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その三 サンレイヤー

なんか、半年に一度更新みたいなかんじです。いまのとこ

というか今までの文字数「5469文字」今回投稿する三話の文字数「5259文字」…

なんだか、なんだかなぁ。。。

雲一つない晴天の下、

オルグラフィア王国では新たな王が即位して、初の武闘会が開かれていた。

会場には現行貴族の者や、貴族にのしあがろうとする者、また国民等顔ぶれは様々だ。

しかし見分けは簡単に付く、

貴族用の席と国民用の席はキッチリと分けられているからだ。

自分達の進退にも関わるこの闘技大会、普段は優雅に振る舞う事を第一に考える貴族達も冷静さを欠いていた。

自分達の家名を背負わせ闘わせる、この闘技大会の成績が悪ければ貴族という立場を剥奪される。

逆に、成績がよければ今以上の爵位をも手に入れられるという事だ。

しかし、腕の立つ者にも限りがある。

そして本来自分の陣営の者でない者を許可無く使えば当然失格と見なされ、爵位剥奪。

元々軍大将や、軍位を持つ貴族であれば自分の直轄の部隊や私兵がいるが、金で成り上がった者はそうはいかない。

その為多くの試合では一方的で暴力的な試合とも言えない試合が繰り広げられていた。



「おい…どうなったんだ?」

「どうなってんだ」

「おい…」

広く3万は優に越える観客の困惑の声でどよめく。

先程まで貴族の名を背負いドルクスという若者がライラという女をボコ殴りにしていたのだが、

男の声で

「ライラッ!!」と、負けている女を呼ぶ声がしたと思ったらドルクスはいつの間にか倒れており、ライラという女はいなくなっていた。


前後関係から確実に女を助けに男が助けに入ったのだと思われるが、

何分姿も何も見えなかった。

その所為で誰がやったのかもわからず現場はそのまま固まっていた。


新王の初の催しで、横槍を入れて完全に出し抜く。

これは王に対する大きな侮辱行為に他ならない。

就任直後の宣戦布告、これほど物騒な物は無い。

ただ、そういった反乱を企てる者を出さないように兵による警備は厳重だったのだが、それをくぐり抜けやってのけた者への注目が集まるのは必然であった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「つーか、ここどこだよ。」

柿谷衛は森の中を彷徨っていた。

今は日中だというのに木々が幾重にも重なりあうように生い茂りまるで光を通さない。

偶に奥の方に光が差しているのが見えるが、下手に曲がったりすると戻ることと出来なくなるため意地でも最初の岩から真っ直ぐ歩いてきた。


すると奥に草を摘んでいる黒い男を見つけた。

なにやら草と草をじっくりと眺めながら選別してはカゴの中に入れていく。


久しぶりに人を見た感動で気づけばその方向に走り出していた。

「おーい、おーい、やっと人がいたー」

痛む左手を振りながら安堵感から涙が溢れる。


少しすると黒い男はピタリと動きを止め、

こちらを向いた。

その手に光る物を見た瞬間、背筋が凍るような感覚に襲われる。


あの黒い男が悪いヤツなのかいいヤツなのかそれもわからずに大声を出して走り出した自分を後悔した。

足はいつの間にかすくんで動けなくなっていた。

その男はゆっくりと此方に歩を進める。


一度だけ瞬きをしたんだ。

その瞬間確かにソコにいた筈の男はカゴだけを残し姿を消していた。


「え!ど、どこ行った!?」


「ここだよ。」

それは氷の様に冷たく、無理やり憎悪を抑えているせいか、無機質な声に聞こえた。


首筋にはナイフの刃が突き付けられる。

ほんの瞬きの一瞬で背後に回られていた。

逃げ場はない


「今度は此方から聞こうか。…兄さんからか、それとも貴族共か?」


何 乃 事 茶。


「え、え、知らない。え、何を言っているのでしょうか、え!?え!?」


全く知らないしわからない?

何を言っているのか、何か聞きたいことがあるのか


「わ、私は兄ですが、貴方の兄ではございません。貴族でもありません…助けて!迷っているんです!!」


「……。」


「知らない、わからない!何か気に触ったのなら謝ります!だから命だけは!!帰らないといけないんです!!」


「…。」

男は突き飛ばすように拘束を解くと横を向き謝ってきた。

「すまない、此方の勘違いだった。ワケあって俺も身を隠しているんだ。」

ワケがあるのはわかっていたが、どんなワケだろう、もし自分が相手の言うような人間なら殺されるようなワケがあるような人なのだろうか。


カゴを持ち場所を変えようとする男は後ろを向いたまま左を指差し、

「 森を出たいだけなら此方にいくといい。…悪かったな」

そう言い、男はその場を後にする。


「確か…あの人はこの草を集めていたな。」

一体なんの草だろうか…

見た目はヨモギの葉のように見えるが、

日に当たっている部分にしか生えていないその草は部分的に葉の縁が赤黒くなっていた。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


日が少し傾き、森の中の木漏れ日は斜めになっている


「ふぅ……しくったな」

金髪の黒い男はため息をついて手に持つかごを見下ろす


かごの中の薬草は主に根で繋がっていて日のよく当たる場所にのみ群生する。

生存能力が弱く、他の植物に淘汰されやすくこの森の中では探すのは困難だ。

先程はバツが悪くなってつい、貴重な薬草の群生地を離れてしまったが、

なりふりなんて構っていられない状況の筈なのに

そのまま薬草採集に勤しんでいれば…

今更後悔しても遅い。

この薬草の効果は極めて微弱だが、

製薬知識がなくても取り扱える手軽さに加え、日を直接浴びている間のみ葉が緑になり、日を十分に浴びれなくなるとその部分はすぐに赤黒く変色し、逆に毒素を含み始める。

緑の色をしたまま摘まなければいけない為、尚更希少価値が高くなっている。


同じところに戻って早く薬草をもっと摘みたい。

ただ、先程よりも日の向きが変わってしまっている為、今戻っても薬効効果のある葉はほぼないと思われる。


それに長くライラの元を離れているのも心配だ。

きっとあの兄の事だ、

「面子を潰されて黙っていられないだろうな」

捜索隊を組んで自分を探しているに違いない。


気づけばライラを寝かせていた遺跡の様な所に着いてしまっ


「誰だ」


考え事をしていたせいか、こっちに向かって走ってくる気配を感じる。

ダメだ、ライラが近くにいるのに。

見つかるわけには、いや、既に俺の姿は捕捉されている。

「…殺すか」

ナイフを手に取りかごを手から離す

先手を取るために縮地の姿勢をとる。

ナイフを振り上げ後方に向かってー…


「ちょ!!タンマタンマ!待ってください!!」


聞き覚えのある声だ。

「何しに来た。」

相手の首に触れるか触れないか、寸での所で止められたナイフ。

もう少しで首を吹っ飛ばす所だった。

先程の男だ、


「僕は柿谷衛、ちょっと気になってしまって」


「名前なんか聞いてない」

ムカつく奴だ、こっちは常に気を張りながらライラを守らなければいけないというのに無神経に…


ふいに柿谷衛と名乗る男の手にある薬草を見て思考が止まった。


「きっと僕が邪魔をしてしまった所為で採集しきれなかったかな、と思って。」

そう言い薬草を差し出すヤツの腕はケロイドの状態のまま放置されていた。

「お前、腕…」

その腕を見て考えが変わった。

自分の腕も大きな怪我をしているのに、他人の薬草を気にする。

城では味わうことのない、村に出た時のような…

「なんかウサギにしゃぶられたらこうなってしまって…」

歩いて風を切るだけで酷く痛む筈の惨い腕を見て覚悟を決めた。

「痛くないのか、腕」

柿谷衛はバッグを掛けた右手で頬をかきながら笑った

「とても、痛いです」

「ぶっっ…くく、あっはっはっは!!」

笑えてしまう、とんだお人好しだ。

嫌いじゃない。

「お前はいいヤツだな、さっきは本当にすまなかった」

頭を下げ、謝罪をする。

「柿谷、衛です」

「そうか、変な名前だな。柿谷、と呼んでもいいか?」

「ええ、勿論」

「俺は、サンレイヤー。ただのサンレイヤーだ。宜しくな」

握手を交わすと柿谷は一瞬痛みを無理するように笑顔のまま冷や汗を流す。

とんだお人好しだ、疑ってすまない。本心からそう思った。


「柿谷、薬草は有り難く頂くがお前は自分の腕の心配はしないのか?」

「やっぱりこれは薬草だったんですね、気付きませんでした。」

「敬語なんて使わなくていい、俺も敬語は使えないんだ」

「そうか・・・ありがとう!」

「こっちに来るといい、隠れ家に案内する。夜は危険だから明日近くの村まで送り届けてやる。」

柿谷は遠慮がちながらも危険という言葉を聞き、会釈した。

「ありがとう、」

「こっちだ、着いてきてくれ。」




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



そこは廃墟とてもいうような、遺跡というような元は繁栄していたのだろう。

繊細な造りの彫像や宮殿のような大きなものまで、柱の細部にもしっかりと作りこまれているのが見て取れる。


そう、”かつて”は。

今では蔓や葉に覆われ、全体的に崩れ落ち、瓦礫の多い廃墟と化している

きっとここで大きな争いがあったのは間違いないだろう。

その証拠に凄惨な戦争を彷彿させる壁の黒い焼け痕や、染み込んで黒くなっている血の跡。

「ここは…」

言いかけた言葉、それに反応してサンレイヤーは言葉を繋げる

「知っているか?」

「え?」

ふいに繋げられた所為で注意が逸らされる。

「これを実際にやったのはグングニラだ。異教徒であるこの森の住人を罰せよ、と」

「グングニラ?」

「あぁ。だが、それを誘導し、仕向けたのはオルグラフィアだ。」

「オル…グラフィア?」

柿谷がキョトンとした顔で聞いていると

「?」

「?」

「まさか、お前。何も知らないのか?」

「いやぁ、ハハ。この世界に来たのも最近で…」

「ムールヌーガからか?」

「?」

次から次へと知らないワードをぶっこんでくるあたり、現実味を帯びない。

でも腕は痛い。相当痛い。


ポカンと空白の時間を過ごすとサンレイヤーは怪訝そうな顔をして顎に手を当てる。

「ムールヌーガ島の奥にも遠いが大陸があるという…」

「僕がいたのは日本という国だよ」

「”ニホン”?知らないな。別の大陸にあるのか?」

「それもよくわからないけど、気が付いたらこの森の中にあった平べったい大きな岩に寝ていたんだ。」

「アッハッハッハッハ!それは童話の転生者の章じゃないか。なんだ、ちゃんと知ってるんじゃないか」

「転生者?」

「ハッハッハッハ…ん?」

「いやぁ、ワケが解らないよ」

「いや、あれはおとぎ話の類だろ…実在するワケがない」


「でも…僕の国でもあったよ。異世界、つまり今いる世界とは別の世界に言って帰ってきたとかいう話も…

もし、よかったら教えてくれ!先人がいるならどうやって帰ったのかどうやって過ごしていたのか。」

「いや、でも」

「元の世界には妹がいるんだ、金は心配じゃない。ただ…妹が何かを…何か…力にならなきゃ。僕が…」

「…わかった。きっとある程度大きな国の図書館にはその童話が置いてあるだろ」

「本当か!サンレイヤー‼恩に着るよ」

やけどした手で思わずサンレイヤーの手を取り激痛が走る

「ーッ」

「はぁ、まずはお前のその火傷もなんとかしないとな。」

サンレイヤーの後に続き遺跡を進むと

「ここだ」

サンレイヤーは岩をずらすと地下への入口が顔を出す。

感心しながら着いていくと、灯りのともった部屋に一人の少女が眠っていた。

その少女の看病をするサンレイヤーはとても悲しそうな顔をしていた。


「お前はこっちにこい。手当してやるから」

別室に連れていかれるとサンレイヤーは今自分が置かれている状況やこの世界の事を手当てをしながら教えてくれた。


まずこの世界、いや大陸には大きく分けて6つの国がある。

大きさ順に「オルグラフィア王国」「サルスムーナ帝国」「グングニラ聖教国」「コルトバッツ貿易港国」「クムルンランド」

そして「ムールヌーガ島」厳密には島だが国のような役割を果たし、代表は大陸の協議会にも顔を出すという

サンレイヤーはその一番の大国オルグラフィア王国の第11代継承権の持ち主、所謂王子様。

そして今いる場所は「忌み死にの森」と呼ばれる忌み嫌われた土地なのだとか…

「へ!?王子様??」

「騒ぐな!継承権は低いし、俺はあの国が嫌いなんだ。」

そう言い放つ彼の瞳には灯りの蝋燭が映り瞳の中の光がないことに気づいた。

「それに、今俺はきっとオルグラフィアでは指名手配犯だ。王就任最初の催しに茶々を入れて…唾を吐いたようなもんだからな。」

「そしたら、どうするんだ?この後行く先は決まっているのか?」

「そうだな。森の中を通って最近出来た小国のクムルンランド方面に行ってみようと思う。オルグラフィアの息がかかっていたら方向を変えてサルスムーナに」

サンレイヤーはそういうとニカっと笑う。

「ライラをしっかりとした所で休ませてやりたいし、お前の知りたい情報の事もあるし!ずっとココに留まるわけにはいかねえもんな。」



夜空を見上げると日本から見た月と似たナニカが浮いている。


結婚の話はきっと嘘だ、でも本当だったら唯一の兄妹の兄として式には絶対に出席しなければならない。

電車の事故。それで死んだとしても死にきれない。何か方法はないか。自分に出来ることからやっていかねば。

それに、サンレイヤー。彼にばかり迷惑も掛けていられないしな。


手当てしてもらった左腕は痛みは残るが、何もしていない状態よりも幾分もマシだ。


月?に向かって決意を新たにする。

閲覧有難う御座います。

アリシアの方も更新は近いうちにする予定なのでこっちはこっちで気長に待ってもらえれば…w

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