ヤーゼルの眼の連中から更に狙われる可能性はあるので、危険な状態に変わりはない。多少、気を付けてやった方がいい気はした。

 「穏健派の方だと無理やり接収とか無茶な手で来ないだろうから、こちらが付け入る隙が出てこないかもしれない、ということでしょうか?おまけにそれがピリエ街長本人の命令だと覆すのは大変ってことですよね?」

 (そうじゃな。正式な方法で止めるなら同等の議会員に渡りをつけて当人と交渉、というような流れになるが、それだけの影響力を持ってこちらに協力してくれる者がいるかどうか、そもそも、交渉の余地があるかどうか……なんとも険しい壁じゃ)

 「その協力してくれそうな左区の議員も、一応心当たりはあるようなことを話してましたけど……」

 (頼り切りなのがあれじゃが、この街の内政に関しては外のわしらにどうにかできる術はない。ブリッツ待ちになってしまうな。最悪、ダーヴナーヴ以外の情報源を探ることも念頭に動いた方がいいやもしれぬ)

 「でも、その場合ハカは大丈夫でしょうか?」

 ナリスはあの子供によほど情があるのか、憂い顔で懸念を口にする。

 (それとこれとは別だと思ってよいじゃろう。わしらが依頼を果たせずとも、それでハカを手放すというような非道な真似はすまい)

 「そうだとしても、結局住む場所を奪われたらハカにとっても辛い状況になるんではないでしょうか……」

 (それは……そうかもしれぬが)

 合理的に考えるともうハカのことを考慮に入れるべきではない。ただの他人だ。しかし、あらゆるものを割り切って考えられないのが人というものだ。そういう点においては、わしは師匠譲りでかなり冷淡に物事を切り捨てられるので、人情味のある者とは異なる。余計な荷物は持つべきではないと考えてしまう派だ。

 かといって、今は仲間であるナリスの意向を無視するわけにもいかなかった。

 それ以上あまり強くは言ってこないが、ナリスは明らかにハカのためにもダーヴナーヴの件はどうにかして欲しいと願っているのが見て取れる。ここは折れておくべきだろう。

 (できるだけ依頼はこなすよう務める。まだ切羽詰まっているわけでもないからな……)

 「ありがとうございます!それじゃ、とりあえずこの件は引き続きブリッツさんの情報待ちですね。次は……例のヌーリャの方についてはこのまま放置ですか?」

 (ボーランか。あやつはなぜかシィーラを毛嫌いしているようじゃから、合流して合同調査という線は絶対になさそうじゃ。優秀そうではあるが、あるいは単独行動の方が力を発揮するタイプかもしれぬし、放置というか現状のままで良いかと思う。何かあれば、わし自身は連絡を入れれば接触はできそうじゃしな)

 「どうしてシィーラは嫌われているんでしょうね……?でも、今の言い方だと居場所が分かっているのですか」

 (いや、知らぬが、少なくともこれまでとは違って顔は割れている。この街にいるのなら探せぬことはなかろう)

 あの妙な髪形のこともある。知っていれば見つけられるはずだ。つかんでいる情報も、ニジェ経由であらかた受け取っている。緊急の事態にならない限りは当面困ることはないと思われた。

 「なるほど。じゃあ、その調べにあった儀式とやらをこれからもっと深堀りするって感じですか?」

 ナリスが言っているのはボーランが探り当てたダリドアリ教団の儀式の一つについてだ。報告によれば、その儀式には特定の教団員のみが参加しており、参加者全員がどこか精神的な影響を受けている、はっきりと言えばある種の洗脳に近い刷り込みのようなものを施されているのではないか、という懸念が示されていた。

 例のニゲル草との関係を疑うと最も興味をひかれる儀式であり、ヤスネの両親の件もあって実際にわしもその裏を取りに行ったぐらいだ。

 そう、実は既にその真偽も確かめて来ていた。

 (その件なのじゃが、ほぼ全容は見えて来ておる。それで、ヤスネに伝えようとは思うが、オーリ経由の方がよかろうと思ってな。あまり楽しくない役目だが、今から行ってみるか?)

 少し繊細な問題を含むので、能天気な妖精がいない方がいいかもしれないと考えて提案した。




 「えっと、ハニマニの狂宴とは何ですか?」

 多少言葉を濁す意味で使った表現だったが、ナリスには伝わらなかった。

 当然と言えば当然か。ハニマニは歴史上の国家のひとつで諺にしかほぼ出てこない小国だ。遠回しな言い方は無駄だとあきらめて説明する。

 (まぁ、要するに今でいう乱交のことじゃな。ハニマニは最も欲望に忠実な国として知られており、夜な夜な人種、性別、身分、分け隔てなく交わっては享楽にふけっていたという快楽の園とも呼ばれおった)

 「ああ、なるほど……え、ということは、ニゲル草と混ざるものというのは――まさか、精液や愛液の類ということですか?」

 一瞬だけためらったが、ナリスははっきりとそれを口にした。思えば、ナリスの母親も花売りであった。実際の花と身体、どちらも意味する。その辺りの忌避感はあまりないのかもしれない。そこにすぐに思い当たる知性もなかなかのものだ。

 (可能性は高いと見ておる。実際、件の匂いを強く感じたのはそうした狂宴の場所が多かったように思う。全体ではなく一部でのみとはいえ、複数の場所で目撃した以上、ボーランが指摘した儀式の一つとして取り組んでいると思われる)

 「普段から身に着けている何かとして考えても……一応辻褄は合いますね」

 (うむ。身に着けているというよりは内包しておるということじゃが。それよりも、そうなると次の疑問が生まれると思う)

 「はい……ヤスネさんのことですよね?ご両親がいたときにおかしくなっていて、それが今解消されているということは……」

 深く考えるまでもなくそういうことだ。現時点で推測ではあるが、裏付けを取る必要がある。

 この仮説をオーリへと伝えるための道中、ナリスに説明したところだった。

 傍証が色々あって確信はしているが、関係者にしか分からぬものもあろう。そのためにオーリを訪ねた。

 最初は突拍子もない話を笑い飛ばそうとしたオーリだが、他にそのような兆候があった人間を知らないかと問うと、少しずつその表情が歪んでいった。

 「た、確かにヤスネの両親は仲睦まじい人たちではあったし、右区に移った人たちの中には助平親父や色気に溢れた未亡人とかがいたけど……」

 心当たりはあるようなので釘を刺しておく。

 「あの、初めからそういう疑いの目を向けてしまうと、何もかもそう見えてしまいますので、まずは否定の立場から思い出してみてください。つまり、そうじゃない部分を探すことにするんです。先入観……えっと、最初から決めつけて物事を見ると全部が怪しくなるので、そんははずはないという思いで考えると言いますか……」

 ナリスができるだけ簡単な言葉で伝えると、オーリはうなずいた。

 「そ、そうですよね。そう聞くとなんだかみんな怪しく思えてしまって……分かりました。デガの盾の情報部にこの仮説を話してみます。入信した人たちにそういう傾向があったのかどうか、確認してもらいます」

 組織内できちんと分担作業がなされているようだ。元々はこの街の議会を担っている者たちが多いことを思えば、それも当たり前の話ではある。他にも同様の人間がいると確認が取れれば確定的だ。あの儀式は信者を取り込むための外法とみていいだろう。

 「それがいいと思います。あの、それで、大丈夫ですか?」

 「え?あ、はい。僕は平気……です」

 問われて、オーリは改めてその事実に気づいたのだろう。顔をうつむかせ、その身体は小刻みに震えている。ヤスネの身に起こったことを改めて考えてしまったのだろう。三人家族のうち、男は一人で女が二人。親子であろうと性交渉はできる。仮説が正しいのなら、ヤスネは父親と身体を重ねておかしくなった可能性が高い。

 ヤスネを好いているであろうオーリにはショックであることは間違いない。貧しさで身売りなども行われる劣悪な環境で育っていたなら、未だそのようなことも多々あるご時世ではあるが、慎ましくも普通の生活を送っている者にとっては、なかなかに受け入れがたい事実だ。

 未だ仮説とはいえほぼ確信している身としては、同情を覚えずにはいられない。

 明らかに気落ちしているオーリを見送った後、ナリスも同様に憐憫の情を抱いているかと思いきや、なぜか好奇の目が垣間見えたので尋ねる。

 (ところで、どこか期待しているような面持なのは気のせいか?)

 「え?ああ、そう見えましたか?すみません、ちょっとロマンスというのを感じてまして。だって、幼馴染ですよ?この困難を乗り越えて結ばれたら、物凄く素敵じゃないですか」

 ナリスは意外に恋愛話に目がないようだった。年頃の娘なので普通に思えるが、ヨーグの件もあってまったく興味がないように思えたのだが、あるいは自分自身以外限定での話なのかもしれない。わりと淫靡で無体な話だと思うが、それよりも恋愛沙汰の方が気になっている辺り、やはり育ちの差があるのだろう。生まれ育った環境によって、考え方や常識というものは変わるものだ。

 それで言うと、シィーラの人間としての成長環境はどうなのだろうか。あまり良いものとは思えないので、すぐに思考は放棄する。

 師匠曰く「考えてもどうしようもないことは腐るほどあるもんじゃ。もしも考え始めた途端、そいつに気づいたならすぐに蹴り飛ばすがよい。後回しにしても結局巡ってくるものだけをその時に考えるのが利口というものじゃ」だったか。その教えは真理だと思う。

 (とりあえず、ニゲル草の普及についてはデガの盾経由で危険性が認知されればよかろう……そもそも、催眠誘導的に刷り込みを行なうような者がいなければいい話でもある)

 「そのニゲル草についてまだ一つ疑問があります。ヤスネさんはダリドアリ教に関して、懐疑的だったり肯定的だったりバラつきがありましたよね?ニゲル草の効果があった時となかった時と考えれば辻褄が合うように思えますけど、ご両親がいなくなった後も肯定的だった瞬間があったのはなぜですか?その際にはもう影響下になかったはずですよね?」

 (ああ、ダリドアリ『様』と呼ばせるようなことじゃな?あれは精神的な洗脳、刷り込みの方の結果であって、ニゲル草と体液関係が混じった際の精神干渉とは別だと考えてもよいと思う。言わば、その後の継続的な影響と言えばよいか。いずれそれも薄まるじゃろうから、自然に元に戻るじゃろう)

 「ええと、その時だけの場合とその後も続く場合があるということです?」

 (大雑把に言えばそういうことじゃな。精神的なものゆえ、意識が朦朧とした状態でなら受け入れられることと、素面では受け入れられないことというものはあろう。ハニマニの狂宴が不定期ながら、同じ参加者がいるとしたら、そうした催眠の掛け直しのような意味合いもあると見ておる。何度も刷り込むことによって、忌避感も薄れさせるといった手法じゃな)

 「なるほど……じゃあ、ヤスネさんのご両親は今も繰り返し、そうした刷り込みを受けている可能性があると……?」

 (うむ。深淵合宿なるものがその参加者を募ったものなのやもしれぬ)

 それらもデガの盾が調べている。推測を交えた情報も渡しているので活用してくれるだろう。

 「そうやって信者を増やしたのだとしたら、ちょっと許せませんよね。知らない間に騙されているようなものじゃないですか」

 (汚い手ではあるが、違法だと言えるかどうかは微妙じゃな。何より証明するのが難しい。外部からの圧力によって心変わりしたかどうかなど、他人の心の問題を論じるのは大賢者と言えど至難の業じゃよ)

 「騙されたと分かっていても、ですか?」

 納得がいかないという顔のナリスに補足する。

 (その騙されたかどうかの判断が難しいという意味じゃ。それに100歩譲って精神干渉があったとしても、本人が望まぬことは強制できないというのが魔法における絶対真理である。例えば、それが叶うなら誰かに死ねと刷り込めば自殺させることも可能じゃが、そこまでの強制力はないというのが大昔から現在に至るまでの主流じゃからな)

 「……つまり、最初から教団に入りたくない人に対して、無理やりそれを捻じ曲げてまで入団させることはできない、と。潜在的にそういう気持ちがないとあり得ないということですか」

 (ただし、ニゲル草の効能と催眠効果でその枷がどれだけ緩むかは不明ゆえ、後は魔法耐性やら意志力の強さやら、個々人での差の幅も相当大きい。一括りにできないこともまた面倒な要因じゃな)

 「ええと、なら、その催眠をしている人を特定すれば、少なくともその人のせいにできるというか、なんとかなりませんか?」

 (ふむ、その特定も困難じゃな。わしも何度か宴を視察したが、そういった催眠の場面になかなか出くわさない上に、毎回同じ人物がやっているかのも怪しい。ある種の規則に則って、練習を積んだものがやっている可能性もある)

 「え、そんな簡単にできるものなんですか?」

 (決してたやすくはないじゃろうが、ある程度確立された方式があってコツさえつかめば、ものにできる者はいるといったところか)

 「だとしたら、やっぱり主導している人たちがいますよね……あっ!それがもしかして、裏派の陰影のなんとかって集団なのでは?ニジェさんが教えてくれた……すみません。名前をど忘れしました……」

 (シャダク隊、じゃな。噂通りならば、確かにその線はある)

 ボーランの調べでは陰影部隊の中の独立した集団で、かなり自由且つ独自に動いているらしく、組織の中でも賛否両論があるならずものが集まっているとのことだ。

 「ああ、それです、それ。固有名詞が色々ありすぎてちょっと覚えきれていません」

 (一気に情報が増えたからな、仕方なかろう。そのシャダクに関してはわしもこれから追うつもりじゃった。裏派の中でも危険な集団を率いている男、そやつから分かることは多そうな気がしておる)

 「ダリドアリ教の裏派というのが、やっぱり一番怪しいですよね。その名の通り、裏で糸を引いているというか……」

 (そうじゃな。魔力狩り関係にも陰影部隊が絡んでいそうでもあるし、本格的に調べて行こうと思う。じゃが、お主らはあまり派手に動かんでよい。というより、危険ゆえそこには手を出さない方がよかろう。ボーランや見聞屋も慎重に事を運んでいるくらいじゃからな)

 こういう時に鳥であることは有利に働く。裏派を嗅ぎまわっていると噂されるとすぐに粛清されるという話はよく聞く。その威圧効果もあってのさばっている側面もあるのだろう。 だからこそ、これから重点的に裏派についてわしが洗い出していこうというのが現状だ。

 ダリドアリ教関連は正直避けていたのだが、もうそういう状況ではなくなっている。気乗りしない道を行かざるを得ないが、仕方がない。人生とは常にそういうものだ。

 これらの件を早く片付けて、妖精の杖に関してのみ調べたいものだと切に願う。

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