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真夏のサウンドオフ⑧

 バスのドアが開く。


 誰が降りてくるか立ち止まる。


 制服のスカートからスラット伸びた細い脚が、バスを降りてくる。


 一瞬この前屋上で僕の事を打った怖い顔をした彼女の顔が浮かび硬直して立ち止まったが、直ぐに僕を見つけた彼女の顔は柔らかい優しい笑顔だった。


「あれ~!迎えに来てくれたの?」


「べ・別に……散歩していただけだよ」


「へえ~。でも丁度いいわ」


 近づいて来た彼女は、そう答えると荷物を僕の前に差し出し、僕も当然のようにそれを受け取っていた。


「じゃあ、私も散歩付き合おうかな」


「もう帰るところなんだけど」


「いいよ、私そんなに疲れていないから」


 僕の言った事に対して答えになっていなかったが、僕はそれを不快には感じず従った。


 少し歩いて、いつも彼女がオーボエの練習をしている階段で腰かけて夕焼けを反射してキラキラ輝く川面を眺めた。


「今日、勝ったね」


何の話題も無かったので、僕にとってどうでもいい試合の事を呟くと彼女は野村が凄い投球をして相手を完封した事や、秋月穂香たちが吹奏楽部の脱水症対策で色々世話をしてくれて助かっている事や、その秋月穂香たちも一緒のバスに乗って帰り、その道中が楽しかった事など、今日一日の出来事を細かく話してくれて、僕はその一つ一つに頷いていた。


「ねぇ!聞かせてあげようか!」


「なに?」


 僕の答えも待たずに彼女はケースからオーボエを取り出しながら


「おうえん歌」と言った。


「あぁ、真夏のナントかって言う曲?」


 僕が答えると、彼女は違うと答え


「棋道部用の応援歌を考えたんだ!」


と答えた。

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