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FairyTame-妖精交換(仮)-  作者: 雲散無常
第六章:昇級
48/225

6-2


 とある酒場の奥まった部屋。

 喧騒も静まりつつある深夜に、見聞屋のヨーグがようやく現れた。

 「すみません、遅れました」 

 「おっ、やっと来たなー!」

 ほろ酔いのシィーラが顔を赤らめたまま、片手を上げる。つまり自分が酔っている姿だ。好んで見るものではない。最近、ロアーナの酒のみに付き合っているため、酔うということを覚えた妖精ユムパはその状態がそこそこお気に入りのようだった。

 「今夜はナリスさんもいらしたのですね。お待たせして申し訳ない」

 「いえ。お忙しいことは聞いていましたので」

 「はい、実は今もどうにか抜け出してる最中でして……あ、お水頂いても?」

 「ペポがあります。まだ誰も口をつけていませんのでどうぞ」

 「それは有難い、遠慮なく失礼……」

 喉が渇いていたのか、ヨーグは一気に飲み干して満足そうに息を吐いた。今夜、ここで会合を持つことを指定してきたのはヨーグの方だ。主催者が遅れてくるのは非常識だが、色々と動き回ってくれていたこともあって、責める気はない。

 (それで、呼び出したってことは何か掴んだのじゃろう?)

 こちらも情報に飢えていた。一刻も早く知りたいところだ。本来ならば、見習い騎士というのは宿舎住まいを強制させられて夜の行動は禁じられている。門限があるからだ。しかし、それだけは譲れないと踏み止まって、どうにか今の宿屋から通うことを了承させた。訓練所上がりは下級騎士が妥当な階級のはずなので、そこは無理を通せたという経緯がある。

 逆説的に、騎士団側も思ったよりも強硬姿勢は取ってこなかったということで、何か裏があることを匂わせる。その辺りも、ヨーグには探ってもらっていた。

 「まず、今回の入団申請、ヤヤーク所長は通例通り下級騎士として通してます。なので、横やりを入れたのは別の人物だと言うことは確実です」

 所長の嫌がらせの線は消えたようだ。脅しはちゃんと効いていて、ヤヤークは約束を果たしたということか。

 (横やりと言うが、仮にも訓練所所長推薦での入団者じゃぞ。その階級を無理やり下げるような力がある者となれば、かなりの大物な気がするが?)

 「ええ……完全には絞り込めてはいませんが、おそらくはシザレッド第一大隊長絡みかと思われます。シィーラさんと接点がある正規の騎士団員は、あまり多くないでしょうし……」

 お察しの通りといった雰囲気で言われる。確かに、心当たりはそのくらいにしかない。ただ、シザレッド自身は潔い性格に思えたので、このような姑息な手を使いそうにない印象だ。もちろん誰もが裏の顔を持っているものではあるので、騙されている可能性は残るが。

 少し歯切れが悪いのは、情報の不確かさを申し訳なく思っているからだろうか。ヨーグは訓練所を専門にした見聞屋で、正規の騎士団側についてはあまり得意ではないことを承知で使っているため、その曖昧さを責めるつもりは毛頭ない。 

 「中でも可能性が高いのは、副官だったエメ第二中隊隊長の方です。彼については色々と黒い噂もありまして、要注意人物だと最近知りました。正規騎士団員の方の情報更新が遅れていまして、今更のことですみません」

 エメというのは、シザレッドへの一撃後にこちらを呼び出したあの男だ。結局、妙な質問だけをして立ち去ったが、思い返せばあのときもこちらを試すような態度が垣間見えていた。怪しいと言えば怪しい。シザレッドよりも納得感がある。

 (……そのエメと言う男について、もう少し情報が欲しい。手に入れられそうか?)

 ほろ酔いで使い物にならないシィーラではなく、ナリスを通じて尋ねると、ヨーグは首を振った。

 「残念ながら、騎士団関係については私はこれ以上お役に立てそうにありません。ですが、騎士団員の中に見聞屋がいつも情報源として使っている人物がいますので、彼を紹介することはできます」

 つまり、以降はその男を使えと言うことか。

 (それだけ信用できるということでよいのか?) 

 「信用はできます。対価が用意できる限りは、ですが……」

 「対価というのは?その言い方だと、お金ではなさそうですが?」

 「はい。その男の名はネリオス・ポーデ・ダンシャン。第二中隊、第7補給部隊隊長で色々と能力は高いのですが、変態です」

 「え?何と?」

 ナリスが訊き返す。当然の反応だろう。淀みなく妙な単語が出てきていた。

 「変態です。少なくとも、騎士団内では知らない者はいない変わり者で、狂った美学の変態などと呼ばれています」

 大真面目にヨーグが言い切った。新たに出てきた二つ名も不穏だった。

 (その変態とやらを信用しろと?)

 「変人ではありますが有用な男です。そして情報の対価ですが、彼は必ず「美しいもの」を要求してきます。具体的な説明はできません、そうとしか言わないので。ただ、彼は独特の美学を持っていて、気に入られれば心強い協力者になってくれるでしょう」

 「……ちなみに、どういったものがいいのですか?」

 「それについては助言できません。以前は傾向をまとめてある程度の方向性を伝えていましたが、ネリオスの感覚は気まぐれで独特すぎ、まったく役立たないことが分かりましたので、その点に関しては一切憶測を言わないことに決まっています」

 「下手に入れ知恵をされない方がいいと?」

 「はい。何度かお薦めの品を見繕ったところ、背後にいる第三者の影が透けて見えて醜いと罵倒され、袋叩きにあって追い返される依頼人も数人いました。以降、禁止になった次第です」

 とんでもなく面倒な人物像しか想像できない。しかし、それでも情報源として紹介してくるということは、やはり能力的にはずば抜けているということだろう。

 (とりあえず、美しいと思うものを持ってそやつを訪ねるしかないということか……分かった。その件はもういいじゃろう。昇級制度について、もう少し詳しく知っていることを聞いてくれ)

 別の話題に切り替えようとしたのだが、すぐに断られた。

 「いえ、その辺りについてもネリオスの方に依頼してください。騎士団内部の情報は、残念ながら私では役に立てそうにありません。更新速度がどうしても遅くなってしまうので……申し訳ありません」

 ヨーグはもともとロハンザ傭兵訓練所が専門の見聞屋だ。無理を言っているのはこちらだろう。

 (分かった。ならば、後はあのジェイクという男のことだけじゃな)

 査問会にまで顔を出してきた謎の人物。強化遠征の訓練生の選出にも関わっていたとヨーグは言っていた。危険人物だと見聞屋ギルドも認めているあの細目の男について、未だに分かっていることは少ない。ヤヤークからも情報を引き出そうとしたが、たいしたことは分からなかったのだ。

 「その件は引き続き調べていますが、現在までに判明していることはお伝えできます」

 ヨーグが語ったところによると、ジェイクと言う名は偽名のようだ。年齢出身は不明だが、少なくとも名の知れた国にいた記録はない。ただし、裏の世界では度々顔を出したことがある要注意人物で、幾つかの事件に関与した疑いがある。そのいずれも特殊な魔道具や呪具が関係したもので、ジェイクはそれらを扱う死の商人だと噂されていた。

 今回の件でも呪具が使われたことから、その話には信ぴょう性があった。だが、ヨーグはそこは否定した。代わりに、例の魔眼――遠見の魔眼と言うらしい――の初めの一つ、複製元をもたらしたのがジェイクだと疑っているようだった。

 その手土産を持ってロハンザ傭兵騎士団とつなぎをつけ、他の魔道具などを売り込む足掛かりにしたという見立てだ。しかしその場合、訓練所のヤヤークと関係することはないはずで矛盾が生じる。その点を不審に思っていた見聞屋ギルドが更に探りを入れていたところ、今回の相貌の実による複製と言う情報が出て来て、一気につながったという。魔眼を取り扱っていただけあって、ジェイクは魔眼そのものにも詳しい。だからこそ、試用する被検体の見定めも行っており、訓練生の中で適合しそうな者を探していたのだ。

 (じゃが、それだと魔眼運用そのものがまだ試験段階だということになるのではないか?いや、そうか……ある程度既に実用化されているという話自体が嘘だったいうことなのか?)

 アルバたちは魔眼の外れを引かされたと思っていたが、それは推測に過ぎない。あの偵察任務自体が、実は訓練生も含めた魔眼実験だった可能性が出てきた。

 「正直、そこに関してはまだ確信は持てていません。ただ、遠見の魔眼に関しては実戦投入されているのかどうか判断がつきません。少なくとも、公にそのような話はありませんので、既に実用段階に入っているとしてもかなり秘密裏に動いていると思われます」

 今回の騎士団入団の件でも、魔眼持ちのアルバだけがまったく別待遇の対応をされていた。魔眼を使用できる貴重な人材だから当然だと思っていたが、予想以上にその価値は高い可能性がある。あの偵察任務で他の魔眼持ちをわしは実際に見てはいない。やはり、既に実用されているというのが嘘で、訓練生を使った実験だったのだろうか。

 いや、それにしては移植自体がスムーズに行われたことや、アルバたちは他の魔眼持ちを見ていること、その効果や運用についての知識が与えられたことを考えると、少なくとも初めての実験ということはありえない。ならば、ある程度実用はされていると考える方が自然だ。その上で、アルバたちは別の実験で使われたと考えるのが妥当か。

 少なくとも、強化遠征が実験の場であったことは間違いない。そして、査問会でのシィーラへの質問やジェイクの反応試験のようなやり方、初めから班長として指名されたことを含めて、すべて計画されていたことは想像に難くない。そうなってくると、アルバが少し心配になってくる。

 彼らはアルバを何らかの実験の成功例として見て、今後も何かに使うはずだ。ペンターズに伝えるべきだが、既に騎士団のアルバと訓練生とでは立場が違い過ぎて何もできそうにない。他人事ではあるが、厄介なことだ。

 とにかく、ジェイクが危険人物であることの裏付けは取れた。更に言えば、その背後には裏の世界では有名な闇の組織がいる可能性が高いとのことだった。

 (闇の組織……その名を知る者のみが闇に抱かれる、という例のアレか?)

 「はい。組織名を知っているのは関係者のみ、という噂の文言ですね。正直、上層部はその名を知っているようですが、絶対に口に出しませんし、認めもしません。でも、それって逆説的に闇の組織の存在を証明してしまっているんですよね……案件ごとに関係性がまったく変わってくるので、今回の件に関与はしていないのだと思いますが……おそらく、そこは掘っても多分意味はないかと思われます」

 闇の組織とは非合法なギルドのようなものだ。とはいえ、横のつながりがあるわけではない。ただ、大昔からまことしやかにささやかれている犯罪集団で、大事件の裏には常に見え隠れしているという筋金入りの裏組織だ。完全な秘密主義で多少なりとも関わっているであろう者は黙秘し、何も知らない一般人は御伽噺だと信用しない、そんな大陸でも有名な謎の一つだ。

 実は師匠が何度か関わっていて、その存在があることはわしも知っているが、全体像やその思想、目的などはやはり分かっていない。「あれには関わるでない、想像以上に深い沼じゃ。もはや個々人でどうこうできるものではないしの」と言うのが師匠の弁だった。

 ジェイクがその関係者であるなら、ヤヤークがその影に怯えていたのも納得が行くし、こちらが脅してもたいした情報を吐かなかったことにも説明がつく。わずかな情報でも漏らせば殺されるのは確定であるし、逆に聞いていたらこちらも狙われることになる。秘密を守るのに一番いい手段とは、それを知る者を消し去ることだ。それを徹底的にやってきたからこそ、闇の組織はこれだけ畏怖されているのだ。

 見聞屋がその関係者のジェイクを探るのは危険なのではないかと思うが、闇の組織そのものを調べているわけではないので、線引きを間違えなければどうにかなるのだろう。それにしても、背後にあの闇の組織とは思いの外大物なのかもしれない。ヤヤーク所長がシィーラの功績を正当に評価しなかったのも、あの男の指示だった可能性もある。強化遠征時、つまりは魔眼の実験中に適切に管理運用する誰かを見極めていて、シィーラが見染められたという推測だ。

 騎士団側から見繕えばいいような気もするが、訓練生を使っていたことから、正規の騎士団員では都合が悪かったのだろう。そう考えると、ますますアルバの身の上が危険な状態だと思えてくる。自身で選んだ道ゆえ干渉する気はないが、心の隅に留めておくことにする。

 (ともあれ、ルスフェの畑荒らしだと思って気にしない方がよさそうじゃな……)

 「はい。いい気分はしないでしょうが、あの男に個人的に関わるのは止めた方がいいでしょう」

 ヨーグは深くうなずいたが、代弁したナリスはよく分からないといった表情をしていた。比喩が分からなかったのだろう、ルスフェは猪の魔物で極まれに人里の畑を荒らしてゆく。ただの猪ではないゆえ、下手に手出しして余計な被害を増やさない方が賢明で、運が悪かったと忘れてしまう方がよいという意味だ。

 (ならば、最後に図書館について知っている情報を教えてくれぬか?)

 ロハンザ傭兵騎士団に入団したのは、妖精ユムパについて図書館で調べるためだ。騎士団員でないと入れないという図書館のために、こんな手間暇をかけているのである。にも拘らず、融通の利かない軍曹の小隊に配属されたために満足に自由な時間が持てていない。本来なら宿舎住まいで夜の間も監禁されているような身分だ。自ら調べるということすら難しい。

 だが、ヨーグはここでも首を振った。

 「申し訳ありませんが、騎士団内部のことですのでここでいたずらに不確かな情報を並べるのもよろしくないかと……その点も、ネリオスならばしっかりと答えられると思いますので……」

 見聞屋としていい加減な情報は渡したくないという高い意識が伝わってくるので、深追いはあまりしない方がいいだろう。こちらとしては古い情報であれ助かるのだが、ここはヨーグに合わせておく。

 (了解した。随分とその男を買っているのじゃな……そういえば、そやつが今回従軍しておらぬのはなぜじゃ?どうでもいい役職であるとか?)

 「いえ。彼は肩書以上の力を持っていまして、気に入らない戦争には参加しないという話です」

 (そんな個人の要望が通るものなのか?いや、それほどの我を通せる人脈や立場を持っているということか……)

 「はい。ですから、頑張って気に入られることをお薦めします」

 逆に言えば、その男の信用を得られないと今後がやりにくくなることは確実だということだ。変態の歓心を買う術はあいにくと知らない。頭が痛いことになりそうだった。

 


 まだ仕事があるという本当に忙しそうなヨーグと別れ、回水亭へと戻る。

 シィーラは既に半ば酔い潰れており、部屋に入るなりベッドに倒れ込んだ。

 「ぐへへー……卵のお尻をざしゅざしゅしちゃうぞー……」

 自分の顔で訳の分からない寝言を言うのは止めて欲しい。

 (やれやれ……酒の味を覚えたのはあまりよろしくなかったかもしれんな)

 「色々頑張ってたようですし、そのくらいは多めに見てもいいのでは?」

 我が子を見るような微笑みを浮かべて、ナリスはその身体に毛布をかける。

 (まだまだ頑張ってもらわねば困るんじゃがな)

 「そう言えば、町で妖精についていろいろ聞いてみたんですが、あまりたいした情報はありませんでした」

 (人と交流を持っていた時代から大分経っているからな……というか、あまり妖精妖精言っていると変人に思われるゆえ、気を付けるがよい。昨今では話題になるのも珍しいじゃろう)

 「はい。そこは変に怪しまれないよう、妖精劇の暁のデランベルグ好きだということにしています」

 それは数少ない妖精の御伽噺を題材にした演劇だ。妖精王と共闘した剣王デランベルクが、大魔族ジェキリを倒す英雄物語である。いつだったか、その話をナリスに教えていたことを思い出す。

 話の糸口としてはなかなかうまい切り口だ。

 (ふむ……妖精王についてはシィーラ自身もいくつか口にはしていたがすべて要領を得ないものじゃったな……)

 「固有の名前もないんですよね?単に妖精王という肩書みたないものしか聞いたことがないんですが」

 (そうじゃな。妖精が不死であるならば、妖精王は継承、襲名などもせずにずっと妖精王として存在しているゆえ、固有名が必要ないのやもしれぬ) 

 「途方もない長生きですね……あれ、でもシィーラにはちゃんと名前があって……けれど、記憶のリセットでやり直すとすべて忘れるって話じゃありませんでしたか?」

 ナリスは混乱したように首を傾げた。妖精の死、生まれ直しに関しての話を思い出したのだろう。

 (その辺は推測でしかないが、妖精が一からやり直す場合も記憶は消去されるのではなく、封印されて思い出せないというような状態に近いのじゃろう。名前などはゆえにこそ、思い出そうとすれば思い出せる範囲にあると考えておる、実際、シィーラの後ろにはいくつか長い名前が続く。わしが覚えきれないほどにな)

 「ゼーちゃんでも、ですか?」

 (正確には覚えてもあまり意味がないからじゃな。妖精の言語はわしら人間のそれとはまったく違い、発音できぬ言葉が多数ある。おそらく名前もそれに該当すると思っておるゆえ、人間の舌で発声した名にはそれほど重きを置いておらぬ)

 「なるほど……」

 (それはそれとして、おぬし、これからもわしらに同行する意思は固いのか?無理をしてまでこちらに付き合う必要はもうないぞ?シベンマでは不幸もあって、生計も立たぬであろうから連れ回してきたが、今ならばここでそれなりに収入もでき、自由に生きていけるだけの基盤はできたじゃろう)

 行きがかり上、放置できないことが前提で旅をしてきたが、その条件は既に終えている。強化遠征で離れたことで少し思うところもあり、もう一度本人の意思を確認しておきたかった。

 「それは……わたしがもう必要ないということですか?」

 ナリスがショックを受けたように辛そうな表情をする。言い方が悪かったのだろうか。慌てて弁明する。

 (そういうことではない。おぬしにはおぬしの人生があり、それを尊重したいという意味じゃ。わしらに多少なりとも恩義を感じてここまで共に来たのじゃろうが、既にその礼は受け取ったと考える。ゆえに、これからもそうする必要はないということを知っておいてもらいたいだけじゃ。現状、おぬしの生活はすべてシィーラやわしのために費やされておる。そのことに不満がないのかと思ってだな……)

 「わたしが受けた恩はまだまだ返し切れていません。邪魔ではないというのなら、これからもずっとお側に置いて欲しいと思っています」

 真剣な瞳でそう返されては、これ以上自由に生きてもよいことを力説しても微妙なことになりそうだ。ナリスはまだ、真の意味で自分の考えというものを表明できない状態なのかもしれない。

 (そうか。おぬしがそう願ってくれるのならこちらも有難い。わしの言葉が届くおぬしがいてくれることは、正直助かるのでな)

 「はい!必ずお力になります!」

 嬉しそうに笑顔を向けられて、苦笑するしかない。まだ余計なお世話だったようだ。

 (騎士団に所属する以上、またしばらく留守番のようなことをさせてしまうが、よろしく頼む)

 「大丈夫です、お任せください」

 「うにゃ?おなら、くだしゃい……」

 呼応するように間抜けな寝言をいうシィーラに、わしらは揃って笑うしかなかった。

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