その四 異様に重い水筒①
なんかキリがいい気がしますので、
一旦投稿します
白い岩で囲まれた部屋で
日差しが顔に当たりとても眩しい。
無意識に腕で日光を遮ろうとすると腕に鈍痛が走った。
「ーっ」
しょぼしょぼする目で確認出来るのは昨日腕に巻いて貰ったヨモギのような薬草だ。
一人ではないというだけでこんなにも安心感があるのか、
一時は殺されそうにはなったが、
サンレイヤーもそう悪いヤツではない。
守りたい人がいた上に追われている様なのだ。
「守りたい人、か。」
ふと妹を思い出す、唯一の兄妹である自分が急に居なくなって、あいつはどんな顔をするのかな。
うるさい兄が居なくなって清々したとでも言うのだろうか。
もしかしたら自分は戻らない方が…
「幸せ…なのかもしれない」
さまざまな葛藤をしていると
「柿谷!いい加減起きてるか?」
サンレイヤーの声だ。
「…おい。なんて顔してんだよ」
「え?」
予想外の言葉にふいをつかれる
「いや、めちゃめちゃ泣いてんじゃねーか。とりあえず顔洗ってこいよ」
言われるがまま、今にも枯れそうな井戸の水で顔を洗う。
シャキッとしなきゃ、
まだ何もわからないんだ。
「早速だが、やはりただ薬草だけではライラの回復も図れない。まだライラは目を覚まさないが村を目指そうと思う。」
そういうとサンレイヤーは地図を開き今の位置と向かう方向を教えてくれた。
これから向かう国はクムルンランドという所で、説明を聞く限り某ネズミの国を彷彿させた。
あみゅーずめんととやらで観光客を愉しませお金を落としていかせる国だとか。
皆夢心地で楽しみ、帰って気付くのだ。
金がない
しかし、後になって考えればしっかりちゃっかりと使いこんでおり、ぼったくられた訳ではない上に、その普段を忘れてしまうくらいに楽しい一時を過ごすために多くの貴族や王族、金持ち達がリピートするのだ。
なんとも恐ろしい国だ…
ただし、この世界の金自体持ってなどいないので遊ぶことすら叶わない
そもそも目的が違う。
俺の目的は元の世界に帰る事。
その為には、この世界に同じように飛ばされたという先人の残した童話を見つけて読む事、
そしてその童話の著者、又はそれを知る人物を訪ねる事だ。
そう、それを第一に動いていけばいいのだ
先ずはクムルンランドに向けて歩き、
途中村等でしっかりと休みながら大きな首都を目指す。
「柿谷、お前はあのかんじだと闘えないよな?」
「?」
「道中の魔物だよ。」
確かに、あの兎を魔物とするのなら戦う事は出来ない。
またやられてしまうのが目に見えている。
「お前を信用してライラを頼む、ライラの無事の為にもお前を守ってやる。」
サンレイヤーはそういうと手の中でナイフをクルクルと回しながら荷物を纏め始めた。
そうか、出発が近いのかと
何か自分で出来る用意は無いかと辺りを見渡す。
桶の中に水が入っているのを確認し、水筒を取り出す。
昨日こっちの世界へ来た時に水筒からホカリが溢れていた
水を補充するべく取り出したのだが、違和感を覚えた
「あれ?」
水筒はほぼ満タンの様な重さを、
いや、満タン以上に異様に重い。
圧力か何かで重くなっているのか
水筒を開けようとするも、
開かない。
「あ、あれ?」
壊れてしまったのだろうか、慌てながら外側から水筒を眺める
傷はあるものの、形状の変わるような傷はついていない
そうこうしているとサンレイヤーに呼ばれ仕方なく出発することになる。
サンレイヤーと共にクムルンランドを目指す。