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Non Killing Ninja’s Conquest Story ~不殺忍者の征服譚~  作者: かなぐるい
第五章 世界の軛と関東サーバー統一
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第百五十一話 世界くびき発見!

淵見ふちみ 瀬織せおり


『熱い話題を切り取るっ……、VRゲームTV!!』

『さあ、始まりました。VRゲームTVのお時間です。この番組では今をきらめくVRゲームのホットな話題をお届けします!』

『今週はどんなホットな話題が飛び出すのでしょうか。楽しみですね』

『ゲストにはVR技術の分野に詳しい中星なかほし大学の浜宮教授に来て頂いております!』

『よろしくお願いします』

『おぉー』



 午前七時、テレビから垂れ流しているゲーム系情報番組の音声を聞きながら朝ごはんの準備をする。

 『VRゲームTV』は朝のちょうど良い時間帯に最新VRゲームの情報を伝えてくれるため、ここ最近のお気に入りとなっている。唯一の欠点は週一放送なことくらいだ。逆に言えば毎朝流れて欲しいということである。個人的にかなり高評価の番組だ。


 トーストされた食パンの上にベーコンとレタス、目玉焼きを乗せ、その上からケチャップとマヨネーズを交差するようにかけていく。隠し味にコショウを少々振りかけ、最後にもう一枚のパンで挟み込めば特製(ベーコン)レタスエッグサンドのでき上がりだ。

 本当はBLTサンドにしたかったんだけど、トマトが高かったため卵で代用した。さすが物価の優等生と言われるだけある。貧乏学生の強い味方だ。

 先にコーヒーを入れておいたマグカップと一緒にBLEサンドを乗せた皿を手で持つと、テレビの前に置かれたテーブルへと運んだ。


『今週のホットトピックスは「‐NINJA‐になろうVR」から!』

『近頃、一周年を迎えたシンプルゲームカンパニーのヒット作ですね』

『はい! そして、ホットトピックスは現在実施されている一周年記念イベントに関するものです!』


 おっ、今週は「‐NINJA‐になろうVR」の情報か。やっぱり自分が遊んでいるゲームの話題というのは特に気になってしまうものだ。

 手作りサンドにかぶり付く手を一旦休め、テレビの画面へと集中する。


『ゲームが稼働してから初のワールドクエストというものがプレイヤーに課されて話題になっていましたよね』

『そうなんです! 未プレイの視聴者に説明しますと、一周年記念イベントとして世界のくびきを破壊するというクエストが全プレイヤーに課されました』

『それってクリアすると何が起きるんでしょう?』

『ゲーム内アナウンスでは「サーバー統合」という言葉が使われています!』

『サーバーの統合ですか』

『はい! というのも「‐NINJA‐になろうVR」ではゲームワールドが日本を模した地形をしているのですが、これまでは地方毎にサーバーが別れており、簡単には行き来できない状態となっておりました』

『えぇー、そうなんですねー』

『今回のイベントでは「世界のくびき」を破壊することで、サーバーの統合が行われ、全国各地へ自由に行き来できるようになるのではないか、と言われています! もしそうなれば、これまで別れていた七地方が一つになって単純計算で七倍の広さですよ!』

『凄ーい、一気にマップが広がりますね』

『それだけでなく、プレイヤー間の交流もより一層の広がりを見せることでしょう! 今後に期待です!』

『期待です!』


 なるほどな。現在、プレイヤーたちの心を大きく揺さぶっているのはワールドクエスト関連らしい。

 フレンドチャットでもコタローから関東サーバーの「世界のくびき」が見つかったらしいという情報は聞いていたけれど、それ以降の続報を聞いていない。


『ところで話に出てきた「世界のくびき」というのはどういったものなんですか?』

『良い質問ですね! ここでゲーム内映像が届いているので確認してみましょう。映像をどうぞ!』

『どうぞー!』


 MCたちが話し合いをしていた場面から映像が切り替わる。

 次に移った映像では全身黒ずくめの忍者衣装を身に纏った人物が現れた。顔まで完全に黒い布で覆い隠した姿は見覚えがある。「‐NINJA‐になろうVR」のチュートリアルで説明をしてくれた案内役、影子・ファーストである。


『ニンニン。拙者、影子・ファーストと申す。この世界の裏方を務めているでござるよ』

『影子・ファーストさん、今日は現地リポーターを引き受けて下さりありがとうございます!』

『のーぷろぐれむでござる。では、今回はつい先日見つかった関東地方の「世界のくびき」を紹介いたそう』

『おぉー!』


 手持ちマイクを口元に当ててノリノリで話す影子は山奥を進んでいく。影子の解説によると、見つかったのは幽世山脈と八百万神社群のちょうど中間辺りにある山中なのだという。

 こんな大森林生い茂る山の中でよく見つかったもんだなぁ、と感心してしまう。番組MCも気になったようで影子へと質問している。


『よく見つかりましたねー。意外と大きなシンボルだったりするんですか?』

『否、それほど大きなものではござらん。相当数のプレイヤーが探すのに躍起になったようでござる。我々としても見つかるまでもう少し掛かると見積もっていたでござるから、プレイヤーたちの執念にはほとほと恐れ入ったでござるよ』


 やはり、ゲーム開発側も驚きの速さだったらしい。縮尺は十分の一とはいえ関東全域からノーヒントで特定の場所を洗い出すというのはなかなか大変だったろうに……。まあ、大多数のプレイヤーが参加しているイベントだろうからマンパワー侮り難しということだろうか。


『そういえば視聴者から質問が来ていました。ワールドクエスト発生時にサーバー統合完了までの残り時間が表示されていましたが、時間が来れば自動的に統合されるのか、それともワールドクエストをクリアしないと統合されないのか、どちらですか? とのことです』

『ムムッ、その件は我々の下へもたくさん届いているでござるよ。公式サイトの質問フォームがパンクしそうだからほどほどにして欲しいでござる。実は公式サイトのお知らせに詳しく載っているのでござるが口頭でも説明いたそう』


 影子が頭を抱えて「参った」というようなポーズをしていた。

 そういえばワールドクエストに関する電子巻物が表示された時に『統合完了まで残りほにゃほにゃ秒』みたいなことが書かれていた気がする。


『ワールドクエスト発生から10,368,000秒後、つまりゲーム内時間で四ヶ月後にサーバー自体は統合されるでござる。しかし、「世界のくびき」を破壊していない地方は出入りに制限がかかるでござる』

『ということは、サーバー統合によるマップ拡大というビッグウェーブに乗り遅れちゃうってことですか!』

しかり、しかり。まだ「世界のくびき」が発見されていない地方のプレイヤーには是非とも頑張って欲しいところでござるな!』


 それから影子はくびき未発見地方に対して見つけるためのヒントなどを教えていた。とはいえ、ゲーム内時間で四ヶ月ということは現実世界で換算すると一ヶ月もの猶予がある。

 現在、ワールドクエストが発生してからようやく一週間経ったかなというくらいだ。まだあと三週間程度の余裕があるのだ。どこの地方もそれだけの時間があれば、さすがに見つけ出すことくらいできるだろう。むしろ、面倒そうなのはワールドクエストにも書いてあったように「世界のくびきを破壊せよ」の破壊という部分の気もする。

 そうこうしている間に影子は「世界のくびき」がある場所へと到着したようだ。


『これが「世界のくびき」でござる』

『おぉー、どのようなものかと思ったら石板なんですね』


 番組MCが驚く。俺も驚いた。高さ五メートルくらいの大きさをした石板だ。本当によく見つけたな。マップ全体の広さから比べたら、こんな石板など米粒を探すようなものだろうに……。

 そんな石板の全体像はというと上部が円みを帯びた縦長の形状となっており、表面に文字が彫られていた。そして、引きの映像がググっと石板の表面へと近付いていく。接近したことで石板に彫られた文章が読めるようになった。



 猟犬を従えし者が隠された道を暴き、

 秘密を解き明かす者がくびきを照らす。

 万物を支配せし者、いにしえの王を呼び覚まし、

 王位を簒奪する者が破滅をもたらす。


 ───さすれば封印は解かれるだろう。


今回はMMOモノのなろう小説によくある掲示板回みたいなノリを若干意識しました。

しかし、本作の主人公は掲示板で話題の有名プレイヤーになるほど他のプレイヤーたちから認知されていないのであった……。もしくはNPCと勘違いされている。

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