表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

容疑者A・被害者の妻の告白

 ええそうよ、彼に毒を盛ったのはわたしよ。


 彼と入籍したのは一ヶ月前。結婚した理由? そんなのお金に決まってるじゃない。もう調べてあるんでしょ。

 そうね、彼はお金持ちのお坊ちゃんだし、あの通り見た目もいいじゃない。条件はいいわよね。だから最初、わたしもちょっと本気で落とそうとしてたのよ。それが功を奏して、結婚にまでこぎつけられたんだけどね。

 でもね、あれはダメだわ。今まで付き合った相手とは誰とも長続きしなかったらしいけど、それもわかるわね。

 何て言うか、冷たいのよ。デートしてる時とか、ちゃんとエスコートはしてくれるんだけど、それは「そうしなければならないからやってる」って感じなのね。誕生日とか記念日にもプレゼントはしてくれるけど、プレゼントする決まりだから何かくれる、みたいな。まあくれるだけいいし、それなりに高価な物だったけどね。

 だから結婚した後は、彼は金づると割り切って、他の男と遊んだりしてたの。でも、一緒に暮らしていると、何だか違和感を感じて。違和感……と言うか、ぶっちゃけ気味が悪かったのよね。

 彼、わたしが浮気してたこと、知ってたはずなのよ。別に隠してなかったしね。でも、あからさまに他の男からのメールが来ても何も言わないし、誰かとイチャついてても無視だし。そりゃ、こっちには都合はいいけど、何の反応も見せないのよ。

 いっぺん頭に来て、浮気相手を家に上げてキスしてるとこを見せつけてやったけど、本っ当に見事なまでにスルーだったわ。次の日に顔を合わせても、普段通りにしてるの。信じられる? 普通、妻が他所の男とキスしてたら、何か反応するでしょ。

 いいえ、動揺を隠してるとか、そういうんじゃないの。あれはそんなのじゃなかった。本当に普段のままだったの。

 それでわたし、何となく怖くなって。もしかして彼、わざとわたしに自由にさせてるんじゃないかって。わたしの弱みを確実に握って、わたしを逃げられないようにしてるんじゃないかって思うようになったのよ。

 バカな考えだと思う? それは彼を知らないからよ。

 とにかく、わたしは決めたの。やられる前にやろうって。離婚したら慰謝料を払うのはこっちになるだろうし、死んでしまったら遺産がもらえるかも知れないから、殺すしかないって。

 毒薬は彼が持ってたわ。彼、化学実験が趣味っていう変わったところがあったのよ。わざわざ資格まで取って、危険な薬品を使えるようにしてたんだからマニアックよね。もちろんそういう薬品は鍵のかかる棚にしまっていたけど、時々鍵をかけ忘れることがあるのを知ってたの。そこから少しだけいただいたわ。

 彼、バレンタインデーが誕生日だから、今年は彼の友人やら取り巻きやらを集めてチョコレートパーティーを開いたの。言い出しっぺは彼自身。チョコレートは彼の好物でもあるし、買って来た高級チョコや手作りのお菓子を持ち寄って楽しむという趣向よ。

 わたしは一口サイズのチョコレートケーキを作って、彼にあげる分だけに毒を入れたの。なるべくバレにくいようにね。彼、何も疑わずに食べてくれたわ。

 え? わたしがケーキに入れたくらいの量だと、致死量にならない可能性がある? 他のチョコレートにも毒が入っていたらしい? 知らないわ、わたしが毒を入れたのはケーキだけよ。

 でも、彼のことだから。わたし以外にも恨みを買ってたとしても不思議じゃないわね。そんな奴だったのよ、彼は。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ