その二 森の中
久々の続編の投稿。
久々、どころか半年ぶり、っておま…
って感じですな。
アリシアの方が進んでます。
でもこっちがメインで、あっちはサイドストーリーの予定でした。
それは特に変わらないのですが、pv数に二桁の違いがでておりますので今後はどうなることやら。
アリシアで拾えなかった話がこっちでされることがございます。
ご了承下さいませ。
周りは森である。
見渡す限り自然豊かな場所でウサギの様な小動物さえ目に見える程。
まるでこの辺りには天敵となる動物がいないかのようだ。
しかし、ウサギにしてはやけに爪が鋭い感じだ。それにやけにまんまるい。
自分の頭の中にあるウサギと中々にかけ離れている。
…なるほど。
これは所謂アレだ、アレ。
ならばする事は一つ、
「もしかしてこれって、異世界召喚ってやつーー!?」
叫ぶことだ。
大分スッキリした。
どうやらお腹が濡れていたのは倒れていた水筒からでたホカリだ。
ベトベトしそう…
さて、多分このままでいても仕方がないのがお約束。
不思議な岩から降り、少し歩くとウサギらしき動物に向かう。
どうやら人慣れをしている為か、怖がって逃げる素振りは見せない。
寧ろ鼻をスンスンとならしながら近付いてくる。
「お。なかなかかわいいかんじの奴だな」
伸ばした左手に頬擦りしながら目を細めるウサギらしき動物。
これはアレだ。
エルフの森の守護獣的なやつに懐かれてエルフの隠れ里に招待されるという流れだ、きっと。
道理で左手が暖かく濡れているかんじがする。
早速水魔法に目覚めたか…
目を開くと自分の左手首から先がウサギらしき動物になっていた
左手の代わりにウサギモドキが生えていると言っても過言ではない。
それを確認すると、急激な倦怠感と激痛に襲われ腕を振りウサギモドキをふっとばす。
「いってぇ…肉食だったかコイツ。」
大きなマシュマロに赤い二つの目、手足が直接生えたかのような非常に愛らしいシルエットなのだが、噛みついてきやがった、いや、呑み込まれる所だった。
ウサギモドキは何も言わずに此方を見ながら確実に距離を詰めてくる。
眩暈がする。
すかさず先程までいた岩の上によじ登り、逃げると
ウサギモドキは少しじっと此方を眺めるとまるで何もなかったかの様に森へ消えていった
「なんだったんだ、あのウサギは…
また、戻ってきちまった」
先程と同じく岩の上、
これじゃいけない。
食べ物も無いし飲みかけのホカリとプリスクのみ。
このままでは餓死ルートまっしぐらである。
眩暈が酷くなり、
眩しい筈の日光も視界の暗転と共に消えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
オルグラフィア王国
ここは大陸の中でも一番の規模と戦力を持つ大国である。
全戦無敗のこの国では次期国王の座を狙って貴族や王族による権力争いが激化していた。
主に武闘派の第一王子と穏健派第二王子
の二大派閥に分かれ、貴族達はそれぞれがどちらかを支援する形で動いていた。
元々負け無しの大国である、武闘派の派閥が全面的に優勢ではあったのだが、
数年前に竜が現れた際に幾度も出した討伐隊は無惨にも破れ、先代の軍団長は討ち死に、軍が傾いた際に穏健派の勢いの増す要因となった。
また、第一王子の提唱する「力無き者は貴族にあらず」
という一言により多くの貴族は第二王子の後ろに付くこととなった。
王位継承と共に腐敗した貴族体制を一新することを願う国民は第一王子に票を集めていく。
軍を始めとし、国民の指示を一手に引き受けた第一王子は燻る火種を残し、一気に王座を手に入れた。
第一王子が王権を握ると、早速『第一回貴族選定会』と言う名のトーナメント方式の
武闘会が開催された。
この大会の中で起きた事故がきっかけで、国内だけでなく大陸中の者の運命が少しずつ変わっていく事となる。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「…夜だ。」
フクロウのような生き物の鳴き声が柿谷衛の周りを取り囲む。
ウサギモドキに噛まれ腕をしゃぶられた。
そこから気持ち悪くなって岩の上に逃げた所までは覚えている。
…気を失っていたようだ。
「まじか!ウサギに齧られただけでこの様か!」
見れば左手が真っ赤になり所々皮膚は溶けており、先程から痛みを訴えてくる。
まるで火傷をして爛れた時の様だ。
膿汁がじわじわと岩の上に水溜まりを作る。
異世界に投げ出され早々にピンチである。
「召喚者は近くにいねーのかよ」
苛立ちと共にこのままではいられないという気持ちでいっぱいになる
祖父が言っていた。
『行き詰まった時こそ、突破するチャンスである』
そう呟いた後歯を食い縛り自分が何をしなければいけないのか。
全て自分でする必要は無いのだ。
『行動に示した者にしか得るモノはないのだ』
彼はこうも言っていた。
異世界に来たと浮かれて直ぐに死んでゲームオーバーだなんて笑えない。
死んだら元の世界に戻れるなんて保証もない。
ならばやるしかないじゃないか
意を決して岩の上から飛び降り、大声をあげながら適当に走り出した。
「うおおおおおおお…お?」
特に追っ手は無いようだ。
飛んだ期待はずれである。
「なんだよ、もう近くにはいないのかよ」
安心と無駄な徒労感に進む速度は落ち、歩く様になった。
空を見上げてもまるで自分を逃すまいと繁る葉や枝に嫌悪感を覚えた。
周りを不気味な木々に囲まれながら
ゆっくりと確実に歩を進めていく。
まだまだ序盤。
柿谷さんの相棒も出てきておりません。
まだまだこれから!ってとこなので温かく見守ってくださいまし