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Non Killing Ninja’s Conquest Story ~不殺忍者の征服譚~  作者: かなぐるい
第六章 ワールドクエストと宇宙怪獣攻略
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第二百四十四話 再びドデカい花火求めて……

▼セオリー


 空を覆い広がりゆく赤橙色の鱗粉を見上げる。

 最初に周辺一帯を更地にした大爆発。あの規模の爆発で影響範囲が際限なく広がっていったらもはや手遅れだ。果たして今からでも遅くはないのだろうか。分からない。


「きっと今からでも遅くないよ」


「コヨミ……!」


 懊悩おうのうとした俺の心の内を見透かすように、コヨミは言って欲しい言葉をくれた。今必要なのは手遅れかどうか考え込むことじゃない。可能性を信じて脳を働かせ続けること、手を打ち続けること、足を動かし続けること。


(アカバネ、ヒナビシ、ミユキ、それから第一陣の上忍頭たち。前線で集合だ)


 背中を押された俺はまず精鋭たちの意見を聞くことにした。ヘイトを稼ぎ続けた俺をルシフォリオンは完全に無視している。この状況になった時点で何かおかしいのだ。

 最初にヒナビシが到着し、ミユキ、アカバネが続く。上忍頭たちも加わり円陣を組む。それからアカバネへ現状の説明を求めた。


「あくまで解析結果から考えられる予測ですが、ルシフォリオンはエネルギーを貯め始めています。それと同時に爆発を伝播させる物質、便宜上鱗粉と呼びましょうか。この鱗粉を全方位にばら撒いています。これらが意味するところは……」


「最初の比じゃない大爆発を起こす、ってこと?」


 コヨミのリアクションにアカバネはこくりと頷いた。


「なんとか食い止められないか」


「爆発の被害を抑えるための方法ならあります」


「おぉ、本当か!」


「簡単なことですよ。ルシフォリオンが撒き散らしている鱗粉をこちらもルシフォリオンの方へ向かって押し返せばいいのです」


「……簡単に言うけど、とんでもない範囲だぞ。全部を押し戻すなんて無理じゃないか?」


 ルシフォリオン自体が山のような巨躯を誇るモンスターだ。そんなモンスターが翼をはためかせて飛ばした鱗粉はすでに超広範囲に撒き散らされただろう。それを押し戻すにはプレイヤーの人数が足りない。


「全方位に対処する必要はありません。ここは幽世山脈の山奥です。北西に鱗粉が広がっても関東サーバーの境界線までいってしまえばそれ以上被害は増えません。逆に言えば南東方面だけを重点的に守れば被害は最小限まで抑え込めるでしょう」


 なるほど、ゲーム的な境界線を防壁と仮定して、プレイヤーが守る範囲を限定するのか。説明を受けて納得した俺はアカバネに以降の鱗粉対策を一任することにした。上忍頭たちも含めてプレイヤー全体を使って鱗粉対策に当たって良いことにする。全権委譲だ。


「プレイヤー全体の指揮権、たしかに拝領いたしました。……それでは後続部隊と合流しましょう。風を操れる忍者を集めて下さい。それを中心に押し返します。どうしても手が足りない場合は無理やり鱗粉を誘爆させて消滅させてしまいましょう」


 上忍頭たちにテキパキと指示を出し始めたアカバネを見送る。これでひとまず爆発範囲の拡大については考えなくて良くなった。あとは本体をどうするかだ。


「俺とミユキを残したのには何か意味があるのか?」


 ヒナビシが疑問をぶつけてくる。

 それに対して俺は不敵な笑みを浮かべた。


「ちょっくら雑用を頼むわ」






「おら、連れてきたぞ。これで最後だ!」


 頼み事をしてから数分後、そこには俺がオーダーした通りの人員が揃っていた。

 最初に連れて来てもらったのは地形操作が得意な忍者を三名ほど、それからミユキとともにドデカい一撃を食らわせていた忍者ゴドーだ。

 ミユキが固有忍術の特徴を話したところ、同じ逆嶋バイオウェアに所属するヒナビシがすぐにピンと来て連れてきてくれた。


 前者三人の忍者にはミユキとともにルシフォリオンの足元にあった大穴へ降りてもらい、地形操作を駆使して超圧爆縮弾の回収へ向かってもらった。後からヒナビシに連れてこられた何も知らないゴドーは俺たちとともに待機だ。


 これで作戦はお分かりだろう。つまり、もう一度ゴドーに超圧爆縮弾をぶっ放してもらおうってことだ。何と言っても俺が保持していたヘイトを一撃で奪っていった威力が魅力的だった。

 できることならルシフォリオンの残りの体力は一気に抉りたい。そう考えると、あの一撃以上のものは考えられなかった。


「というわけだから、もう一発ドカンと叩き込んでくれよな!」


 ニカっと笑ってサムズアップ。何も説明を聞かされていないゴドーはポカンとした顔をしていた。どうやらヒナビシは本当に何の説明もなしにゴドーを拉致ってきたらしい。

 ミユキたちが弾を回収してくるまで時間がある。仕方がないので一から作戦の説明をし直した。そうしてようやくゴドーは事態を飲み込めたのだった。


「つまり、最後の詰めに超圧爆縮弾を使うわけか。それで射出役として俺が呼ばれた、と」


「理解が早くて助かる」


「二度目だからな」


 たしかにそうだ。


「「ところで」」


 ここで俺とゴドーのセリフが被った。互いに気まずい一瞬が駆け抜ける。どうする。譲るか? このまま話を続けるか?


「そっちが先にどうぞ」


「あぁ、悪いな」


 結果的に俺が譲った。正直、俺はあまり記憶力に自信がないんでな。向こうから答え合わせしてくれるならその方が楽だ。


「お前、逆嶋の抗争の時にいた忍者だよな?」


「あー、やっぱりそうか」


 ゴドーの質問で俺の記憶が間違ってないことがはっきりした。


「そう、合ってる。逆嶋にいたよ。そっちはたしかコタローが呼んだ仲間の中にいたよな」


「あぁ、……あの時は悪かった。内通者呼ばわりして難癖つけちまった」


 イリスとの初めての邂逅の後、コタローと合流するべく逆嶋へ戻った。その時にゴドーと出会い内通者なのではないかと詰め寄られた。その場はコタローとアマミの仲裁で穏便に済んだけど、二人の助け舟が無ければあの時どうなっていたか分からない。


「襟首掴まれたもんなぁ」


「わ、悪かったって」


 頭を掻いて居心地悪そうにするゴドーを見て、なんだか溜飲が下がった。コイツも悪いヤツではないのだろう。そもそも俺もぽっと出の無所属下忍だったからな、たしかに怪しかった。

 それにコタローがイリスにやられた時、すぐに呼んだ仲間に入っていたのがゴドーだ。コタローが信頼できるなら俺も信頼できる。



 そうこうしている内にミユキがアホかってほどデカい金属球を頭上に掲げて走ってきた。無事に掘り出せたことは喜ばしいけれど、どうにも絵面がギャグマンガなんだよなぁ。本当にあの金属球でルシフォリオン倒せんのかな。心配になってきた。


「まあ、信じるしかないか。じゃあ、もう一発ルシフォリオンに手痛い一撃を頼むぜ」


「あぁ、任せておけ」


 ゴドーは俺にサムズアップを返すとミユキとともに射出地点へと向かって行ったのだった。


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