5-8
真っ先に反応したのはデデだった。
その巨体が素早くレキを突き飛ばした。背負っていたオキも同時に地面に落とす。
竹槍の集中砲火から逃すためだ。
自身は戦斧を振り回し、竹槍を叩き落そうと大振りで円を描く。
続いたのはロアーナだ。アルバを大木の足元に押し込めると、剣を振るって上空からの攻撃をいなす。
シィーラもまた魔剣を頭上へ向かって薙いだ。剣気が飛び、竹槍を真っ二つにするが、その数は減らない。竹槍の罠は相当数あるようだ。
(敵はまたかかしを使って魔力の痕跡でおびき出したのじゃ。二度も引っかかるとは不覚。この場に罠があるということはすぐにまた例の魔法が飛んでくる。その一撃を警戒しつつどうにか避け、相手の居場所を見定める必要がある。それほど距離は離れていないはずじゃ)
「さっきと同じってことだねー?」
素早く指示したつもりだが、はっとする。確かにそうだ。同じ対処法では芸がない。ここまでは完全に相手に先を行かれている。魔獣使いという特性をもっと考慮すべきだ。魔獣を目として使っているなら、その間本人は動けないはずだ。二つの視界の情報を処理できるように人間の脳はできていない。鳥の視点の世界を知って、それは実感できる。猿を使っている点でもそれは明らかだ。鳥の方が遠くまで見通せるように思えるが、人間の感覚でそれを扱うのは厳しい。半妖精のような自分ですらギリギリなのだ。落し所としてのシーミャ系での運用だったのだろう。
ならば、魔獣使いはどこにいるのか。使役する魔獣との距離がそれほど離れていては通信が不可能なことを考えると、比較的近い場所で且つ安全な場所を確保しているはずだ。近くであれば分かりそうなものだが、あくまで場所の特定をしているだけで攻撃魔法そのものには関わっていないとすれば、ほぼ閉じた状態で実行することはできるだろう。
完全な役割分担がなされているのなら、そもそもの想定が違っていたということだ。魔獣や動物を意のままに扱えるのならば、ある程度の意思伝達の方法はいくらでもやりようがある。魔獣使い本人が、攻撃魔法担当と一緒にいる必然性はないのではないか。いや、範囲攻撃ならばまだしも、正確に心臓を射抜くような狙いを定めるのに、簡易な伝達ではやはり無理か。
推測が錯綜する。最適解が見つからない。
要素が足りていない可能性は高い。それでも道筋を見つけなければならない。このまま受け身でいては全滅もありうる。シーミャもどきから魔獣使いがいることは事実であり、遠距離魔法も事実、それが二発ほぼ同時に撃たれたことも事実。そこから敵側が二組いる想定だが、ここに関してはどうか。完全な予測に過ぎない。魔獣使いが二人いるというのはやはり無理があるのではないか。そうであれば、監視の目は使いまわしているということになる。
魔獣使いが二人いるよりも説得力はある。その目を共有できる方法があるか。ないとは言い切れない。世の中には知らない魔法も当然あるだろう。可能か不可能かで言えば、ありうるという回答しかない。魔法に関しては同じ魔法を使える者がいるのは十分考えられる。つまり、二組いる前提自体は間違いではなく、その構成が違うだけだ。
次に、時間差の問題がある。同じ位置情報を共有したとして、その対象を同時に撃つ必要性はあるか。確実性を上げるため、なくはない。着弾のズレは発動位置の違い、距離や準備その他で違いが生じたということか。辻褄は合うが、本当にそうだろうか。
何かがしっくりこない。あの魔法に撃たれたとき、その衝撃は本当に同じものだったか。すぐに追跡することに気を取られて、何かを見失っていなかったか。反芻し、二発の魔法は違うものだという感触を得る。先入観で同じだと勘違いしただけだ。
そうなると、その違いはどこから生じたのか。思えば、敵側は常にこちらの位置をだいたい予測していたように思う。魔力感知に対応するあの仕掛けも、こちらがそこを見つけることを前提に設置している。竹槍の罠も短時間で用意するのは難しい。すべて用意周到に仕組まれていたはずだ。
森には無数の虫、動物、魔物がいる。魔獣使いが、それらの視覚をどれだけ覗けるかにもよるが、想像以上にその種類と範囲が広ければどうか。あるいは、先に特定の領域をある種の結界内のように自身の能力を増幅させる特殊範囲として扱えれば、その範囲そのものが罠になり得る。その範囲内限定であれば、監視の目がより広くなり、こちらの動きを簡単に把握できるとしたらどうか。
馬鹿げた妄想かもしれないが、常識の範疇を超えた奇襲を受けている以上、既存の思考は捨ててもいいだろう。妖精魔法を知っている身だ。不可思議な何かは存在する。今は相手を過大評価してもいいときだ。思考が素早く巡る。可能性をつなげて、想定解を紐解く。
まず魔獣使いを潰す。これは絶対だ。広範囲の目を持っているだろうが、その情報量を処理するためには移動しながらというのは考えにくい。一か所に留まって活動しているはずだ。次にその目を何らかの方法で共有する魔法士、その魔力供給役がいる。こちらはおそらく遠距離にいるので、目を潰せば脅威となり得ない。問題なのは、もう一組の方だ。あの魔法が遠距離ではなかった場合、完全に隠密に長けた何者かが近くにいた可能性がある。
そして、その何者かは監視の目も共有している。そんなことが在り得るのか、一体どうやっているのかは分からない。だが、その想定であれば見えてくるものがある。その者は常にこちらの近くにいて、確実に自身に疑いが向かないときのみに動くということだ。たとえこちらを殺す機会があろうとも、単独では動かない。
そう考えると、ナルファが遠隔魔法でやられた後、オキやドグオンについてはそちらの魔法でやられた可能性もある。今この時もどこかに身を潜めてこちらを窺っている可能性はある。監視の目を利用しつつ、自身でも適当な距離で張り付いているということだ。
熟練した者が気配を消すことだけに特化すれば、こちらの目を欺くこともできるだろう。事実、シィーラとわしなら可能だ。他の者ができないという理屈は通らない。魔獣使いを狙いつつ、この潜む者の方をこそ最優先で消すべきだ。いや、逆だ。既にこちらは相手の間合いに絡め取られている。誘いこんでからの竹槍の罠。上方からの攻撃。意識を逸らすのが常套手段。ならば、足元が死角だ。
もう一組は単独犯。遊撃役として潜む者。その想定で周囲を見る。必ず近くにいる。今もじっくりとこちらを窺っているはずだ。
魔力探知ではなく、妖精として、鳥としての能力を研ぎ澄ます。人間の精神では負荷が強いが、それを越えねば突破口はない。視覚よりも聴覚。音の違和感を拾う。人の動きは天然のものではない。自然のそれとは明確に分けられる。隠密行動において、とりわけ特徴的になるのが呼吸だ。慎重になればなるほど、ゆっくりと深く長くなる。同じだけ無呼吸の時間も取れる。その周期が鍵だ。
規則的に繰り返されるその息遣いを探す。方角を絞る。視界をそちらに集中する。潜むに十分な場所を探る。かつてないほどの集中力で、条件に適したものを拾い上げ、捨て、また見つけ出していく。その繰り返しを高回転で廻した結果。
巨木の一つに洞を見つける。足元近くの茂みで隠れているが、人間が一人中に入れるほどの大きさはある。不自然な音が中に響いている。人間の呼吸音だ。
(シィーラ、剣気を今から言う方角へ飛ばせ。それなりに力を込めろ。ただし、予備動作はすべて上方への対処のつもりで行え。分かるな?)
「フェイクってやつだね。了解ー」
シィーラはすぐさまこちらの意図を悟ってくれた。魔剣に魔力を送り始める。あるいは先に言った敵の一撃へのカウンターと思っているかもしれない。説明している時間はない。
(南西じゃ!思い切り振れ)
「とりゃりゃー!」
上体傾斜を上から横に切り替えて、シィーラは魔剣を薙ぎ払う。洞の中の呼吸音が乱れた。完全に騙せたようだ。自身が攻撃を受けることを悟ったのは流石だが、遅すぎた。洞から飛び出ようとしたその人物は巨木ごと一閃された。その絶対的に閉じた空間が仇になった。
「おろ?あんなとこにいたのかー」
「何?って、敵か!?いや、何だ、あの仮面?」
シィーラの言葉に反応したロアーナが振り返り、斬られた人物を見て声を上げた。
洞から逃げ出そうとした男は、奇妙な木彫りの仮面をかぶっていた。能面の不気味なものだ。奇妙なのは目の部分はくり抜かれていないことだった。何も見えない構造だ。視界を完全に他の何かで補えたということだろうか。
「うにゅー?変なお面ー」
無造作に近づいて、その仮面を剥がすシィーラ。完全に真っ二つに切り離された肉体を見れば瀕死なことは分かるが、不用心すぎる。
(馬鹿者!まだ最後の抵抗があるやもしれぬ。迂闊に近づくな!)
「大丈夫でしょー。でも、この人の担当は何ー?」
仮面の下には整った顔立ちの若そうな青年の顔があった。口元からは血を吐いた跡があり、呼吸していないことから既に死んでいることが分かった。一撃で沈められたようだ。
(そやつは遊撃役じゃと思われる。後でからくりは話すが、今は魔獣使いを探すことの方が先決じゃ。そう遠くない場所にいるはず、次の遠距離魔法を――)
その時、悲鳴が上がった。
「いやぁぁぁーーー!!!デデっ!?」
レキの声だ。そちらに振り返る。無口な大男がレキに覆いかぶさるような形でゆっくりと地面に倒れ込んだ。その背中、心臓の辺りに穿たれた小さい穴を確認する。遠隔魔法に狙われたことは明白だ。安否より、その射角から敵の位置を推測する。
(東南じゃ!シィーラ!射手はその方角におる!それに、デデの位置、いやレキの居場所が見える位置にいるシーミャ系をジャコブに探させるがよい。次の標的を絞らせるな!)
状況が一気に動いた。
そこで脳裏にジリジリと違和感が走る。今の指示では何かが違うという本能的な気づきだ。
シィーラが代弁しようとするのを制して、もう一度良くデデを見る。体勢や位置からして明らかにレキをかばっている。これはおかしい。
なぜ、遠距離魔法を察知できたのか。それは不可能なはずだ。ならば、あの攻撃は遠距離魔法ではない。デデにだけその攻撃が感知できたということだ。
先程の推論とつながる。この場所での罠、待ち伏せ。実際にいた遊撃役の敵。閃く。
(すぐに魔防壁を張るようアルバとレキに言え!お主も魔法に備えよ!連続して何か来るぞ!)
アルバとロアーナは近くにいる。レキとシィーラが自分自身で、後はジャコブだ。わしはジャコブに向かって飛ぶ。
「魔防壁?魔法障壁?どっちでもいいから今すぐ張ってーー!!」
シィーラが叫ぶのと同時に、足元の大地から何かが突き上げられた。土槍という魔法だ。範囲指定なのか、無差別に辺り一帯からタケノコのように物凄い勢いで生えてくる。実際、それは相手を下から串刺しにする攻撃魔法だ。
ジャコブまでまだ距離があるため、魔防壁が間に合わない。だが、野生の勘なのかジャコブはすぐさま手近な木にするすると昇ってその一斉攻撃を避けた。アルバは魔法が間に合って、ロアーナごとその障壁の中で土槍を防いでいる。シィーラもまた魔剣で器用に土槍をしのいでいた。魔力には機敏に反応するため、多少粗削りでも半自動的に排除できる優位性もある。
ただ、レキのみが間に合わなかった。デデの献身的な身代わりに動揺していたためか、魔防壁を出すのが遅れていた。土槍の一本が決定的な一撃を彼女に与えていた。
必死に逸らせようととした体勢の胸に容赦なくそれは突き刺さっていた。無念そうに顔を歪めて痛みに耐えている。声も出せない状態だ。
残念ながら、おそらくは助かるまい。同情はするも、今してやれることはなかった。
全員の状況を把握し、次の最適な行動を計算する。これは遠距離魔法ではない。明らかにこの場所に対しての範囲魔法であり、その発動には近くにいる必要がある。デデが気づいてレキをかばったのも、おそらく敵を視認したからだ。デデから見える範囲か、気づける距離での攻撃だったはずだ。
つまり、絶対に近くに敵はいる。この瞬間のためにずっと潜んでいたのだ。竹槍の罠で足止めし、遠距離魔法を撃ったと思わせてこちらを油断させ、その気の緩んだ瞬間に範囲魔法で一網打尽にする。用意周到で巧妙な攻撃だ。つくづく、この敵には手を焼かされる。
ジャコブへの援護をやめ、索敵に切り替える。相手はこちらが防御するとは思っていない。この範囲魔法にすべてを賭けていたはずで、今ならば魔力探知で位置を割り出せる。残り少ない魔力だが、まだ動けなくなるほどではない。瞬時に範囲魔法を使っている三つの反応を見つける。
(シィーラ!こっちだ!)
土槍と格闘している妖精の横を飛び過ごしながら、全速力でその場所へ向かう。
範囲魔法のため、飛行経路にも土槍が飛び出てくるが、ある程度の高度を保てば十分に反応できる。敵側の魔法はまだ止まらない。ここで決着をつけるべく、連発しているのだろう。下方からの攻撃を避けながら、やがてその三人組を見つけた。
魔法士とその魔力供給役の担当はすぐに分かった。先ほど見た奇妙な仮面をつけている者が一人いたのだ。迷わずそこへ加速して突っ込む。魔法に集中しているのか、気づかれる様子はなかった。
「はぐっ!!?」
その腹部に直撃した後、首筋を風の魔法で一閃。容赦なく息の根を止めた。
魔力供給役の二人はその時点でこちらが敵だと認識して、魔法障壁を張りながら飛び退る。悪くない反応だ。その内の一人が攻撃対象をわしに絞って何かの魔法を放ってきた。勢いが若干ないのは、鳥のような容姿に戸惑いを覚えているせいだろう。
反撃は予測済のため、その一撃を弾いて空中に飛び上がる。視線を引き付けるためだ。二人は簡単に引っかかってくれた。この二人もわしが片づけることはできなくはないが、魔力が尽き欠けている今、ほんの少しでも節約したい。
後はシィーラに任せる。
「うっほーい!!」
ふざけた掛け声とともに、その剣気が残りの二人を切り裂く。ここまで苦しめられた敵だったが、最後は驚くほどあっさりとした決着だ。暗殺に特化していた分、見つかってしまえば脆い。その場に倒れる二組。シィーラはしかし、違う者に興味を示す。
「ふみゅー、また仮面の人だーって、あれれ?」
再度、無造作に仮面を取り外したシィーラの声で、注意をするよりも先にその素顔の方に反応してしまう。
(双子、なのか……)
その顔は洞に潜んでいた若者のそれと瓜二つだった。それこそが、仮面を被っていた理由なのだろうか。
「おんなじ顔ー、不思議だねー」
(双子によっては容姿その他がほぼ同じような人間になることがある。ゆえに、忌み子として片方が殺されることすらあるのじゃ。持って生まれた資質が二分されてしまうということでな。この者たちはあるいは、それを隠して生きるために仮面をつけていたのやもしれぬ……)
「えー、変なのー?そんで、どれが魔獣使いなのー?」
(いや。ここにはおらぬ。こやつらは魔法の射手とその魔力担当役じゃろう。これで当面の脅威は去った……結果的に当初の順番通りにはいかんかったが……)
魔獣使いに関しては、おそらくは既に撤退していると判断する。本来は魔獣使いから魔法士に至る道筋の上で優先事項を高くしていたが、現状ではそれほど必死に探す相手ではない。攻撃の担い手を打倒したいま、結果と過程が反転しただけだ。魔獣使いは今後も厄介な相手ではあるが、単独では当面たいしたことはできないはずだ。
「ふみゅー?とりあえず、安全になったってことー?」
(うむ……皆の状況を確認しに戻るとしよう)
範囲魔法は既に終息しており、ロアーナたちはその場で尚も警戒していたが、シィーラが姿を見せると少し安心したように肩の力を抜いた。
「攻撃が止んだってことは片づけたのか?」
「うん、一応ねー。魔獣使いだけ、逃がしちゃったかもだけどー」
「他はやったのか。さすがだな……とはいえ、こっちもかなりやられちまったか……」
苦い顔でロアーナが向いた方角には、デデとレキが横たわっていた。デデは既に事切れており、レキの方は虫の息だ。土槍が突き刺さったままの痛々しい姿で、どうみてももう助からない。そっとシィーラは近づいていく。
「……こういう時は、楽にしてあげた方がいいんだよね?拝借、だっけ?」
(介錯、だ……苦しみを終わらせてやるがいい。守り切れなかったわしらには、その責任がある)
苦し気なレキの瞳が一瞬だけうなずくように揺れた気がした。
「レキ……ごめんね」
その首を静かに刎ねる。死の苦痛を感じさせないための一振りは、あっさりと双子の魔法士の命を終わらせた。ロアーナがそっと、妹のオキの身体をそのそばに横たえる。こちらも既に現世から旅立っていた。初めから分かっていた結末だ。
そして、デデの瞼をそっと閉じてやると残った者でしばし冥福を祈った。
と、そこで足りない者がいることに気づく。
「あれ、ジャコブは?」
「シーミャを追って木の上を飛んでいたのは見ましたけど……」
アルバが泣き腫らした目をこすりながら報告する。
「魔獣使いの行方を追っていったんじゃねぇのか?猿が逃げる方向にいるんだろ?」
ロアーナの指摘通りだろう。深追いは危険だが、その辺の限界は本人も心得ているはずだ。
(しばらくここで待つことにしよう……おそらく、偵察潰しの敵部隊はほぼ制圧したとは思うが、あまり気を抜きすぎずに休憩を取るがよい。さすがにみな体力が厳しいじゃろう)
実際、自身の魔力も限界に近い。本当は今のうちに魔眼で残りの任務を終えて撤退といきたいところだが、アルバも疲れ切っているのは見た目にも明らかだ。
「じゃあ、警戒はあたしがしておくから、みんなはとりあえず休んでてー」
シィーラはまだ動けるようでいつものように明るい調子で言った。
アルバとロアーナはその言葉に感謝したようにうなずき、その場に座り込む。緊張の糸も切れ、疲労が押し寄せてきたのだろう。
少し離れた場所で、シィーラが訊ねて来る。
「んー、班長としてこれは失敗だよねー?守る人が多いのは難しすぎるー」
今回の戦闘で思うところは色々とあったようだ。
(そうじゃな……すべてを守り切るには、それだけの力が必要じゃ。わしらはまだ、その域に達しておらぬ……悔しいか?)
「くやしい?うにゅー……このぐにゃぐにゃが悔しいってことなのー?よく分からないけど……なんか、これはやだなー」
シィーラの声が少し沈んでいる。抱いた感情の正体が何にせよ、その気持ちは大事だということを伝える。
やがてジャコブが無事に帰ってきたが、魔獣使いには追いつけなかったそうだ。ただ、途中で例の仮面が落ちていたということで、それを拾ってきていた。
ひび割れた仮面は、先の二人のものではなかった。自身で割ったのか割れたのかは定かではないが、三つ目の仮面であることは間違いないと思われた。実は双子ではなく、敵は三つ子だったということが推測でき、今までの攻撃手段が朧げに分かった気がした。




